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高句麗語合戦3 〜あれは韓国これは日本〜

1 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 20:06:32 ID:a/PnUBfU
 とざいと〜ざい。これより皆々様にご披露致しまするは、いにしえの高句麗語の
数々で御座りまする。高句麗は今を去ること1300年以上昔に滅びし古代国家で
御座りまするが、かつては満州西部・沿海州から朝鮮半島北部一帯にかけて
広大な領地を持ち、彼の隋・唐帝国の攻撃すら再三にわたって撃退したことも
あるほどの強いつよ〜い国家に御座りますれば、ニダビトの皆様にとりましては
数少ない「誇らしいですね。、サ、サ、サ」と言える存在なわけで御座りまする。

 ところが、あに計らんや、資料に残る高句麗の言葉をよくよく調べてみますると、
半万年の歴史を誇るウリマルよりも、彼のにっくきチョパーリケセキドルの言葉の方が
よく似ているというからさあ大変! 果たしてニダビトの皆さんは誇りある歴史を
取り戻すことが出来るでありましょうか。

      __      /
      iii■    < 乞うご期待!
   、─-(´∀`)-─,  \
   |\@|_Y_|@/|
 .<\__(ωω)__/>

【前スレ】高句麗語合戦2 〜あれは韓国これは日本〜
http://www.banner4every1.com/cgi-bin/test/read.cgi/exkorea/1071550720/
【前々スレ】高句麗語合戦 〜あれは韓国これは日本〜
http://www.banner4every1.com/cgi-bin/test/read.cgi/exkorea/1055576517/

【関連ホームページ】娜々志娑无のぺぇじ
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/5420/index.html

2 名前:八咫烏 ◆cPmkHzc4Fc 投稿日:2007/03/19(月) 21:00:05 ID:bbYH5Q3k
ROMっているだけですが、語学ヲタ(先生方々の前では、瓜はヲタと言うレベルぢゃないな・・マニアぐらいにしておきまつ・藁)
の瓜は、いつもドキドキしながら拝見しております!

               +   + +     +   +
                ∧_∧  ∧_∧ ∧_∧  +
                  (0゚・∀・) (0゚・∀・) (0゚・∀・) ワクワクテカテカ  +
               oノ∧つ⊂) ∧つ⊂) ∧つ⊂)    +            +
.       ∧_∧   ( (0゚・∀・) (0゚・∀・) (0゚・∀・)       +    +
       ( ;´Д`)  oノ∧つ⊂)∧つ⊂) ∧つ⊂)  +            ∧_∧     +
  -=≡  /    ヽ   ( (0゚・∀・)(0゚・∀・)(0゚・∀・)   ワクワクテカテカ    (0゚・∀・) ワクワク
.      /| |   |. |  oノ∧つ⊂) ∧つ⊂) ∧つ⊂)             oノ∧つ⊂)
 -=≡ /. \ヽ/\\_( (0゚・∀・) (0゚・∀・) (0゚・∀・)   +         ( (0゚・∀・) テカテカ
    /    ヽ⌒)==ヽ_)=∧つ⊂) ∧つ⊂) ∧つ⊂)        ∧_∧ oノ∧つ⊂)  +
-=   / /⌒\.\ ||  ||(0゚・∀・)(0゚・∀・)(0゚・∀・)ワクワクテカテカ( ´・ω・)  (0゚・∀・) ワクワクテカテカ
  / /    > )| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|     /ヽ○==○ (0゚∪ ∪    +
 / /     / / .|______________| -=≡ /  ||_ ||_ と__)__)
 し'     (_つ  ̄(_)) ̄ (.)) ̄ ̄ ̄ ̄ (_)) ̄(.)) ̄    し' ̄(_)) ̄ ̄ ̄ ̄(_)) ̄(_))

3 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:04:17 ID:V6IBQae.
 地鎮祭に備えて投稿を控えていたニダが、ないようなので
せめてもの慰めに一人地鎮祭でもやるニダ。

ちょ(ry

む(ry

あ(ry

 以上、地鎮祭終わり。

4 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:09:26 ID:V6IBQae.
※高句麗語の再構の方法について

 高句麗語は主として『三国史記』の高句麗地名から地名学的手法により
再構されています。地名学的手法とは、ぶっちゃけて言えば、固有名詞で
ある地名から普通名詞や動詞・形容詞等を導き出すことです。日本語を
例にして考えるとわかりやすいと思いますので、それで説明すると、東京の
三鷹市は漢字表記では「三鷹」ですが、アルファベット表記は「Mitaka」です。
この漢字表記(言うなれば訓読地名表記)とアルファベット表記(音読地名
表記)を対比させることで、日本語では「three(三)」のことを「mi」と言い、
「hawk(鷹)」のことを「taka」と言うのだなという推定が可能になるわけです。

 もちろんこの場合、地名表記が複数残っていて、なおかつ一方の表記が
意味を、他方が発音を、それぞれ反映しているという条件が揃っていなければ
このような推定は出来ませんが、高句麗地名の場合、幸いにも一つの土地に
対して複数の地名が記されていることが多いため、とりあえずはその可能性
を追求することが出来るのです。

 たとえば、『三国史記』の巻三七に「買忽{一ニ云フ水城}」という記述があり
ますが、ここに登場する二つの地名の関係を、「水城」が訓読地名、「買忽」
が音読地名であるとして分析すれば、高句麗語では「water(水)」のことを
「mai(買)」と言い、「walled city(城)」のことを「kol(忽)」と言ったのではない
かと推定することが可能になります。この推定は、同じ巻三七の別の箇所に
見える「水谷城県{一ニ云フ買旦忽}」という地名の例を分析することによって
補強され、更に「valley(谷)=tan(旦)」という関係があることも確かめられます。
先行研究における高句麗語の再構の方法は、まあざっとこんなものです。

5 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:14:21 ID:V6IBQae.
 問題は、当時の東アジアには漢字しか存在しなかったので、意味に基づく
地名表記の方はもちろん、発音に基づく地名表記の方も漢字を使わざるを
得ないため、どちらの地名が意味と発音を担っているのかが確定出来ないと
いうことです。先程の例でも、「買忽{一ニ云フ水城}」は音読地名ー訓読地名
の順序でしたが、「水谷城県{一ニ云フ買旦忽}」では訓読地名ー音読地名の
順であり、記述形式からは一概にどちらが訓読で音読なのかは決められません。
すべての漢字には意味があり発音がありますから、音読地名にも訓読地名にも
なり得るのです。その結果、たとえば音読地名を訓読地名と勘違いしてしまったら、
とんでもない幽霊語(ghost word)を生み出してしまうということになります。

 加えて、その複数存在する地名が、本当に同一地名の異表記なのかどうかも、
実はわかったものではないという事情もあります。たとえば、福岡市のことをJRの
駅名から「博多」と呼ぶ人は結構いるんじゃないかと思いますが、タイムスリップ
して来た古代の中国人がそれを見れば、福岡の別名は博多であると誤解して、
「福岡。一ニ云フ博多」という記録を残しかねません。仮にその記録だけを残して
日本語の記録が失われてしまったとしたら、未来の言語学者は、日本語では
「good fortune(福)」を意味する名詞は「hak(u)」であり、「hill(岡)」を意味する
名詞は「ta」であると誤って再構してしまうでしょう。このように、高句麗地名から
高句麗語を再構する作業には、どうしても上記のような危険がつきまとうという
ことを認識しておかなければならないのです。

6 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:23:46 ID:V6IBQae.
 加えてもう一点注意すべきは『三国史記』の巻による資料性の違いです。
既に

http://www.soutokufu.com/cgi-bin/hogehoge/test/read.cgi/hangul/1119801846/n799

でも指摘したことですが、巻三七は高句麗地誌&百済地誌であり、そこに
出てくる高句麗の地名は原則として高句麗時代の地名であると判断出来
ます。しかしながら、巻三五は新羅地誌・高句麗旧領編であり、その記述
形式は「A県ハ本高句麗ノBナリ。」というものです。この場合、Bについては
高句麗時代の地名と見て問題ないのですが、Aの方はあくまでも新羅の
地名に過ぎません。新羅人が高句麗から奪った領地に地名を付ける際に、
高句麗の訓読地名をそのまま流用したり、高句麗地名の意味を理解した
上でそれに対応する漢語地名を付けたりしてくれていれば、AとBの関係
から導き出された語を高句麗語と見なしても何の問題もありませんが、
高句麗時代の音読地名から発音が似ている新羅語の単語を当てはめて
付けた場合には、AとBの関係から導き出された語を高句麗語とすることは
出来ず、むしろ新羅語を再構した格好になります。

 後者のケースのよい例が北海道のアイヌ語地名です。「Poro-pet」は
アイヌ語で「大きな川」という意味ですが、これに対して日本人は「幌別」と
いう漢字表記を与えました。「Poro-pet」と「幌別」の関係から導き出された
「poro=hood(幌)」「pet=difference(別)」はもちろんアイヌ語でも何でも
なく、日本語のそれなわけです。このように、巻三五から再構された語に
ついては、巻三七その他の資料の裏づけがない限りは、真に高句麗語
なのかどうかは即断出来ません。

 よってスレ主は、巻三五のみしか判断材料のない語についてはこれを
「巻三五系語彙」と呼称し、巻三七その他の資料から再構された語彙
(「巻三七系語彙」と呼称)と区別することを提唱します。巻三七系語彙に
ついては無条件に高句麗語(あれは高句麗語じゃなくて別の言語だ等の
批判はひとまず置きます)であると判断してよいでしょうが、巻三五系語彙
の方は高句麗語ではない可能性も多分に含んでおりますので、とりあえず
疑・高句麗語として留保すべきであると考えます。

7 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:33:51 ID:V6IBQae.
 それではこれより順次、スレ主が再構したところの高句麗語語彙を、
再構語形のアルファベット順にご紹介して参りたいと存じます。

 高句麗語リストは以下のような項目からなっております。

NO.xx:通し番号です。

意味:再構された高句麗語について、推定される語義を英語と漢字で
    簡単に記しています。

再構語形:漢字で借音表記されたものから再構された高句麗語の語形
       です。研究者によってまちまちなので、李基文氏のものには
       (李基)、村山七郎氏のものには(村山)、板橋義三氏のもの
       には(板橋)を付して区別しています。(娜)とあるのは、先行
       論に未指摘等の事情で再構語形が存在しないため、整理の
       都合上、スレ主が無理やり再構したものですので、あまり本気
       にしない方が宜しいでしょう(w。

比較(日):主に古代日本語(上代語)の中から高句麗語と対応する可能
       性が少しでも認められるものをピックアップしています。こちらも
       李基文氏が指摘したものには(李基)、村山七郎氏が指摘した
       ものには(村山)、板橋義三氏が指摘したものには(板橋)を付
       して区別しています。なおスレ主が私に補ったものについては
       (娜)を付けました。

比較(朝):新羅語(古代語)・高麗語(前期中世語)・李朝語(後期中世語
       〜近世語)・現代朝鮮語の中から高句麗語と対応する可能性
       が少しでも認められるものを挙げています。こちらも(李基)
       (村山)(板橋)(娜)を付加して区別してあります。なお、スレ主
       は朝鮮語はまったく話せないので、この項の内容は先行論で
       指摘されたものが中心となりますが、少数ながら、スレ主が必死
       こいて『李朝語辞典』を繰って見つけたものや、スレ住人諸氏より
       提供された情報に基づいて付け加えたものもあります。

8 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:36:03 ID:V6IBQae.
比較(ツ):ツングース諸語の中から対応する可能性のある語を挙げています。
       こちらは完全に先行論におんぶに抱っこさせて頂いてます(w。

比較(他):モンゴル語やトルコ語などのアルタイ諸語や、ギリヤーク語(ニブヒ
       語)、アイヌ語などの日本・朝鮮半島・満州の周辺言語、オーストロ
       ネシア祖語やインドネシア祖語といった南方言語の中から対応する
       可能性のある語を挙げています。おんぶに抱っこはツングース諸語
       の場合と同じです。

日朝ツ比:日本語と朝鮮語、ツングース諸語の対応状況が一見してわかるよう
       に、三者をこの順番で並べて○や△、×で記号化して示しています。
       ○は巻三七系語彙、△は巻三五系語彙で、それぞれの言語に対応
       する語が存在することを意味します。×は対応する語が現状では
       見つけられないことを示します。

原文:『三国史記』地理誌や『三国志』魏志東夷伝高句麗条、『日本書紀』などに
    記された高句麗語の反映部分を漢文のままで記しています。スレ主は
    すべて原文を確認済みです。なお、一般の読者の方が読みやすいように、
    漢文には簡単に訓点を付けました。使用した記号は以下の通りです。

    /v(「レ」点) /3、/2、/1(「三」「二」「一」点) /J、/C、/G(「上」「中」「下」点)

    なお、非JIS漢字は[シ+青](→清)、[天/虫](→蚕)のように記しています。

考説:スレ主による解説、私説、備考など。特に私説部分は眉に唾を付けてご覧
    下さい(w。

9 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:37:32 ID:V6IBQae.
※アルファベットによる発音表記の説明:

 e1=上代日本語エ列甲類母音   e2=上代日本語エ列乙類母音
 i1=上代日本語イ列甲類母音   i2=上代日本語イ列乙類母音
 o1=上代日本語オ列甲類母音   o2=上代日本語オ列乙類母音
 Φ=無声両唇摩擦音(日本語フの子音)
 η=有声軟口蓋鼻音(ngの音)
 斤=有声声門摩擦音(hの濁音)

※参考文献:

・李基文『韓国語の形成』(『韓国文化選書』6 1983年4月 成甲書房)
・同上『韓国語の歴史』(村山七郎監修・藤本幸夫訳 1975年6月 大修館書店)
・村山七郎「日本語および高句麗語の数詞─日本語系統問題に寄せて─」
                                  (『国語学』48、1962年3月)
・板橋義三「高句麗の地名から高句麗語と朝鮮語・日本語との史的関係をさぐる」
   (アレキサンダー・ボビン/長田俊樹共編 日文研叢書31『日本語系統論の現在』
   所収 2003年12月 国際日本文化研究センター)
・金東昭『韓国語変遷史』(栗田英二訳 2003年5月 明石書店)
・宋敏『韓国語と日本語のあいだ』(菅野裕臣他訳 1999年12月 草風館)
・河野六郎『資料音韻表』(『河野六郎著作集・2』別冊 1979年11月 平凡社)
・劉昌惇『李朝語辞典』(1964年11月 延世大学校出版部)
・藤堂明保編『学研漢和大字典』(1978年4月 学習研究社)
・上代語辞典編集委員会編『時代別国語大辞典・上代編』(1967年12月 三省堂)

10 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:39:30 ID:V6IBQae.
 と、ここまで連投してさすがに疲れたので、高句麗語語彙の
投稿は明日以降に致しまスミダ。ご容赦召されよニダ。

11 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/19(月) 22:43:51 ID:V6IBQae.
>>2 八咫烏さん

 早速のカキコ、カムサハムニダ。ROMと言わず、お気付きになった点は
どんどんご指摘下さいハセヨ。過疎スレになることは覚悟しているとは
申せ、さすがに人の通わぬスレは寂しいものニダから(苦藁)。

12 名前:日語商売 ◆G2IlbonwGk 投稿日:2007/03/19(月) 22:49:33 ID:smpN1E2E
ちょっと!! ここでは自重した方がいいと思ったからやらなかったのに
地鎮祭待ってたってどういうことよ!!!

先生、とうとう始まりましたね。
半島からwktkしつつ進行を待っております。

推定漢字音等、補足できるところがあれば、時間の許す範囲でしたいと思います。

そう言えば、先日故村山七郎先生が同郷だということを(なぜか)親戚から聞いた……。

13 名前:八咫烏 ◆cPmkHzc4Fc 投稿日:2007/03/20(火) 01:59:52 ID:J58QWgL2
>>11
う・瓜はソンセンニム方々の「広く深い」スキルも知識も無いニダ・・。
修行時代に色々な国に飛ばされて、生活(もちろん会社では英語でおkだったニダが)の為に
広く浅く語学してるうちに、語学マニアになったスミダ。
(誰ニカ?国々で不適切に習ったとか言ってるのは・・邪推イクナイ!m9(・∀・)藁)

ソンセンニムのスレは、分かんないけど読んでるとドキドキするスミダ。
子供の頃読んだ科学雑誌と歴史の本を同時に読んでる感じでwktkするニダ!

専ブラ使ってるニダから、更新があればすぐに分かるニダから、ソンセンニムのマイペースで更新して欲しいスミダ!
(更新プレッシャーで、薄まる事を一番恐れているニダ。瓜には「この濃度」が一番心地良いニダからマイペースでお願いしまスミダ)

14 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 11:16:32 ID:dMVKV472
>>7
 アイゴー!! うっかりして項目を一つ抜かしていたニダ!
「意味」と「再構語形」との間に、

漢字表記:その単語が原文においてどのような漢字で
       音写されているかを記しています。

を付け加えてほすぃニダm<_"_>m。

15 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 11:19:02 ID:dMVKV472
NO.001

意味:to look down at/overlook(臨)

漢字表記:阿

再構語形:a(板橋)

比較(日):上代語「ar-(有り)」(娜)
       上代語「atari(辺)」(娜)
       上代語「atar-(当たる)」(娜)
       上代語「aΦug-(仰ぐ)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:061「津臨城県{一ニ云フ烏阿忽}(巻三七)」
    140「[之+守]城郡{一ニ云フ加阿忽}(巻三七)」,

考説:本語は板橋が060から再構したのが最初。「津」に「臨」む「城」ということから、
    「阿」を「臨」の意の動詞と見たもの。ただし、板橋は本語を「対応語が不明の
    もの」の中に入れており、対応する日本語を挙げていない。そこで、日本語の
    中から「〜のそばにある」「〜を見る」の意で当てはまりそうなものを挙げてみた。
    なお、140は李基文によって「加阿=[之+守](辺の意の朝鮮国字。辺の古字とも
    いう)」「忽=城」と分析されているが、「加阿」では「ka:」と長音になってしまい、
    一語を表記したものとしては不自然な格好である。むしろ140は「辺(=加)」境に
    臨(=阿)む「城(忽)」と三語に分けて解釈すべきではないかと考え、ここに加えた。

16 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 11:47:58 ID:dMVKV472
NO.002

意味:boy(男児)

漢字表記:阿旦

再構語形:atan(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):李朝語「atΛl(男児)」(娜)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×△×

原文:132「子春県ハ、本高句麗ノ乙阿旦県ナリ。(巻三五)」

考説:本語は先行研究では指摘されていない。何しろ「子春」と「乙阿旦」の関係を、
    語順通りに「子=乙」「春=阿旦」とするのではなく、逆転させて「子=阿旦」
    「春=乙」だと解釈しようというものであるから、無理からぬことではある。
    しかしながら、前者は李朝語に対応する語が存在する上に、後者も後述する
    111「wil(泉・井戸)」と語形が類似していること、英語のspringが泉と春の両義
    を兼ね備えていることなどを考え合わせれば、可能性は十分にあると思う。

17 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 12:14:47 ID:dMVKV472
NO.003

意味:level/flat(平)

漢字表記:別

再構語形:biar(板橋)
       piel(娜)

比較(日):上代語「Φi1ra(平)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:030「平淮押県{一ニ云フ別史波衣。淮、一ニ作ル/v唯ニ}(巻三七)」

考説:本語は板橋が030から再構したのが最初。ただし、板橋は本語を「対応語が
    不明のもの」の中に入れており、対応する日本語を挙げていない。日本語では
    上代語「Φi1ra(平)」がぴったり対応するにもかかわらず、板橋が指摘してい
    ないのは不思議としか言いようがない。語形からは次の004「biar(重)」とも
    同源という可能性も十分考えられよう。ただし、「平(bιΛη)」と「別(bιεt)」
    は漢字音に類似の要素も認められるので、両者とも音読字という可能性もある
    かも知れない。

18 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 12:27:58 ID:dMVKV472
NO.004

意味:-fold/layer(重)

漢字表記:別

再構語形:biar(板橋)
       pj∂l(李基)
       pe(村山)
       piel(娜)

比較(日):上代語代「Φe1(重)」(村山・李基・板橋)

比較(朝):李朝「pΛl(重)」(李基)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○○×

原文:035「七重県{一ニ云フ難隠別}(巻三七)」

考説:本語は新村出の指摘以来、高句麗語と日本語、朝鮮語が対応する例として著名な
    語である。日本語も朝鮮語も意味・発音ともよく対応するが、中でも朝鮮語は語末の
    「-l」まで一致しており、高句麗語形に最も近いと言えよう。なお、本語は003「biar(平)」
    とも同源の可能性がある。

19 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 12:43:58 ID:dMVKV472
NO.005

意味:shallow(浅)

漢字表記:比烈/比里
       波?

再構語形:bir∂r/biri(板橋)
       pua(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナナイ語「biri(浅い)」(李基・板橋)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:××○

原文:121「浅城郡{一ニ云フ比烈忽}(巻三七)」
    「比里(『摩雲領眞興王巡狩碑』)」
    055「麻田浅県{一ニ云フ泥沙波忽}(巻三七)」

考説:板橋は「比烈」「比里」の借音表記をもとに最終的に「*piriar」という語形を再構している。
    055は「泥沙波」の「泥沙」を「麻田」、「波」を「浅」に対応させたもの。ただし、「泥沙」が「麻」、
    「波」が「田」に対応する可能性も高い。

20 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/20(火) 15:31:40 ID:BFVTBaJk
>>19
 書き忘れていたニダが、先行論には「波(pua)」と「浅」が対応する鴨
という指摘はないニダ。と言っても、「biri〜bir∂l」とは発音的に近いと
言えるのは頭子音くらいなので、_である公算は高いニダが(w。

21 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 00:02:52 ID:uuoKOdVg
 ざっと、こんな感じで全152語やっていくつもりニダ。
私見に基づき高句麗語から省いたものも加えれば
もう少し増えると思うニダが、ともあれ、少々過疎っても
キニ<・A・>シナイ!で行くニダ<`・ω・´>シャキーン!

22 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/21(水) 11:51:43 ID:yrnqzdsM
浅学ゆえお役に立てませんが応援しております。

23 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 15:05:49 ID:j1KA4FQM
NO.006

意味:green(緑),

漢字表記:伐(板橋・清瀬)〜伐力(村山・李基)

再構語形:bor(板橋)
       p∂lli(村山)〜pΛri(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):李朝語「p‘uru-(緑)」(村山・板橋)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×△×

原文:093「緑驍県ハ、本高句麗ノ伐力川県ナリ。(巻三五)」

考説:板橋によれば、清瀬義三郎則府は本語に対して「pul」という再構語形を与えている
    という。ともあれ、本語の語形を確定させるためには、新羅地名「緑驍」と高句麗地名
    「伐力川」の対応関係を明らかにしなくてはならないが、高句麗地名のうち、「伐力」は
    音読字、「川」は訓読字であると解せば、川(水)は新羅語では「mul」、李朝語では
    「mщl」であるから、高句麗地名の「〜川」を「mul」と読んだ可能性は高い。一方、
    「驍」は優れた馬という意味であるが、馬のことを李朝語では「mΛl」と言ったことが
    わかっている。新羅語で馬のことを何と言ったのかは不明であるが、李朝語の語形
    に近いとすれば、新羅語では「川」と「馬」を意味する語は語形的に極めて近いので、
    新羅人が「川」から「馬」を連想するということは十分にあり得ることであると思われる。
    以上をまとめるならば、〔「川」→mul(川)→mΛl(馬)→驍〕という連想により、新羅
    地名は命名されたのではないかということである。スレ主が板橋・清瀬ではなく村山・
    李基文の説の方を支持するのは上記のような理由からであるが、093の地名命名の
    経緯がスレ主の想定通りであるとすると、当然本語についても高句麗語などではなく、
    新羅語とすべきではないかと思う。

24 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 15:32:22 ID:j1KA4FQM
NO.007

意味:pine(松)

漢字表記:扶蘇/夫斯〜伏史

再構語形:busυ/busi(板橋)
       puso/pusi/puksi(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):高麗語「tsas-namu(松)」(娜)
       李朝語「sol(松)」(娜)
       李朝語「pos(樺)」(李基)
       李朝語「pus(松)」(板橋)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×△×

原文:056「松岳郡ハ、本高句麗ノ扶蘇岬ナリ。(巻三五)」
    129「松山県ハ、本高句麗ノ夫斯達県ナリ。(巻三五)」
    091「夫斯波衣県{一ニ云フ仇史[山+見]}(巻三七)」
    091「松[山+見]県ハ、本高句麗ノ夫斯波衣県ナリ。(巻三五)」

考説:漢字表記のうち、「伏史」は091の「仇史(巻三七)」を「伏史」の誤記であると見なした
    ものである。高麗語は『鶏林類事』の「松曰鮓子南」によったもの。李朝語の対応例
    として挙げられているもののうち、李基文の挙げた「pos(樺)」は語形的にはともかく
    意味の上で隔たりが大きいので、別語である可能性が高い。その点、板橋の挙げた
    「pus(松)」は、語形といい意味といい申し分ないが、『李朝語辞典』を引いてもその
    ような語は見当たらないため、実在を確認出来ない。「sol(松)」は語形の上では
    相違点が大きいが、朝鮮語では第一音節が脱落したものと見なせば、とりあえずは
    関係付けることが出来なくもないので、ここに挙げた。

25 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 15:49:28 ID:j1KA4FQM
NO.008

意味:root(根)

漢字表記:斬

再構語形:c‘am(李基)
       cam(板橋)

比較(日):ナシ

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ギリヤーク語「t∫amγ(根株)」

日朝ツ比:×××

原文:008「楊根県{一ニ云フ去斯斬}(巻三七)」
    064「高木根県{一ニ云フ達乙斬}(巻三七)」

考説:本語は日本語にも朝鮮語にもツングース諸語にも対応する語が見出せず、
    唯一ギリヤーク語(ニヴヒ語・ニヴフ語)のみが対応するという例である。
    ギリヤーク人は樺太の他、アムール川流域にも住んでいるので、古代に
    高句麗語と接触した可能性は十分に考えられるが、高句麗語から借用した
    のか、それとも逆の関係なのかは不明である。

26 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 15:56:04 ID:j1KA4FQM
>>25
 スマソ。修正ニダ。

× 比較(他):ギリヤーク語「t∫amγ(根株)」
○ 比較(他):ギリヤーク語「t∫amγ(根株)」(李基・板橋)

27 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 16:02:36 ID:j1KA4FQM
NO.009

意味:good archer(善射)

漢字表記:朱蒙

再構語形:chumuη(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):ナシ

比較(ツ):満州語「mangga(善射)」(李基)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:××○

原文:「其俗言「朱蒙」者、善射也。(『三国志』高句麗条)」
    「扶餘俗語、善射爲朱蒙。故以名云。(巻一三)」

考説:朱蒙は高句麗の始祖であるが、『三国志』に高句麗の俗語で「朱蒙」は「善射」の意味
    であると記されている(『三国史記』では夫餘の俗語とする)ので、高句麗語として取った
    ものである。板橋が本語を挙げていないのはそのためであろうか。李基文は満州語と
    「音的類似」があると指摘する。満州語語形は第一音節が脱落したと見たものであろうが、
    いささか苦しいように思う。

28 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 16:15:55 ID:j1KA4FQM
NO.010

意味:head(of a bull)(頭)

漢字表記:次若

再構語形:cinia(板橋)
       tsunyak<tunyak(村山)

比較(日):上代「tuno1(角)」(村山・板橋)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):インドネシア祖語「tunu(角)」(板橋)

日朝ツ比:○××

原文:092「牛首州{首ハ一ニ作ル/v頭ニ。一ニ云フ首次若。一ニ云フ烏根乃}(巻三七)」

考説:092の「牛首(頭)」を訓読地名、「首次若」を音読地名と見て、「牛=首(sy∂u)」
    「首(頭)=次若(tsinyak)」と対応させたもの。牛の頭には角がつきものなので、
    日本語及びインドネシア祖語の「角」と対応する可能性は十分にあろう。

29 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/21(水) 17:41:50 ID:b2NNY0Lg
>>28

割り込むよ。

漢字表記:次若
再構語形:cinia(板橋)

これから、饅頭(まんじゅう)の「じゅう」を連想する。

>>15

漢字表記:阿
再構語形:a(板橋)
比較(日):上代語「ar-(有り)」(娜)
       上代語「atari(辺)」(娜)
       上代語「atar-(当たる)」(娜)
       上代語「aΦug-(仰ぐ)」(娜)
これには、日本語「あふ」(合う、会う、遭う)との近縁を感ずる。

30 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/21(水) 18:29:59 ID:uuoKOdVg
>>29
>割り込むよ。

 今日はもうこれ以上投下するつもりはなかったので、お気になさらず。

>饅頭(まんじゅう)の「じゅう」を連想する。

 饅頭はれっきとした漢語ですよ。「じゅう(ヂユウ)」と読むのは妙に
感じるかも知れませんが、これは饅頭が鎌倉初期に宋から伝わった
外来の食物だからで、当時の漢字音(唐宋音)の反映です。

>これには、日本語「あふ」(合う、会う、遭う)との近縁を感ずる。

 うん。これはあるかも知れませんね。ただ、私の挙げた例もそうなの
ですが、第一音節が「a」で始まる動詞は日本語には結構ありますし、
おそらくそれは朝鮮語や他の言語も同様でしょうから、子音+母音の
組み合わせから成る音節の場合よりも偶然の一致が発生する可能性
が高いんですよね。そんなわけでして、「a」が共通するからと言って、
あまり強くは言えないのがつらいところなのです。

31 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/21(水) 20:15:58 ID:b2NNY0Lg
>宋音
もちろんそのつもりで書いている。宋朝、宋音の成り立ちを考察すると面白いと思うが。

32 名前:日語商売 ◆G2IlbonwGk 投稿日:2007/03/22(木) 01:19:36 ID:GPe.EfYc
中国中世の漢字音だとしても、「頭」(これの母音は中古漢語以来 -∂u だとされている、
現代中国語でも dou[t∂u])をチュウ・ヂュウと読むのは非常に異様に見えるのですよね。
私見では、宋音の母胎の1つとなった中国南方の方言に何か原因があるのだと思います。
中国方言の中でも呉方言(呉語)の蘇州語では、北京語の -ou(中古漢語の侯韻)を
[Y] のような記号で書かれる母音で発音するのです。
この母音、中舌円唇母音の [u¨] とも、前舌円唇母音の [y] とも違うもので、
言ってみれば [y] と中舌曖昧母音 [∂] の中間みたいな音です。
アルファベット表記ではeuと書かれます。
他の方言でもおおむねこれらは前舌〜中舌母音になっています。
おそらく、祖語での [-∂u] がある段階で [-eu] のように主母音が前舌化し、
そこから様々な変化が起こったものと察せられますが、
「饅頭(マンヂュウ)」とか「塔頭(タッチュウ)」のチュウ・ヂュウは、
母音が [-eu] あるいは [-Iu] のような状態だった時期の発音を反映してるのでは……

と、考えたことがあるのですが、「饅頭」のような例ってほかにあまりないので
論文にまとめられるもんじゃなかったりします。

思いっきり高句麗語から外れてごめんなさい。

33 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 11:32:42 ID:.8Neq4MY
NO.011

意味:owlet([休+鳥])

漢字表記:祖

再構語形:cυ(板橋)

比較(日):上代語「tuku(木莵)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:074「[休+鳥][留+鳥]城{一ニ云フ租波衣。一ニ云フ[休+鳥]巌郡}(巻三七)」

考説:「[休+鳥]」はミミズク(木莵)のこと。板橋は本語を「対応語が不明のもの」の
    グループに入れているが、意味の上でも語形の上でも上代語「tuku(木莵)」
    は対応語として挙げるにふさわしいと思う。

34 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 12:00:56 ID:.8Neq4MY
NO.012

意味:hole/cave(孔)

漢字表記:斉次/済次

再構語形:dzeyc/ceyc/cic(板橋)

比較(日):上代語「suk-(鋤く)」「sukuΦ-(掬ふ・救ふ)」(娜)
       中古語「suk-(透く)」「suki(隙)」(娜)
       中世語「su(鬆)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:△××

原文:023「斉次巴衣県(巻三七)」「孔巌県ハ、本高句麗ノ済次巴衣県ナリ。(巻三五)」

考説:板橋は本語を「対応語が不明のもの」の」グループに入れている。本語に対応する日本語を
    指摘するのは難しいが、上代語「鋤く」は鋤などの器具を使って土を掘り起こす行為である
    から、広い意味で「穴」を掘る行為と解釈することが出来るし、「掬ふ」も、粒状または液状の
    ものを掌や器具を使ってかすめるように取り上げる行為であるから、これもまた「穴」を掘る
    行為につながると考えた。ちなみに、「スク」という動詞には「鋤く」以外に「梳く」「漉く」「食く」
    「透く」「抄く」などがあるが、いずれも同源であり、意義分化により別語の動詞として認識され
    るようになったものと言われている。「救ふ・掬ふ」もおそらくこれと同源であると思われる。

35 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 12:15:01 ID:.8Neq4MY
NO.013

意味:child(童子)

漢字表記:仇(板橋)〜仇斯(李基)

再構語形:gu(板橋)

比較(日):上代語「ko1(子)」(李基・板橋)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):エヴェンキ語「kuηa(子供)」(板橋)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○×○

原文:029「童子忽県{一ニ云フ仇斯波衣}(巻三七)」

考説:本語の語形について李基文は「仇斯=童子」と解釈しているが、高句麗語には
    名詞と名詞を接続する「si(斯・史)〜ci(次)」という語が存在したと見られること
    から、本語についても、板橋に従い、「斯」は属格・修飾辞であり、本体は「仇」で
    あると解するのがよいと考える。

36 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 12:32:28 ID:.8Neq4MY
>>34
 修正ニダ。スマソ。

再構語形:dzeyc/ceyc/cic(板橋)

の下に

       cec(李基)

を追加してほすぃニダ。

37 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 13:58:47 ID:.8Neq4MY
NO.014

意味:high mountain peak(峠)

漢字表記:盒(蓋)/岬/押/臘

再構語形:γap/kap/γaip/ap(板橋)

比較(日):上代語「yama(山)」<原始日本語「jama」(板橋)
       上代語「kaΦi1(峡)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):エヴェンキ語「dawakit/dawan(峠)」「dawa-(山を越える)」(板橋)
       オロチ語「dawan(峠)」「dawa-(山を越える)」(板橋)
       満州語「dabagan(峠)」「daba-(山を越える)」(板橋)
       ナナイ語「daba-(山を越える)」(板橋)

比較(他):モンゴル語「dabagan(峠)」「daba-(峠を越える)」

日朝ツ比:○×○

原文:「蓋馬(『漢書』)」
    「蓋馬大山(『三国志』)」
    056「松岳郡ハ、本高句麗ノ扶蘇岬ナリ。(巻三五)」
    049「阿珍押県{一ニ云フ窮嶽}(巻三七)」
    090「唐嶽県ハ、本高句麗ノ加火押ナリ。(巻三五)」
    183「心岳城ハ、本居尸押ナリ。(巻三七)」
    070「刀臘県{一ニ云フ雉嶽城}(巻三七)」他

考説:本語については、村山以来「峡谷」の意と解されてきた029「cave/cavern/hole(穴)」
    との関係が微妙であるが、とりあえず板橋に従い別語とした。しかしながら、山と谷は
    表裏一体の関係にあるとも言え、実際に日本語「カゲ」のように光と影の両義を持つ
    語も存することから、両者が同語源である可能性も依然として残されている。なお、
    漢字表記について板橋は「峡」も挙げているが、「峡」は『三国史記』の関係箇所では
    049「安峡県ハ、本高句麗ノ阿珍押県ナリ。(巻三五)」に登場するのみであり、「安峡」は
    漢語(訓読)地名であって音読地名ではないので、リストから除いた。また、「臘」は
    「tau-lap(刀臘)」を「taul-ap(雉嶽)」に宛てていると解釈したものである。「盒(蓋)」
    は『漢書』や『三国志』に見える高句麗領内の山名(県名)である「蓋馬大山」に基づく
    ものらしい。これにより板橋は「大山」の意の「γapma(蓋馬)」という語を再構し、
    これを本語の祖形と見なしている。板橋が日本語の対応語として従来の「kaΦi1(峡)」
    ではなく「yama<jama(山)」を挙げているのも、この「γapma(蓋馬)」との類似に
    注目したためであると思われる。

38 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 16:48:17 ID:.8Neq4MY
NO.015

意味:foot(足)

漢字表記:廻

再構語形:γwy(板橋)
       kwai(村山)

比較(日):上代語「kuw-(蹴る)」(村山)
       上代語「ago1ye(足蹴)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:103「猪足県{一ニ云フ烏斯廻}(巻三七)」

考説:板橋は本語を「対応語が不明のもの」のグループに入れているが、
    村山はワ行下二段動詞「kuwe(蹴)」を挙げ、「もともと「足」の意味
    をもっていたであろう」と指摘している。日本語における「ta〜te(手)」
    と「tor-(取る)」の関係を考慮すれば、十分にあり得る話であり、従う
    べきであろう。なお、上代語「agoye(足蹴)」は鶏などの蹴爪のことで、
    その語構成「a(足)+ko1ye(蹴)」からヤ行下二段動詞「ko1y-(蹴ゆ)」
    という語の存在が確認出来る。高句麗語の語形からは「kuw-(蹴)」
    の方が近いので、一つ挙げれば十分とも言えるが、意義・語形ともに
    よく似ている(おそらく同語源)ということもあり、追加しておきたい。

39 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 17:48:26 ID:.8Neq4MY
NO.016

意味:to enter(入)

漢字表記:伊〜乙

再構語形:i-(村山・李基・板橋)〜il-(娜)

比較(日):上代語「ir-(入る)」(村山)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ツングース諸語「i-(入る)」(村山・李基・板橋)

比較(他):モンゴル語「ire-(来る)」(李基・板橋)

日朝ツ比:○×○

原文:116「水入県{一ニ云フ買伊県}(巻三七)」
    146「道臨県{一ニ云フ助乙浦}(巻三七)」

考説:146は「道臨」を「道(助)に入(乙)る」と解し、「入る」と結び付けたもの。
    板橋は「道」と「助乙」が対応するものと見ている。「入」ではなく「臨」と
    なっていることからすれば、むしろ001「a-(臨)」と結び付けるべきだった
    かも知れない。

40 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 18:05:02 ID:.8Neq4MY
NO.017

意味:wind(風)

漢字表記:伊

再構語形:i(娜)

比較(日):上代語「iki1(息)」(娜)
       上代語「si〜ti(風)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:△××

原文:098「清風県ハ、本高句麗ノ沙熱伊県ナリ。(巻三五)」

考説:本語は李基文以来「沙熱伊=breeze(清風)」として一括して扱われてきたが、
    やはり「沙熱」と「清(=涼しい)」、「伊」と「風」に分けて分析するべきである。
    息も風も空気の流れなので、意味上の関連性は十分認められよう。上代語の
    「si〜ti(風)」は単独での使用例は見えないが、「アラシ(荒+風)」「ニシ(?+風)」
    「ヒムカシ(日向+風)」「ハヤチ(速+風)」「コチ(?+風)」等に複合語の一部と
    して見える。

41 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 18:35:14 ID:.8Neq4MY
NO.018

意味:myself(自)〜master/load(主)〜neighbors(隣)

漢字表記:伊伐支(李基・板橋)〜伊(娜)

再構語形:iboc-(板橋)〜i(娜)

比較(日):上代語「i(汝)」(娜)
       上代語「usi(主)」(娜)

比較(朝):李朝語「i'uc(隣)」

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×△×(隣);○××(自/主)

原文:181「甘勿主城ハ、本甘勿伊忽ナリ。(巻三七)」
    111「伊伐支県{一ニ云フ自伐支}(巻三五)」
    111「鄰豊県ハ、本高句麗ノ伊伐支県ナリ。(巻三五)」,

考説:本語は李基文以来「隣人」の意の高句麗語として扱われてきたが、
    その根拠たる111は巻三五の例であり、信頼性の上で問題がある。
    むしろ111の巻三七の記述である「自=伊」や181の「主=伊」を重視
    し、「伊」は「myself(自)」「master/lord(主)」の意とすべきではないか
    とスレ主は考える。なお、上代語の「i(汝)」は二人称代名詞であり、
    しかも卑罵語であるが、日本語においては一人称代名詞が二人称
    代名詞に転用される例がすこぶる多いこと、敬語は時間とともに敬意
    が薄れてゆくものであって、中世においては最上級の二人称代名詞
    であった「お前」が現在では対等〜目下にしか使えない二人称代名詞
    になったり、甚だしくは「貴様」のように卑罵語にすらなった例があること
    等を考慮すれば、十分に対応例とすることが出来ようと思う。

42 名前:スモ ◆sE9s/SSlUk 投稿日:2007/03/22(木) 18:50:44 ID:VMGmqiSE
うを!しばらく来ないでいるうちに、なんということを。

43 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/22(木) 18:51:03 ID:juCkNUD6
>>27
朱蒙(善射)は日本語のトモ=鞆(弓射の兵具)と関係ないですか?

朱蒙と応神天皇の伝説を比較神話学的に同系伝承
とする説の中で「朱蒙」と大鞆和気(応神天皇の別名)の
名前の共通性を指摘していた人がいました。
(田中勝也だったかな?)

44 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 19:24:40 ID:.8Neq4MY
NO.019

意味:wood(木)

漢字表記:乙

再構語形:il〜i(村山)

比較(日):ナシ

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):トルコ語「i¨(森)」「i¨γac(木)」(村山・李基)

日朝ツ比:×××

原文:064「高木根県{一ニ云フ達乙斬}(巻三七)」
    118「赤木県{一ニ云フ沙非斤乙}(巻三七)」
    193「木銀城ハ、本召尸忽ナリ。(巻三七)」

考説:本語については村山及び李基文に指摘されているが、板橋は064を「高=達乙」、
    「木根」を「斬」と解して本語を高句麗語から除いている。しかしながら、「山」「高い」
    の意の094「tal」は064以外すべて「達」のみで音写されており、わざわざ不審な「乙」
    を語尾として付けて再構する必要はないように思う。やはりここは村山・李基文の
    解釈に従って「乙」が「木」に相当する高句麗語であるとするのがよい。118も同様
    に解釈することが可能であり、村山・李基文ともそのように解釈しているが、高句麗
    語には「木」を意味する語としてもう一つ、024「kin〜kei」なる語が存在するので、
    板橋のように「赤=沙非」「木=斤乙」の対応と見ることも認められよう。なお、193
    について、李基文は「銀=召尸」として「木」に対応するものがないと解しているが、
    「木銀」と「召尸」の関係が逆転していると解せば、「t∫eu-l(召尸)」から「銀=t∫e」
    とともに「木=ul」を分析することも可能になってくる。尤も、「銀」のもう一つの借音
    例として「折(t∫el)」があることを思えば、いささか厳しいものがあるかも知れない。

45 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 19:40:21 ID:.8Neq4MY
>>42 スモーカーさん
 お久しぶりニダ。のんびりやりますので生暖かい目で見守ってほしいハセヨ。


>>43
>朱蒙(善射)は日本語のトモ=鞆(弓射の兵具)と関係ないですか?

 ふむ。その可能性は思いつきませんでしたね。「トモ(鞆)」の語源に
ついては、アクセント面から同じ低起式の語である「手」と結び付けて
「ta(手)+omo(面)→tomo(鞆)」か「te(手)+omo(面)→tomo(鞆)」
とする『大言海』の説がよさげな感じ(「トモ(友・供)」は高起式なので不可)
だと思ったのですが、弓関係で「朱蒙」と結び付く語と言ったら他には
ないようですし、日本語から強いて挙げるならそれになりそうですね。

46 名前:日語商売 ◆G2IlbonwGk 投稿日:2007/03/22(木) 21:23:54 ID:GPe.EfYc
>>37
板橋の挙げたツングース語を見ると、日本語の tawa(峠)が思い浮かびます。


>>38
kuwe(蹴)は「蹶」の字音を動詞として活用させた言葉という説もありますが、
ko1ye, ko1y-u という類縁語の存在に加え、高句麗語の対応例があることを考えると、
やはり祖語以来の語で、ko1y- > kuy- > kuw- という変化によりできた語形と見るべきでしょうかね。

47 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 21:29:25 ID:.8Neq4MY
NO.020

意味:east(東)/left(左)

漢字表記:順

再構語形:jiuen(板橋)

比較(日):上代語「yo2ko2(横)」(板橋)
       上代語「yo2k-(避く)」(板橋)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):エヴェンキ語「jun(東)」「j∂γin(左)」(板橋)
       ソロン語「zo¨ndul∂(東に)」(板橋)
       ネギダル語「j∂γinid∂gd(左側)」(板橋)
       オロチ語「j∂nje(左)」(板橋)
       ウデヘ語「ji∂η∂j∂(左)」(板橋)
       オルチャ語「ju∂nji/j∂vunji(左)」(板橋)
       オロッコ語「j∂vvnji(左)」(板橋)
       ナナイ語「j∂ungi∂(左)」(板橋)
       満州語「jun(左)」(板橋)
       女真語「jewen(右)」(板橋)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○×○

原文:「順奴部(『三国志』高句麗条)」
    「順奴部(『後漢書』高句麗条)
    「三曰東部、一名左部。即順奴部也。(『後漢書』高句麗条注)」

考説:本語は特にツングース諸語との間に顕著な対応が認められる例である。
    板橋によれば、北ツングース諸語に「東」の意が残り、南ツングース諸語
    には「左」が残ったという風にまとめられるという。それはよいのであるが、
    板橋が南を正面(前)とすると、東は右になるはずなのに左になっている
    のは変であり、本来は女真語のように東が右であったものが、何らかの
    理由で左になったと解釈しているのは不審である。高句麗語とツングース
    諸語の方角語彙を見比べた場合、女真語を除けば、東西(左右)は一致
    しており、南北(前後)が反対になっていることがわかる。先後関係は不明
    であるが、高句麗語とツングース諸語との間で南北(前後)関係だけが逆転
    したと考えればよいわけで、ただひとり左右が逆転している女真語の方が
    異常なのである。加えて、女真語では他のツングース諸語で北(高句麗語
    では南)を指す語が東になるという不自然な非対称が生じているという問題
    もある。

48 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/22(木) 21:37:01 ID:.8Neq4MY
>>46
 確かにそうですねぇ。高句麗語と比べるとツングース諸語も
モンゴル語もそんなに似ているという感じはしないのですが、
「tawa(峠)」はそっくりですな。上代語でもありますし、早速
日本語の対応例として付け加えておきませう(w。

49 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/23(金) 04:29:56 ID:5yZsVAjE
>>47
三国史記には「慎那部」ってのも出てきますがこれは順奴部の別表記なんでしょうね。
日本語の「しののめ」の「し」との関係はないでしょうか?

50 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 11:18:20 ID:RcIGiF3k
>>49
>三国史記には「慎那部」ってのも出てきますがこれは順奴部の別表記なんでしょうね。

 えっと。『三国史記』にですか。確かに『三国史記』には「貫那部」とか
「桓那部」「朱那部」「藻那」「椽(掾)那部」等が出てきますが、「慎那部」
ってのはなかったような。『梁書』に「慎奴部」というのが出てきますので
それの間違いでは? 『三国史記』は持っていますので、巻数を教えて
下されば確認致します。

 ちなみに、『梁書』では「慎奴部」は、『三国志』『後漢書』等に見える
高句麗五部族のうち、「東」に相当する「順奴部」と入れ替わった形で
登場します。それならなぜ「慎奴部」の「慎」を高句麗語「東」の漢字
表記として>>47で挙げなかったのかというと、『梁書』の注に

  梁書避ケテ/2蕭衍ノ父・順之諱ヲ/1作ル/2「慎奴部ニ/1」、此(ここ)ニ
  循(したが)ヒテ/v之ニ未ダ/2回(かへ)シ改メ/1。

とあるように、南朝の梁の始祖・武帝(蕭衍)の父親の諱が「順」であった
ので、避諱して「順那部」を「慎那部」に改めたものなので、中国の王朝
の都合で変えたに過ぎない漢字表記を音写の例として挙げてもあまり
意味がないだろうと考えたからです。

>日本語の「しののめ」の「し」との関係はないでしょうか?

 「しののめ」は「東雲」とも書きますので、「東」と縁のある言葉である
ことは間違いありませんが、奈良時代には用例が見えず(『万葉集』に
2例見える「しののめ(細竹目・小竹之眼)」はいずれも笹で編んだ簾の
意で使用されているようです)、語源的にも真っ暗だった東の空が次第
に明るくなってくるさまを、上記の「しののめ」の細かい隙間からようやく
光が漏れてくる様子にたとえたものであると考えられますので、高句麗
語の「東」と結び付けるのはちょっと難しいのではないかと思います。

51 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 16:37:14 ID:1vS553Ps
NO.021

意味:north(北)/back(後)

漢字表記:絶(板橋)〜助利(娜)

再構語形:juel(板橋)〜jiori(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):ナシ

比較(ツ):エヴェンキ語「jul∂(前)」
       ナナイ語「julil∂(前)」
       ウデヘ語「juli∂(前)」
       オルチャ語「juli〜julu(前の)」
       満州語「julergi(前方・南方)」
       女真語「julesi(東)」「jule(前)」

比較(他):ナシ

日朝ツ比:××○

原文:「絶奴部(『三国志』高句麗条)」
    「絶奴部(『後漢書』高句麗条)」
    「二曰北部、一名後部。即絶奴部也。(『後漢書』高句麗条注)」
    166「北夫餘城州ハ、本助利非西ナリ。(巻三七)」

考説:本語も020同様、ツングース諸語との顕著な対応が認められる例である。
    ただし、南北(前後)の関係は高句麗語とツングース諸語との間で逆転
    現象が生じている。女真語のみ「東」となっているのは理由不明である。
    166はこれまで指摘されていないが、「北=助利」「夫餘=非」「城=西」
    という対応関係があると思われる。「絶奴」は『三国史記』高句麗本紀に
    見える「朱那(巻一五)」と同一か。

52 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 17:00:52 ID:1vS553Ps
NO.022

意味:black(黒)〜万(ten thousand)

漢字表記:今勿

再構語形:k∂mur(板橋)/kimmul(村山)

比較(日):上代語「kuro1(黒)」(娜)

比較(朝):李朝語「k∂m(黒)」(村山・李基・板橋)

比較(ツ):ナシ

比較(他):インドネシア祖語「g∂lap(暗闇)」(板橋)

日朝ツ比:△△×(黒);×××(万)

原文:009「今勿内郡{一ニ云フ万弩}(巻三七)」
    009「黒壌郡{一ニ云フ黄壌郡}ハ、本高句麗ノ今勿奴郡ナリ。(巻三五)」

考説:本語は村山以来、「黒壌」と「今勿奴」との関係から「黒=今勿」という対応関係が
    あるとして認められ、朝鮮語とよく一致する典型例の一つとされてきたが、それは
    あくまでも巻三五の記述に基づいたものであり、「黒壌(黄壌)」は新羅地名に過ぎ
    ず、純粋な高句麗地名どうしの対応関係として認められるのは「万弩」と「今勿内」
    の方であることに留意しなくてはならない。板橋によれば、Beckwithは高句麗地名
    の「今(k∂m)」が新羅語の「黒(k∂m)」、漢字音の「金(k∂m)≒黄」と同音で
    あることから、新羅時代に「黒壌」「黄壌」と表記されたものであり、本語は高句麗
    語語彙から除くべきであると主張しているという。誠に卓見であり、スレ主もそれに
    賛意を表したい。

53 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 17:26:03 ID:1vS553Ps
NO.023

意味:spirited horse/charger/bravery(驍)

漢字表記:斤

再構語形:k†l/k†n(板橋)

比較(日):上代語「ko1ma(駒)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:△××

原文:007「黄驍県ハ、本高句麗ノ骨乃斤県ナリ。(巻三五)」

考説:板橋は本語を「対応語が不明のもの」のグループに入れているが、
    上代語の「コマ(駒)」が語形的にも意味的にも近いので、対応語と
    して挙げた。「コマ(駒)」の語源については、「子馬」というのが通説
    であるが、上代語において「コマ(駒)」が「子馬」の意味で使用された
    確例はなく(「コウマ(子馬)」の例は見える)、「コマ(駒)」と「ウマ(馬)」
    との間に質的差異もなかったようである。なお、再構語形について
    板橋が「k†l」を挙げている理由は不明である。

54 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 17:53:36 ID:1vS553Ps
NO.024

意味:tree/wood(木)

漢字表記:斤/斤乙(板橋)
       [月+兮](村山・板橋)
       骨(娜)

再構語形:k†n/k†l(k†r)〜γey(板橋)
       ky∂i(村山)
       kul(娜)

比較(日):上代語「ki2/ke2〜ko2/ku(木)」(村山・板橋)
       上代語「ko2te(鏝)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):オーストロネシア祖語「kahiu(木)」(板橋)

日朝ツ比:○××

原文:005「槐壌郡ハ、本高句麗ノ仍斤内郡ナリ。(巻三五)」
    021「栗木郡{一ニ云フ冬斯[月+兮]}」(巻三七)
    118「赤木県{一ニ云フ沙非斤乙}(巻三七)」
    161「縁{一ニ作ル/v椽ニ}武県ハ、本高句麗ノ伊火兮県ナリ。(巻三五)」
    186「[木+汚-シ]岳城ハ、本骨尸押ナリ。(巻三七)」,

考説:本語について李基文『韓国語の形成』には指摘がないが、朝鮮語版には
    それらしい記述があったようで、日本語版の86頁6行目と7行目の間に本語
    について指摘した文が存在した可能性が高い。005は「槐」、021は「栗」で
    あるが、その植物名に「tree」に関する語が含まれていると判断されること
    から、ここに挙げた。同様に、161は「椽」が「たるき」を、188は「[木+汚-シ]」
    が「こて」を、それぞれ意味する語であり、「wood」に関する語が含まれて
    いる可能性が高いとして挙げたものである。

55 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 17:59:36 ID:1vS553Ps
>>54
 ゴメソ。大きなミスがあったので、修正の上再投稿するニダ。

NO.024

意味:tree/wood(木)

漢字表記:斤/斤乙(板橋)
       [月+兮](村山・板橋)
       骨〜火(娜)

再構語形:k†n/k†l(k†r)〜γey(板橋)
       ky∂i(村山)
       kul〜hua(娜)

比較(日):上代語「ki2/ke2〜ko2/ku(木)」(村山・板橋)
       上代語「ko2te(鏝)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):オーストロネシア祖語「kahiu(木)」(板橋)

日朝ツ比:○××

原文:005「槐壌郡ハ、本高句麗ノ仍斤内郡ナリ。(巻三五)」
    021「栗木郡{一ニ云フ冬斯[月+兮]}」(巻三七)
    118「赤木県{一ニ云フ沙非斤乙}(巻三七)」
    161「縁{一ニ作ル/v椽ニ}武県ハ、本高句麗ノ伊火兮県ナリ。(巻三五)」
    186「[木+汚-シ]岳城ハ、本骨尸押ナリ。(巻三七)」,

考説:本語について李基文『韓国語の形成』には指摘がないが、朝鮮語版には
    それらしい記述があったようで、日本語版の86頁6行目と7行目の間に本語
    について指摘した文が存在した可能性が高い。005は「槐」、021は「栗」で
    あるが、その植物名に「tree」に関する語が含まれていると判断されること
    から、ここに挙げた。同様に、161は「椽」が「たるき」を、188は「[木+汚-シ]」
    が「こて」を、それぞれ意味する語であり、「wood」に関する語が含まれて
    いる可能性が高いとして挙げたものである。ただし、161は音読字が「火」
    であり頭子音がkではなくhなので、除いた方がよかったかもしれない。

56 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/23(金) 18:09:27 ID:1vS553Ps
NO.025

意味:letter/writing/streaks(文)

漢字表記:斤尸

再構語形:k†r〜kir(板橋)
       ki¨nr(李基)

比較(日):上代語「ko2to2(言)」(娜)

比較(朝):李朝語「kщl(文)」(李基・板橋)

比較(ツ):満州語「hergen(文)」(李基・板橋)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○○○

原文:113「文[山+見]県{一ニ云フ斤尸波兮}(巻三七)」

考説:本語は朝鮮語やツングース諸語とよく対応する例であるが、日本語も
    上代語「ko2to2(言)」が近いと思われるのでここに挙げた。

57 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/23(金) 18:34:20 ID:WhXlDTgA
地名以外での高句麗語って何語ぐらいあるんでしょうか?

58 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/24(土) 01:53:56 ID:IakCMaW2
>>57
 そうですねぇ。009「朱蒙(善射)」と092「多勿(復旧土)」くらいじゃ
ないですかね。

59 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/24(土) 17:57:13 ID:C0ZLumT6
高句麗の官位名や役職名に固有語はないですかね?

60 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/24(土) 18:39:36 ID:siXq6Tpc
>>57
 そうそう。114「位(相似)」を忘れてました。


>>59
 『三国志』高句麗条に見える「相加」「古雛加」などは確かに
固有語っぽいですね。これらに含まれる「加」は夫餘の官名
にも見えるので、夫餘語からの借用の可能性もありますが、
033「皆(王)」の存在もありますので、夫餘系諸語の共通語彙
という可能性が一番高そうです。

61 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/24(土) 20:06:56 ID:CijAyrKs
官名といえば「褥薩」とか、漢語として不可解なのが多いような気がしますが。
王は日本書紀だと「オリコケ」というのもありますね。
それと夫餘語と高句麗語は一応別ということでしょうか?

62 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/24(土) 21:00:20 ID:siXq6Tpc
>>61
>官名といえば「褥薩」とか、漢語として不可解なのが多いような気がしますが。

 そうですね。おそらく高句麗語の固有語なのでしょう。ただ、問題なのは、
目下のところそこから普通名詞を導き出す手立てがないということです。

>王は日本書紀だと「オリコケ」というのもありますね。

 確かに欽明紀七年の高句麗大乱の記事には「王(オリコケ)」の他にも
「夫人(オリクク)」「子(ヨモ)」「世子(マカリヨモ)」「正夫人(マカリオリクク)」
「中夫人(クノオリクク)」といった奇怪な訓が登場しますね。これらはいずれも
高句麗に関する記述部分にのみ使用されているものなので、確かに高句麗
語である可能性が高いはと思いますが、オリコケ・オリククは『周書』百済条
に見える「王姓ハ夫餘氏。号ス/2於羅瑕ト/1。民呼ビテ為ス/2[革達]吉支ト/1。
夏言並ビニ王也。妻ハ号ス/2於陸ト/1。夏言ノ妃也。」の「於羅瑕」や「於陸」と
見事なまでに対応しているのが逆に気になるところです。、『日本書紀』編纂
における百済系帰化人や百済系史書の影響力を考慮すれば、百済語が
転用されたという可能性も捨て切れないように思えるからです。まあ「於羅瑕」
については百済の支配層の言語である夫餘系百済語であると推定されます
から、たとえ百済語の転用であっても、同じ夫餘系ということで、高句麗語に
極めて近い存在であることには変わりありませんが。

 こうしてみると、やっぱり書紀古訓の例も高句麗語語彙として認定して語彙
集に加えて考察するべきですかねぇ。しかし、今からそうすると、整理番号が
大きく変わってしまうので、つらいなぁ(滝汗)。

>夫餘語と高句麗語は一応別ということでしょうか?

 夫餘語と高句麗語はともに夫餘系言語に属する同系の言語というのが
中国の史書の記述から得られる情報ですが、それが正しいにしても、同系
だからと言って安易に一緒くたにするわけにもいかないだろうということで、
一応分けております。

63 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/24(土) 21:03:48 ID:kw/32fd6
ここのところ書き込む暇がなかったけど、新スレ、期待しています。他の人も
既におっしゃってますが、せっかくだから論文にしてほしいと私も希望します。
論文の形になっていないと、存在しないに等しい扱いを受ける世界がいろいろ
あって、参照するのに困りますから。

三国史記地理志の巻35と巻37の性質の違いについて、非常に興味深いと思いま
す。もし先行研究で誰かが触れているのであれば、教えていただけないでしょ
うか。

64 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/24(土) 21:26:38 ID:kw/32fd6
高句麗五部のうち、四部が方角の意味でツングース語に対応することは、私は
板橋論文で始めて知りました。おそらく白鳥倉吉あたりが既に指摘していると
思いますが。

>>47
モンゴル語で左/東が
dzüün (зүүн) <- dze'ün <- ǰe'ün <- ǰegün
です。板橋論文ではツングース諸語にしか触れてませんでしたが、素人考えで
は関係ありそうな気がします。いかがでしょうか?

方角の入れ替わりについての板橋の説明はすんなり納得できるものではありま
せん。ただ、満洲語文語で dergi が東、wargi が西だったのが、満洲語の現
代語の口語と言えるシベ語では、wargi が東、dergi が西と逆転しているそう
です。直接的な証拠にはなりませんが、そういう不思議なことが起こり得ると
いう傍証にはなるかもしれません。

65 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/24(土) 22:40:11 ID:siXq6Tpc
>>63
 巻三五と巻三七の資料性の違いについて論じたもので、スレ主の
管見に入った先行研究としては、李基文『韓国語の形成』(205頁〜)
があります。李基文は『三国史記』巻三四〜三六は新羅地名の説明
であるのに対し巻三七は高句麗及び百済の地名の説明であるから、
巻三七こそ高句麗語(と百済語)の基本資料であると述べ、巻三五と
巻三七を区別なく取り扱ってきた過去の研究態度は批判されるべき
であると主張しています。正直、スレ主もこれを読むまでは巻三五と
巻三七の資料性に思いを致すことはありませんでしたから、何とも
恥ずかしい限りです。

 ただ問題なのは、李基文自身が上記のような注意喚起をしておき
ながらも、本人の行なった高句麗語認定作業では、巻三五と巻三七
の資料性の違いについて考慮しているようには見えないという点です。
『韓国語の形成』84頁以降に羅列されている高句麗語語彙の中には
巻三五にしか根拠のないもの(スレ主のいうところの巻三五系語彙)も
少なからず含まれていますが、巻三七を根拠とするもの(同じく巻三七
系語彙)と一切区別されておらず、同レベルのものとして扱われています。
そういう意味では、スレ主のアレは、巻三五系語彙と巻三七系語彙の
性格の違いを統計的に明示してみせた初めての研究ということになろう
かと思います(笑)。

66 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/24(土) 22:41:53 ID:siXq6Tpc
>>64
 興味深い情報提供、誠にありがとうございます。何せスレ主は
日本語以外はまったくの門外漢ですので、このような情報提供は
誠に助かります。高句麗語とツングース諸語との間で見られる
方角語彙の逆転現象は非常に興味深いもので、スレ主もなぜ
このようなことが起こるのか、あれこれと考えてはみましたが、
結局、はっきりとした解答が導き出せませんでした。そんなわけで、
>>47ではその辺をスルーしています。とは言え、多少考えたことも
ありますので、この機会にご笑覧に供することに致しましょう。

 まず、前後左右の意味の方が東西南北の意味よりも先に成立
したであろうことはまず間違いないところだと思います。高句麗語
では前が南、後ろが北、左が東、右が西ですが、これは南の方角
を向いている時の人間の状態と同じです。ここから、高句麗人は
南を正面と見なす慣習があったのではないかという仮説を立てて
みました。一方、ツングースの場合、前が北、後ろが南、左が東、
右が西であって、左右=東西は高句麗語と同じですが、南北=前後
が逆転しています。さきほど作った高句麗人の仮説にあてはめると、
ツングースは北を正面と見なす慣習があったということになりますが、
それだと左右と東西の関係が合いません。

 以上のことから、スレ主は高句麗語の前後左右と東西南北の対応
の仕方の方が原型であって、ツングースの方は高句麗のそれを受け
継ぎつつも、その民族的慣習から南北だけは逆転したのではないか
という考えに思い至りました。もしツングースの方が高句麗よりも古態
を残しているならば、右は東、左は西になっていなければならないはず
だからです。もしこの推論が当たっているなら、ツングース諸語の方
角語彙は高句麗語からの借用ということになりそうですが、さてさて。

67 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/24(土) 23:44:27 ID:MSpgB/T2
高句麗の方が満州において文化中心だった時代が
長いこと考えればあまり不自然でもないのでは?

68 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/24(土) 23:51:05 ID:MSpgB/T2
整理番号は、地名に由来するものをこれまで通りの番号のままで
数字の前に「A」つけてA群とし(アルファベット記号がない場合は省略とみなせば移行手続き簡単)
地名由来以外のものは新たに1から番号振り直して「B群」とすればいいのではないでしょうか。
B群は数が少ないのでなんとかなるのでは?
既存のA群の中で地名由来以外のものが含まれるなら、欠番にしてB群の新番号にリンク貼ればいいかと。

69 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 11:19:28 ID:afIYLzz2
>>68
 スレ主は板橋に従って高句麗語データを対応語が存在するグループ(A)と
存在しないグループ(B)に分けるという区分をしており、地名に由来するもの
とそうでないものという分け方はしていないんですよね。まあ所詮整理番号は
整理番号に過ぎませんので、最後の段階で付け替えればいいのではないかと。
追加語彙については、とりあえずAグループならA-120以降を、Bグループなら
B-34以降をその都度与えることにしようと思います。

70 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 11:40:43 ID:afIYLzz2
NO.026

意味:border(辺)

漢字表記:加阿(李基)〜加(娜)

再構語形:kaa〜ka(娜)

比較(日):ナシ

比較(朝):李朝語「k∧s(辺)」(李基)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×○×

原文:140「[之+守]城郡{一ニ云フ加阿忽}(巻三七)」

考説:本語は李基文によって李朝語との類似が指摘されているにもかかわらず、板橋は
    本語を挙げていない。ただし、李基文は「加阿」を「[之+守](辺)」に対応する語として
    いるが、「kaa」という語形が不自然に感じられること、また高句麗語の既知語彙として
    001「阿(overlook)」が存することを考慮すれば、辺境の意に相当するのは「加」の部分
    であり、「加阿忽」は「辺境(=加)」に臨む(=阿)城(=忽)」と解釈するのがよいように
    思われる。

71 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 12:00:10 ID:afIYLzz2
NO.027

意味:east(東)<easterly wind(東風)

漢字表記:加知(娜)

再構語形:kaci(娜)

比較(日):上代語「ka〜ke1(日)」(娜)
       上代語「si〜ti(風)」(娜)

比較(朝):李朝語「hΛi(太陽)」(娜)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○○×

原文:130「東墟県{一ニ云フ加知斤}(巻三七)」

考説:本語は先行研究で取り上げられたことが一度もなく、020「順(東)」との関係も不明であるが、
    古代日本語の「ヒムカシ(東)」は「太陽の昇る方向(ヒムカ)から吹いてくる風(シ)」、即ち東風
    が原義なので、本語についても同様の語構成から成り立っているとすれば、「太陽(=加)の
    風(=知)」となり、日本語(「加」については朝鮮語とも)と結び付けることが可能ではないかと
    考えたものである。或いは「知」を098「丁/冬(mountain pass/branch road)」や104「助(乙)/
    都(road)」と結び付けて、「太陽の道」と解するべきかも知れない。

72 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 12:25:11 ID:afIYLzz2
NO.028

意味:head(首〜頭)

漢字表記:根

再構語形:kan(Beckwith・板橋)

比較(日):上代語「kabu(頭)」(板橋)
       上代語「kami1(頭髪・頭)」(板橋)
       上代語「kasira(頭)」(板橋)
       上代語「kaΦo(顔)」(板橋)
       中古語「kaube(頭)<kami1Φe1(頭辺)」(板橋)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:092「牛首州{首ハ一ニ作ル/v頭ニ。一ニ云フ首次若。一ニ云フ烏根乃}(巻三七)」

考説:板橋によれば、本語はBeckwithによって初めて取り上げられたものらしい。
    092の「烏根乃」を「牛首(頭)州」と対応させて「牛(=烏)の頭(=根)の州
    (=乃)」と解釈したものである。

73 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 12:56:02 ID:afIYLzz2
NO.029

意味:cave/cavern/hole(穴)〜tube(管)

漢字表記:甲比/甲(村山・李基・板橋)〜押(板橋)

再構語形:kapi/kap〜ap(板橋)
       kapi/kap(李基)
       kappi/kap(村山)

比較(日):上代語「kaΦi1(峡)」(村山・李基・板橋)
       中世語「kuda(管)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):トルコ語「qapca(峡谷)」「qapi¨γ(門蔽い)」(村山・李基・板橋)

日朝ツ比:○××

原文:062「穴口郡{一ニ云フ甲比古次}(巻三七)」
    195「穴城ハ、本甲忽ナリ。(巻三七)」
    144「猪[之+守]穴県{一ニ云フ烏斯押}(巻三七)」
    107「大楊管郡{一ニ云フ馬斤押}(巻三七)」

考説:本語は014「岬・押(high mountain peak)」との関係が微妙であるが、とりあえず
    板橋に従って別語とした。李基文は本語の語形が「kapi〜kap」と微妙に相違
    することについて、(1)北部方言が「kap」、南部方言が「kapi」という方言的相違、
    (2)曲用による語形の相違、という二種類の解釈を示している。なお、板橋は古代
    高句麗語として「γap」を想定しているが、これは「ap(押)」のように頭子音が脱落
    した語形もあることから、祖形としては比較的落ちやすい摩擦音がふさわしいと
    判断したものではないかと推察される。

74 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 13:13:55 ID:afIYLzz2
NO.030

意味:turnip(蕪)

漢字表記:加夫(娜)〜加支(李基)

再構語形:kapu(娜)

比較(日):上代語「kabu(蕪・頭)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:△××

原文:125「菁山県ハ、本高句麗ノ加支達県ナリ。(巻三五)」

考説:本語は李基文によって指摘されているにもかかわらず、板橋は取り上げて
    いない。特に除かなければならない理由は考え付かないので、単なる遺漏
    であろうと思われる。本語の対応語について、李基文は何も示していないが、
    スレ主としては、前々スレで提示したように、「加支達」の「支」を「夫」の誤写
    と見なして上代語の「カブ(蕪)」と結び付けてみたい。

75 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/25(日) 13:15:46 ID:afIYLzz2
♪ようやく三十 知っとるけのけ♪

76 名前:八咫烏 ◆cPmkHzc4Fc 投稿日:2007/03/26(月) 00:36:04 ID:BQhrDI0w
>>75
ぷぉぁぁぁぁ!(ォィ

77 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 16:38:04 ID:LkeKB5aI
NO.031

意味:to plow(犂)

漢字表記:加尸

再構語形:kar(板橋)

比較(日):上代語「kar-(刈る)」(板橋)
       上代語「oΦobakari(大葉刈・大量)」(娜)
       上代語「tumugari(都牟刈)(娜)」

比較(朝):李朝語「karai(犂)」(李基・板橋)
       李朝語「kal-(耕す)」(板橋)
       李朝語「kal(刀)」(板橋)

比較(ツ):満州語「halhan/halgan(犂先)」(李基・板橋)
       エヴェンキ語・オロチ語・ナナイ語「gerbe-(折る)」(板橋)

比較(他):アルタイ祖語「ker-(切る)」(板橋)
       モンゴル語・カルマック語「kerci-(切る、溝を掘る)」(板橋)
       オルドス語「gerci-(細切れにする)」(板橋)
       チュワシュ語「karti-(溝を掘る)」(板橋)

日朝ツ比:○○○

原文:194「犁山城ハ、本加尸達忽ナリ。(巻三七)」

考説:板橋によれば、Beckwithは本語を古代中国語からの借用としているという。
    スレ主が挙げた上代語のうち、「オホバカリ(大葉刈・大量)」は味耜高彦根神
    が帯びていた太刀の名前で、『日本書紀』では「大葉刈」、『古事記』では「大量」
    という表記になっている。また「ツムガリ(都牟刈)」は、須佐之男が八岐大蛇を
    切り殺した時に中の尾の中から出てきた太刀の名前で、後の草薙の剣である。
    いずれも太刀の名称に「カリ(刈)」が含まれているので、ここに挙げた。刀と犂
    は一見遠い関係のように感じるが、日本でも上代語「サヒ」は刀と鋤の両義を
    持っていたし、須佐之男が八岐大蛇退治に使用した剣の名も「韓鋤(からさひ)
    の剣」である。製鉄技術が入る以前は鉄製品は輸入に頼っていたであろうから、
    ある時期、輸入した鉄製の農具を武器として使用していたことがあって、その
    名残りから「サヒ」のように刀と鋤の区別のない語が生まれたのかも知れない。

78 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 17:00:29 ID:LkeKB5aI
NO.032

意味:tooth/fang(牙)

漢字表記:皆尸

再構語形:kail(娜)

比較(日):上代語「ki1(牙)」(娜)
       上代語「ki1r-(切る)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:190「牙岳城ハ、本皆尸押忽ナリ。(巻三七)」

考説:本語は先行研究で取り上げられたことが一度もないが、190では「押」が「岳」に
    対応(014「high mountain peak」参照)していることは明らかであり、残る「皆尸」
    が「牙」に対応している可能性は極めて高いと思われる。日本語の「キ(牙)」と
    「キル(切)」は意味の上からもアクセントからも同源であると見てよいが、「キル
    (切)」と「カル(刈)」も同源との説(『時代別』等。ただし、アクセントは合わない)
    もあることからすれば、本語もまた032「to plow(犂)」と同源である可能性もある
    かも知れない。

79 名前:日語商売 ◆G2IlbonwGk 投稿日:2007/03/26(月) 17:00:49 ID:m3oV/Opw
>>71
ちょっと「こち(東風)」を連想させる語ですね。
ただ、第一音節の母音(「こち」の「こ」の甲乙は不明)が違うことからすると、
同語源とするにはちょっと弱すぎます。
「か→こ」の例としては「か(日)+読み」>「こよみ(暦)」という語源説がありますが、
これは後の「読む」の第1母音に引っ張られて変化したものですけど
「ち」の母音が「ア→オ」を起こしたような語例や語源説が思い当たりませんから、
なんつーか、出してみたもののビミョー。

80 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/26(月) 18:10:09 ID:w64uq5WM
>>79

同感。
こち が何処から出てくるのか疑問だった。どの程度使われていたのか、なぜ使われなくなったかと
疑問は際限ない。

81 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 18:27:49 ID:LkeKB5aI
NO.033

意味:king(王)

漢字表記:皆〜皆次〜加

再構語形:key/keyc(板橋)〜kai(李基)〜ka(村山)

比較(日):上代語「ki1mi1(君)」(娜)
       上代語「kamu〜kami2(神)」(娜)

比較(朝):新羅語「kan(干)」(板橋)
       新羅語「han(翰)」(李基・板橋)
       任那語「kanki(干岐)」(娜)

比較(ツ):女真語「χaγan(王)」(板橋)

比較(他):モンゴル語「qan/qaγan(王)」(村山・李基・板橋)
       古代トルコ語「qan/qaγan(王)」(村山・板橋)
       夫餘語「ka(加)」(李基)

日朝ツ比:○○○

原文:104「玉岐県{一ニ云フ皆次丁}(巻三七)」
    033「王逢県{一ニ云フ皆伯。漢氏ノ美女迎フル/2安臧王ヲ/1之地ナリ。故ニ名ヅク/2王迎ト/1}(巻三七)」
    「相加(『三国志』高句麗条)」
    「古雛加(『三国志』高句麗条)」

考説:本語は夫餘語の首長を意味する「加」と同源か、または借用の関係にあること
    は間違いないと思われる。アジアの遊牧民族で愛用された「qaγan(可汗)」や、
    新羅の官名「干」「翰」、任那の王を意味する「干岐」とは若干語形が異なるが、
    夫餘の「加」のように語末に-nを持たないものの方が古いのではなかろうか。
    なお、板橋は104の例をもとに「皆次」を「王」に対応するものとして扱っているが、
    この「次」は084「属格・修飾辞」と解することが可能なので、王の高句麗語借音
    表記としては「皆」と「加」のみとすべきだろう。

82 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 18:34:29 ID:LkeKB5aI
>>79-80
 「コチ(東風)」の語構成が「コ(日)+チ(風)」なら語形的にも
似ているので、面白いんですがねぇ。上代に確例がないのと、
「コチ」が「東風」として確定したのは中世になってかららしいと
いうのがネックですな。

83 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 19:16:37 ID:LkeKB5aI
NO.034

意味:yellow(黄)〜center(中)

漢字表記:骨(村山)〜桂婁(板橋)〜今勿?(娜)

再構語形:kol/kul(村山)
       ku∂r〜kweru(kueilu)(板橋)
       k∂mul?(娜)

比較(日):上代語「ki2〜ku(黄)」(村山)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:△××

原文:007「黄驍県ハ、本高句麗ノ骨乃斤県ナリ。(巻三五)」
    「桂婁部(『三国志』高句麗条)」
    「桂婁部(『後漢書』高句麗条)」
    「一曰内部、一名黄部。即桂婁部也。(『後漢書』高句麗条注)」
    009「黒壌郡{一ニ云フ黄壌郡}ハ、本高句麗ノ今勿奴郡ナリ。(巻三五)」

考説:板橋は本語を「対応語が不明のもの」のグループに入れているが、
    日本語の「キ(黄)」と対応するという村山の指摘がある以上、この
    処理は大いに疑問である。中央が黄というのは五行思想に基づく
    ものであろうか。桂婁部は『三国史記』には見えないが、同書に見
    える「沸流那(巻一五)」ないし「桓那部(巻一五)」が、あるいはこれ
    に相当するものかも知れない。なお、本語の漢字表記として「今勿」
    を付け加えたのは、009により「黄壌=今勿奴」から「黄=今勿」と
    いう対応が一応認められるからであるが、022「black」の項で述べた
    ように、本例は高句麗地名の「今(k∂m)」から新羅人が「金(k∂m)」
    を連想したものであって、高句麗語から除くべきというBeckwithの説
    にスレ主も賛同するものであるから、そういう意味では不要だったか
    も知れない。

84 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 19:44:43 ID:LkeKB5aI
NO.035

意味:coronet(冠)

漢字表記:骨蘇/蘇骨

再構語形:kolso/sokol(娜)

比較(日):上代語「kagaΦuri(冠)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:「其冠曰骨蘇(『周書』高句麗条)」
    「其冠曰蘇骨(『北史』高句麗条)」

考説:本語は李基文に指摘があるにもかかわらず、板橋が本語を挙げて
    いないのは不審である。李基文は本語の語形が『周書』と『北史』で
    正反対となっていることについて、「互いに倒置された」と述べている
    が、むしろどちらかが誤伝であると考えるべきではなかろうか。なお、
    対応語としてスレ主は上代日本語の「カガフリ(冠)」を挙げたが、
    なにぶん頭子音しか一致する要素がないので、対応語として挙げる
    にはふさわしくなかったかも知れない。

85 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/26(月) 21:23:24 ID:HGSqdQJ.
 今見返したら、私の文章「〜かも知れない」のオン・パレードですね(汗)。
これはもう駄目かも知れない…orz。

86 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 02:17:33 ID:AoX9O7Ew
北史は「登高神」、周書(隋書だったかな?)は「高登神」で
北史がらみで転倒してる例が他にもあるのがちょっと気になる。

87 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 02:27:50 ID:AoX9O7Ew
>>77
「さひ」は「鮮卑」と同様、「霊威」を意味するトルコ語と関係ないですか?

>>83
「沸流那」は「松譲国」や「藻那部」などのからみから、圭婁部より消奴部に関係するのでは。
「桓那部」と「灌奴部」は音韻的には不適合?

88 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 12:35:40 ID:Epc1gTkU
>>86
 やっぱりこれは『北史』に問題がある可能性が高いということですかね。

>>87
>「さひ」は「鮮卑」と同様、「霊威」を意味するトルコ語と関係ないですか?

 う〜ん。日本で剣が神聖なものとして扱われたことは、三種の神器の
一つが剣であることや、古墳の副葬品として用いられていることなどでも
わかりますが、それだけの理由で外国語と結び付けてよいものかどうか。
それに、日本語の「さひ」の用例を見る限り、「霊威」と直接結び付けられ
そうなものは思いつかないんですよね。強いて言えばサヒモチの神という
神様がいるにはいますが、『古事記』の海幸山幸神話に登場する一尋鰐
の神名にしても『日本書紀』神武前紀の稲飯命の別名にしても、刀剣の
所持が重要な意味を持っており、そのままずばり刀剣を持っている神と
解釈されるものですからねぇ。

>「沸流那」は「松譲国」や「藻那部」などのからみから、圭婁部より消奴部に関係するのでは。
>「桓那部」と「灌奴部」は音韻的には不適合?

 「沸流那」と結び付けたのは第2音節が流音で「圭婁部」と一致するから
というだけの理由ですので、およそ根拠に乏しいものです(ぉ。『三国史記』
で「灌奴部」に相当するものについては、040「south」で指摘するつもりでした
が、「貫那部」の方でしょう。「灌」と「貫」は漢字音が韻を含めてまったく同音
([kuan])の関係にありますからねぇ。「桓那部」の「桓」も音韻的にはかなり
近い([斤uan])ので、もし「貫那部」という存在がなければ「灌奴部」の候補
としたいくらいなのですがね。なお、「桓那部」を「圭婁部」の候補としたのは、
単に頭子音が近いからという程度の理由でしかありませんから、いつでも
取り下げる用意は出来ております(汗)。

89 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 14:28:42 ID:hJskzXfs
NO.036

意味:,heart/mind(心)

漢字表記:居尸

再構語形:kor(板橋)
       ko¨r(村山)

比較(日):上代語「ko2ko2ro2(心)」(村山・板橋)
       上代語「koro(自分自身)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):満州語「huhun(乳・乳房)」(板橋)
       エヴェンキ語「ukun(乳)」(板橋)

比較(他):古代チュルク語「kokuz(乳房)」(板橋)

日朝ツ比:○×○

原文:183「心岳城ハ、本居尸押ナリ。(巻三七)」

考説:本語は李基文も指摘しているが、再構語形や対応語は示していない。
    村山は本語については河野一郎より教示を受けたと記している。
    スレ主が日本語の対応語として挙げた「koro(自分自身)」は上代に
    一字一音の仮名書き例がないため上代特殊仮名遣の甲乙は不明だが、
    『日本書紀』古訓、平安初期の訓点資料などに見えるから、上代にも
    存した可能性は高い。高句麗語の「心(心臓)」とツングース諸語の「胸」
    のどちらが本義かはわからないが、上代日本語の「コロ(自分自身)」と
    「ココロ(心)」の関係は後者が前者の畳語で、「自分自身」の意味から
    「心」の意味が派生したように見えることからすると、本義は「胸(心臓)」
    であり、胸に手を当てて自身を指し示したことから「自分自身」の意味が
    生まれ、更にそこから自己意識としての「心」の意味も生じたものでは
    なかろうか。

90 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 14:36:20 ID:j85QvW8k
>>89

> 上代語「koro(自分自身)」(娜)

上代語の典拠には何ありますか?

91 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 15:04:13 ID:hJskzXfs
NO.037

意味:crane(鵠)

漢字表記:古衣

再構語形:koγoi(板橋)
       koi(李基)

比較(日):上代語「kukuΦi1(鵠)」(Beckwith)
       上代語「kubi1(鵠)」(娜)
       中古語「koΦu(鵠)」(李基・板橋)
       中古語「koΦi(鵠)」(娜)

比較(朝):李朝語「kohai(鵠)」(李基・板橋)

比較(ツ):ナシ

比較(他):中世トルコ語「qoγu(鵠)」(李基・板橋)

日朝ツ比:○○×

原文:151「鵠浦県{一ニ云フ古衣浦}(巻三七)」

考説:日朝高句麗語、よく一致する例である。日本語の語形は「ククヒ」「クビ」
    「コフ」「コヒ」の四形が存在するが、このうち最古形は「クビ」の方であろう。
    「クビ」は更に「*クヒ」に遡るものと思われるが、この「*クヒ」を畳語にして
    成立したものが「ククヒ」であり、母音交替を起こしたものが「コヒ」や「コフ」
    であると推定される。高句麗語の「koi」は遡れば「*koΦi」ないし「*koβi」
    のような語形だったろうし、朝鮮語の「kohai」も「*kokai<*ko-kaβi」に
    遡ると考えれば、三者はますます近い関係になる。ただし、板橋によれば、
    Beckwithは本語をオノマトペに基づく命名であるとし、系統関係を示す語彙
    として使うことは出来ないと述べているという。それについては、スレ主も
    本語は鵠の鳴き声から命名されたものであると考えているので、Beckwith
    の意見に賛同したいと思う。

92 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 15:29:03 ID:hJskzXfs
>>90
 上代には一字一音表記された確例はありませんが、
『万葉集』巻二・220の歌に「自伏君之」という句があり、
古来「ころふすきみが」と訓まれております。その他にも
平安極初期の訓点資料である『成実論』天長五年(828)
点に「自」を「コロト」と訓じた例があり、『日本書紀』古訓
にも「専用威命」(自分勝手に振舞うこと)を「コロタチヌ」
(図書寮本院政期点による。前田本平安後期点は判読
出来ない箇所があるが「■ロタチヌ」とある)と訓じた例
などがあることから、上代にも「コロ(自)」という語は存在
した可能性が高いと推定致しました。

93 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 15:52:42 ID:hJskzXfs
NO.038

意味:new(新)〜stately(敦)

漢字表記:仇

再構語形:ku(娜)

比較(日):上代語「ku-si(奇)」(娜)
       上代語「ke1-si(異)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:169「新城州ハ、本仇次忽{或イハ云フ/2敦城ト/1}ナリ。(巻三七)」

考説:本語は169の「新城(敦城)」と「仇次忽」の対応から再構したものである。
    「城」と「忽」が対応することは間違いないとして、問題は「仇次」に対応
    のが「新」なのか「敦」なのかわからないということである。「新」ならば
    新しいという意味であるし、「敦」であればこの漢字は『学研漢和大字典』
    によれば、「重厚な」という意味なので、どっしりとして立派な城という誉め
    言葉なのだろう。「次」は084「属格・修飾辞」と見なせるから、本体は「仇」
    ということになるが、「新しい」という意味でも「どっしりとして立派な」という
    意味でも、適当な対応語が見当たらない。とりあえず後者の「どっしりとして
    立派な城」というところから日本語の「不思議な」「霊妙な」「普通でない」と
    いう意味の形容詞「クシ」「ケシ」を当てはめてみたが、スレ主としても自信
    があるわけではない。なお、板橋は本語を挙げていない。

94 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 15:55:12 ID:j85QvW8k
>>92

ご教示、深謝。

>「自伏君之」という句があり、古来「ころふすきみが」と訓まれております。

話がそれますが、「ころふすきみ の 」と読まれない理由は何でしょうね。
万葉集については、恣意的な読みが固定した様に感ずる事が多いです。

95 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 17:00:09 ID:hJskzXfs
NO.039

意味:shadow(陰)

漢字表記:骨〜寒

再構語形:ku∂l〜斤an(娜)

比較(日):上代語「kage2(陰)」(娜)

比較(朝):李朝語「kщrim(影)」(娜?)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:△△×

原文:043「洞陰県ハ、本高句麗ノ梁骨県ナリ。(巻三五)」
    124「霜陰県ハ、本高句麗ノ薩寒県ナリ。(巻三五)」

考説:本語は先行研究で取り上げられたことが一度もない。用例として043と124の
    二例を挙げたが、借音漢字が異なり、そこから再構される語形の相違も小さく
    ないので、お互いに別語の可能性もある。李朝語は043の例とよく一致するが、
    巻三五系語彙なので、高句麗語ではなく新羅語である可能性も捨て切れない。
    なお、李朝語の対応語については誰が見つけたものか実は不明である。先行
    研究で指摘されていない語なので、自力で見つけたのか、スレ住人にご教示
    頂いたかのどちらかのはずなのだが、はっきりしないため、とりあえず(娜?)
    としておいた。

96 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 17:36:07 ID:hJskzXfs
>>94
 「キミ(君)」に「主君・主人」と「あなた」の二種類の用法が存在した
ことはご存じだと思いますが、上代の用法では、「キミ(君)」の直後に
格助詞「ノ」または「ガ」が来る場合、前者の意味では「ノ」が、後者の
意味では「ガ」が付くという違いがあったようなのです。「ノ」と「ガ」には
待遇表現上の違いがあり、「ノ」は尊敬、「ガ」は親愛〜軽侮の感情を
含むと言われております。本例の場合、妻が夫に対して呼びかけた
内容の歌ですので、この場合の「キミ(君)」は後者の意であると判断
出来ることから、「ころふすきみノ」ではなく「ころふすきみガ」と訓んだ
ものと思われます。ついでながら、「之」を「ガ」と訓む例は「我之心
(わがこころ)」や「松之枝(まつがえ)」等、『万葉集』には結構多いですよ。

97 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 17:43:10 ID:hJskzXfs
NO.040

意味:south(南)/front(前)

漢字表記:灌/貫

再構語形:kuan(板橋)

比較(日):ナシ

比較(朝):ナシ

比較(ツ):エヴェンキ語「amar(尻)」
       ソロン語「amaila(北)」
       ネギダル語「amaski(後ろ)」
       オルチャ語・ナナイ語「xamasi(後ろへ)」
       満州語「amasi(後方へ)」
       女真語「amargai(後ろ)」,

比較(他):ナシ

日朝ツ比:××○

原文:「灌奴部(『三国志』高句麗条)」
    「灌奴部(『後漢書』高句麗条)」
    「四曰南部、一名前部。即灌奴部也。(『後漢書』高句麗条注)」
    「貫那部(巻一五)」

考説:本語もツングース諸語とのみ対応する例であるが、前後(南北)の関係が
    きれいに入れ替わっている。本語についてのスレ主の考察は>>66を参照
    のこと。

98 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 17:55:22 ID:j85QvW8k
>>96

ご丁寧にどうも。

所有格の「が」を度忘れしていました。

99 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 18:00:49 ID:hJskzXfs
>>96
 失礼。歌の内容をよく読んだら、柿本人麻呂が荒磯の上で水死
している男の死体を見て歌ったものでした。「こんな荒々しい寝床
に自ら横になっているあなたの家を私が知っていたら、行って知ら
せてやれようものを。」という内容の歌ですから、要は人麻呂が
死人(男)に対して「キミ(君)」と呼びかけているわけで、いずれに
しても「主君・主人」の意味ではありませんが、ともあれ不正確な
ことを言って申し訳ありませんでしたm(_"_)m。

100 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 19:23:50 ID:Epc1gTkU
>>98
 >>96の件ですが、「ガ」と「ノ」の違いは所有格に
とどまるものではなく、主格助詞の場合でも同様の
使い分けがありますのでご注意を。

 ちなみに、待遇表現に関わるこの使い分けは、
現代語でも一部方言に残っています。たとえば
佐賀県方言では、

  先生ノ来んしゃった。(先生ガイラッシャッタ)
  馬鹿ガ来た。(馬鹿ガ来タ)

という使い分けをします。

101 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 21:22:07 ID:jgwuuo12
>>65
ありがとうございます。それならば、尚更論文にしていただきたいです。

>>66
向きに由来する言葉が方角に使われて、なおかつ両者が未分化の言語として、
モンゴル語が思い浮かびます。モンゴル語では、前が南、後ろが北、左が東、
右が西に対応するので、娜々志先生の想定する高句麗語語彙と一致しますね。

モンゴル語で、一部の方言では方角と向きがずれている、というようなことを
どこかで読んだ様な記憶があって、何か参考になるのではと思ったのですが、
当時はあまり興味がなかったためか、少し出典を探してみたものの、見つかり
ませんでした。

102 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/27(火) 21:34:37 ID:jgwuuo12
>>97
*kuan について、板橋は結論だけ述べていますが、ぱっと見、どう対応するの
かわかりません。素人なりに推測するに、ナナイ語にある語頭の x (軟口蓋音?)
が古形を反映していて、脱落しやすいので他の言語では脱落した。その x と
*kuan の k が対応する...ということでしょうか?

103 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 21:55:00 ID:Epc1gTkU
>>102
 板橋はおそらくk(高句麗語)→x(ナナイ語)→脱落(その他ツングース)と
いう流れを想定しているのではないでしょうか。まだ挙げるまでには至って
おりませんが、085「west(西)」でも、板橋は高句麗語形をk-と想定し、x-の
エヴェンキ語、子音の脱落したそれ他ツングース諸語と対応させていますし。

104 名前:日語商売 ◆G2IlbonwGk 投稿日:2007/03/27(火) 23:40:33 ID:TITWUJ7M
前間恭作の論文で見たことがあるのですが、中期朝鮮語でも前の意味の a(r)ph を「南」に、
後ろの意味の tui を「北」に使った例があるそうですね。
中国語でも「北」と「背」が派生関係ですし。

方言で方角がずれるというと、沖縄で北を「ニシ」というのが有名ですね。
ただこれの場合、「ネ(子)+シ(風)」が語源であり、
南風を表す「マジ(<マ(午)+シ(風))」と対になっているという説もあるようです。

>>96
また中期朝鮮語の話になりますが、これにも所有格に2種類あり
-s- は尊敬のニュアンスを持ち、-Λi・-щi は持ちなせん。

日朝両語でなぜこのように所有者への配慮を表す表現ができたのかちょっと興味深いです。

105 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/27(火) 23:53:40 ID:Epc1gTkU
>>104
>a(r)ph

 ああ、書紀古訓に見える「アリヒシノカラ(南加羅)」のアリヒですね。
あれには前という意味もあるのですか。知らなんだ。

 しっかし、こうも南を前と見なすミンジョクが多いというのはどういうこと
なんでしょうね。「君子は南面す」ってことなんでしょうか。

106 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/28(水) 00:04:54 ID:5UJ1fDVo
>中期朝鮮語でも前の意味の a(r)ph を「南」に、
>後ろの意味の tui を「北」に使った例がある

中期朝鮮語なら、単純に漢文の影響もありそうですね。

107 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/28(水) 14:17:07 ID:atvsow2g
NO.041

意味:iron/trowel(鏝)

漢字表記:骨尸

再構語形:kuru〜kulsi(娜)

比較(日):中古語「ko2te(鏝)」(娜)
       上代語「ki2/ke2〜ko2/ku(木)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):オーストロネシア祖語「kahiu(木)」(娜)

日朝ツ比:○××

原文:186「[木+汚-シ]岳城ハ、本骨尸押ナリ。(巻三七)」

考説:本語は先行研究で取り上げられたことが一度もない。「[木+汚-シ]尸」は鏝(こて)の意。
    漢字の旁は正確には号の口の部分を一に変えたものである。ユニコードでは「杇」。
    漢字表記から語形を再構する際に問題となるのは「尸」の部分である。「尸」は通常、
    語末の「-l」を示す借音漢字として使用されているが、「骨」自体が語末に「-l」を伴った
    借音漢字であるため、「-l」が二重になってしまうからである。スレ主は「尸」を母音を
    付けて「ru」と読んだ可能性と、本来の漢字音に従って「si」と読んだ可能性の二つが
    あると考えて、上記のように再構したが、これはあくまでもとりあえずの処置であって、
    いずれも自信があるわけではない。なお、日本語の「コテ(鏝)」は上代に確例が存在
    しないが、同語の初出文献である『新撰字鏡』(900年前後)は上代特殊仮名遣「コ」の
    甲乙を書き分けている文献なので、コ乙類であることがわかっている。この仮名遣から
    見ても、またアクセントから見ても語源は「コ(木)+テ(手)」であると推定されるので、
    もう一つの対応語として「コ(木)」を挙げたものである。本語も日本語の「コテ」同様に、
    その語構成に先述した024「tree/wood」を含むものと見てよいのではなかろうか。

108 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/28(水) 15:02:45 ID:atvsow2g
NO.042

意味:bear(熊)

漢字表記:功木

再構語形:kun[m]/kum(ok)(板橋)
       kongmok(村山)
       kong(→kum)(李基)
       kum(娜)

比較(日):上代語「kuma(熊)」(村山・李基・板橋)

比較(朝):李朝語「kom(熊)」(村山・李基・板橋)
       李朝語「koma」(李基・板橋)

比較(ツ):ラムト語・エヴェンキ語「kuma(海豹)」(村山・李基・板橋)
       エヴェンキ語「kumaka(牡鹿)」(村山・李基)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○○○

原文:045「功木達{一ニ云フ熊閃山}(巻三七)」

考説:本語は045に基づくものであるが、045は「熊閃山」と「功木達」の対応であるから、
    既に他の地名から対応することが明らかとなっている「山=達」を除けば、「熊閃」
    と「功木」が対応するということになる。その意味で、村山や李基文が「熊=功木」
    と解して語形を再構したのは問題であり、「閃」の要素を「功木」から抽出する板橋
    の処理の方が正当である。ただし、単純に「熊=功」「閃=木」とすると、語末子音
    が「-η」となり、対応語がいずれも「-m」を有しているという事実と合わなくなること
    も確かなので、「木」から頭子音mを借りて「kuηm」としてはいかがであろうか。
    この場合、「功」の漢字音に含まれる「-η」は同じ鼻音どうしということで直後の「m」
    に同化して消えると考えられるから、結局スレ主の考える「熊」の再構語形は「kum」
    という語形になり、対応語の語形と一層近くなる。

109 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/28(水) 15:49:34 ID:atvsow2g
NO.043

意味:wilderness/wasteland/to be rough(荒)

漢字表記:骨衣

再構語形:kur7iy(→ku∂rγiy)(板橋)

比較(日):ナシ

比較(朝):新羅語「ka¨c‘っ¨l(李基)〜ko∂rcer(板橋)(荒)」(李基・板橋)
       李朝語「k∂c‘щl-(荒)」(李基・板橋)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×△×

原文:032「荒壌県ハ、本高句麗ノ骨衣奴県ナリ。(巻三五)」

考説:本語は朝鮮語にしか対応語が見出せない例であるが、巻三五系語彙なので、
    新羅語の反映である可能性を考慮する必要がある。新羅語「荒」は『三国史記』
    に「居漆(朝鮮漢字音:k∂-c‘il)」と借音表記された例があり、李朝語ともよく
    対応するが、本語とは語形の上で相違が大きい。なお、板橋の再構語形の中
    に見える「7」は声門閉鎖音[ʔ]の代わりであるので注意されたい。

110 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/28(水) 16:31:01 ID:atvsow2g
NO.044

意味:mouth(口)

漢字表記:忽次/古次(村山・李基・板橋)〜串(李基・板橋)

再構語形:kurc/kυci/kuar(→γu∂rc)(板橋)
       kutsu(→kutu)(村山)
       kolc〜koc(李基)

比較(日):上代語「kuti〜kutu(口)」(村山・李基・板橋)

比較(朝):済州島方言「kulrε(口:卑称)」(李基)
       全羅南道方言「kul(口)」(村山)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○○×

原文:025「[犬+章]項口県{一ニ云フ古斯也忽次}(巻三七)」
    102「楊口郡{一ニ云フ要隠忽次}(巻三七)」
    062「穴口郡{一ニ云フ甲比古次}(巻三七)」
    037「泉井口県{一ニ云フ於乙買串}(巻三七)」

考説:本語は日本語とよく対応することで知られている語であるが、朝鮮語も
    方言ではあるが対応するものが存する。村山は全羅南道方言と記して
    いるが、李基文は済州島方言であると指摘しており、記述が食い違って
    いる。思うに、済州島は1946年7月までは全羅南道に属していたから、
    村山のそれも李基文と同じ済州島方言を指しているのではないだろうか。
    ただ、両者の語形が異なっている理由まではわからない。韓国の方言の
    話でもあるので、李基文の方が正しいのではないかと思う。いずれにせよ、
    朝鮮語には「ip(口)」という完全に別系統の語が存在しているので、この
    方言語彙は朝鮮語の固有語ではなく、かつて朝鮮半島南部に存在した
    倭系言語の残存という可能性を考えたくなる。なお、李基文は本語の語形
    が「忽次」と「古次」「串」と分かれているのは方言的差異の反映であろうと
    指摘している。板橋もその異形態「古次」が存在することで古代日本語の
    形態素との比較がより信憑性を増したと述べている。

111 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/28(水) 16:53:49 ID:atvsow2g
>>110
 修正や情報を追加したい箇所がいくつか出てきたので、再投稿します。

NO.044

意味:mouth(口)

漢字表記:忽次(村山・李基・板橋)〜古次(村山・李基・板橋)〜串(李基・板橋)

再構語形:kurc〜kυci〜kuar(→γu∂rc)(板橋)
       kutsu(→kutu)(村山)
       kolc(→xolc)〜koc(李基)

比較(日):上代語「kuti〜kutu(口)」(村山・李基・板橋)

比較(朝):済州島方言「kulrε(口:卑称)」(李基)
       全羅南道方言「kul(口)」(村山)

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○○×

原文:025「[犬+章]項口県{一ニ云フ古斯也忽次}(巻三七)」
    102「楊口郡{一ニ云フ要隠忽次}(巻三七)」
    062「穴口郡{一ニ云フ甲比古次}(巻三七)」
    037「泉井口県{一ニ云フ於乙買串}(巻三七)」

考説:本語は日本語とよく対応することで知られている語であるが、朝鮮語も
    方言ではあるが対応するものが存する。村山は全羅南道方言と記して
    いるが、李基文は済州島方言であると指摘しており、記述が食い違って
    いる。思うに、済州島は1946年7月までは全羅南道に属していたから、
    村山のそれも李基文と同じ済州島方言を指しているのではないだろうか。
    ただ、両者の語形が異なっている理由まではわからない。韓国の方言の
    話でもあるので、李基文の方が正しいのではないかと思う。村山は全羅
    南道方言「kul」の成立について〔kul<kulu<kutu〕という変化を考えて
    いるが、李基文は「忽次」から「xolc」を再構することによって済州島方言
    「kullε(口)」との連結が可能になるとし、古代日本語の「kuti(口)」に
    ついては高句麗語形から「l」が脱落して成立したものであると述べている。
    スレ主としては、朝鮮語には「ip(口)」という完全に別系統の語が存在して
    いることもあり、この方言語彙は朝鮮語の固有語ではなく、かつて朝鮮半島
    の南部に分布してした倭系言語の残存という可能性を考えたいところである。
    なお、李基文は本語の語形 が「忽次」と「古次」「串」と分かれているのは方
    言的差異の反映であろうと指摘している。板橋もその異形態「古次」が存在
    することで古代日本語の形態素との比較がより信憑性を増したと述べている。

112 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/28(水) 17:35:52 ID:atvsow2g
NO.045

意味:gem(玉)

漢字表記:古斯(村山・李基・板橋)〜古(板橋)

再構語形:kυsi〜kυ(板橋)
       kusi<kusil(村山)

比較(日):上代語「kusiro2(釧)」(村山・李基・板橋)
       中古語「kujiri(釧)」(娜)

比較(朝):李朝「kusщl(玉)」(村山・李基・板橋)

比較(ツ):満州語「gu(玉)」(板橋)
       女真語「γun(玉)」(板橋)

比較(他):モンゴル語「gas(玉)」(板橋)

日朝ツ比:△△△

原文:109「玉馬県ハ、本高句麗ノ古斯馬県ナリ。(巻三五)」

考説:本語について、板橋は「古斯」を既知語彙のグループに入れて「gem(玉)」と
    して認定しておきながら、「古」を「対応語が不明のもの」のグループに入れて
    「jade(玉)」の意の語としており、統一が取れていない。後者はおそらく本語
    の「斯」を「属格・修飾辞」と解したものであろうが、たとえそうであるとしても、
    対応語は存在するわけで、既知語彙のグループに分類すべきであったと思う。
    本語は巻三五系語彙ではあるが、日朝ツングースともよく対応する例である。
    特に日本語と朝鮮語は非常に語形が近く、日>朝か朝>日かは俄かに即断
    は出来ないが、どちらかが借用語である可能性も高い。一方、板橋のように
    「斯」を「属格・修飾辞」であると考えると、高句麗語とツングース諸語が近くなる。
    要するに本語の場合、日・朝と高・ツでグループがきれいに分かれるわけで、
    地理的なことを考えればぴったりと当てはまる例ということになるが、さてさて。
    なお、中古語の「クジリ(釧)」は『新撰字鏡』(900年前後)に見えるものであるが、
    「久自利」と万葉仮名表記されており、第二拍は濁音であった可能性が高い。
    日本の釧は貝や石に穴を開けて腕輪としたものが本来の形であって、後に緒
    に玉を通して腕に巻くケースも登場したが、そういう意味では日本の「釧」は「玉」
    とは必ずしも縁が深いとは言えない。むしろ中古語の語形からは、穴を開ける
    意の動詞「クジル(抉)」から「クシロ(釧)」が生まれた可能性すら考慮する必要
    がありそうである。

113 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 15:11:52 ID:7fWQpdIg
NO.046

意味:walled city/fort(城)〜gulch(谷)

漢字表記:忽(村山・李基・板橋)〜骨(板橋)
       溝[シ婁](李基)

再構語形:χu∂r〜ku∂r(板橋)
       kol/kul(村山)
       xol〜ku¨ru¨(李基)
       k∂l〜k∂l∂(娜)

比較(日):上代語「ki2(城)」(村山・板橋)

比較(朝):百済語「ki2(李基)〜ki(板橋・娜)(城)」(李基・板橋)
       李朝語「kol(谷・洞)」(李基・板橋)

比較(ツ):エヴェンキ語「golo(街)」(板橋)
       満州語「holo(谷)」(李基・板橋)
       満州語「golo(城)」(村山)

比較(他):モンゴル語「qol-γan(城)」(村山)
       古代トルコ語「qol-γan〜qulγan(城)」(村山・板橋)

日朝ツ比:○○○

原文:017「買忽{一ニ云フ水城}(巻三七)」
    040「臂城郡{一ニ云フ馬忽}(巻三七)」
    114「母城郡{一ニ云フ也次忽}(巻三七)」
    197「似城ハ、本史忽ナリ。(巻三七)」他多数
    「[糸乞]升骨城(『北魏書』高句麗条)」
    「溝[シ婁]ナル者ハ句麗ノ名。城也(『三国志』魏志東夷伝高句麗条)」

114 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 15:13:32 ID:7fWQpdIg
考説:本語は最も有名な高句麗語の一つで、用例もすこぶる多い。『三国史記』の
    高句麗地名の借音表記としては「忽」のみが使用されており、語末は「-l」で
    あったと見てまず間違いないが、『三国志』の「溝[シ婁]」という漢字表記からは、
    古くはは母音で終わる語形であったことが窺われる。日本語と百済語の語形
    はよく似ているため、李基文は百済語からの借用語であると推定している。
    その可能性はあるとは思うが、李基文が新羅語形を「ki2」としているのは疑問
    である。なぜなら、百済では「城」の借音表記として「己(上代特殊仮名遣キ乙類)」
    だけでなく「只(同甲類)」も使用しており、上代日本語のような発音上の区別は
    なかったと思われるからである。ついでに言えば、新羅でも「城」の借音表記として
    「支(同甲類)」を使用した例(「闕城郡ハ、本闕支郡ナリ。(巻三五)」)があるので、
    「ki(城)」はもっと広い地域で使われていたことがわかるし、『三国志』東夷伝に
    見える弁辰十二国の「勤耆国」の「耆」も「城」である可能性があるかも知れない。
    村山は日本語「ki2(城)」の成立について〔kol→koi→ki2〕という変化を想定して
    いるが、果たしてそういう変化が可能なものなのかどうか。また、板橋のみ「城」
    の借音表記として「骨」を挙げるが、『三国史記』地理誌には「骨」を「城」の意の
    借音表記として使用した例は見当たらない。『北魏書』等の中国の史書に見える
    高句麗建国の地である「[糸乞]升骨城」の「骨」を指して言っているものではないか
    とも思うが、不審である。なお、金東昭は、高句麗は山と谷の多い土地柄である
    ため、高句麗人は谷に集落を作ったから集落名として「忽(=谷)」を付けただけ
    のことに過ぎず、「城」の借音表記として「忽」を使用しているからと言って安易に
    「忽=城」と見なしてきた過去の研究態度を非難している。

115 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 15:40:26 ID:7fWQpdIg
NO.047

意味:to evade/dodge/shun〜haunt(閃)

漢字表記:木

再構語形:m∂wk(板橋)

比較(日):上代語「mi1-(見る)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:045「功木達{一ニ云フ熊閃山}(巻三七)」

考説:本語は板橋によって初めて取り上げられた語であるが、板橋は「対応語が不明
    のもの」のグループに分類している。板橋は本語の意味として「to evade/dodge/
    shun」を挙げているので、板橋は「熊閃」を熊から身をかわすとか避けるという
    意味で捉えているということになる。一方、スレ主は「閃」をちらちら見えるという
    意味に解釈した。その場合は、「熊閃山」は熊がしばしば出没する(=haunt)山
    という意味になる。地名としてはスレ主の案の方がわかりやすいと思うがいかが
    であろうか。なお、042「kum(bear)」の再構時にスレ主は「木」の頭子音「m-」を
    利用したので、そういう意味では本語は語頭に「m」の付かない語形であるべきで
    あるが、スレ主は(板橋も)この「m」を前接語の「kum(bear)」の末子音と後接語
    である本語の頭子音の両者に併用したものと考えた。板橋がそのように処理した
    理由ははっきりしないが、スレ主の場合はそのようにすれば本語を古代日本語の
    「mi1-(見る)」と結び付けることが出来ると考えたからであり、そういう意味では
    恣意的な処理であると非難されても言い訳は出来ないであろう。

116 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 15:59:05 ID:7fWQpdIg
NO.048

意味:hard(堅)〜arm(臂)

漢字表記:馬

再構語形:ma(李基・板橋)

比較(日):上代語「ma(真)」(娜)
       上代語「mata-si(完)」(娜)
       上代語「mak-(巻・枕・娶)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):エヴェンキ語「maηa(堅)」(李基・板橋)
       ラムト語「maη(堅)」(李基・板橋)
       満州語「maηga(堅・難)」(李基・板橋)
       女真語「manga(難)」(板橋)

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○×○(堅);○××(臂)

原文:040「臂城郡{一ニ云フ馬忽}(巻三七)」
    040「堅城郡ハ、本高句麗ノ馬忽郡ナリ。(巻三五)」

考説:本語は040のみしか用例が存在しないが、巻三七では「臂=馬」、巻三五では
    「堅=馬」という対応関係になっている。従来はツングース諸語との対応関係を
    重視して巻三七の「臂」を「堅」の誤写と捉える見方がなされてきたが、板橋は
    巻三五から「堅=馬」を、巻三七から「臂=馬」をそれぞれ別個に取り出し、
    前者を既知語彙として、後者を「対応語が不明のもの」として取り扱っている。
    スレ主は巻三七を重視する立場であるが、誤字説も捨てがたいので、上記の
    ように併記する形にした。いずれの意味にせよ、先行研究では日本語との間
    で対応語は一切指摘されていないが、「堅」の意味では古代日本語の完全に
    揃った状態を意味する「マ(真)」や「マタシ(完)」を、「臂」の意味では動詞「マク
    (巻・枕・娶)」を候補として挙げてみたい。「マク」は腕を対象に巻きつける意味
    が原義ではないかと考えたわけである。日本語には「ウデ(腕)」を動詞化した
    「ウダク(抱)」という語が存在することも参考になろうかと思う。

117 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 16:23:53 ID:7fWQpdIg
NO.049

意味:horse(馬)

漢字表記:馬

再構語形:ma(板橋)

比較(日):上代語「uma〜muma〜ma(馬)」(板橋)

比較(朝):李朝語「mΛl(馬)」(板橋)

比較(ツ):ナナイ語「mori(馬)」(板橋)
       満州語「ma(板橋)〜morin(娜)(馬)」(板橋・娜)

比較(他):モンゴル語「morin(板橋)〜mori/muri(娜)(馬)」(板橋・娜)
       トルコ語「mare(馬)」(娜)

日朝ツ比:△△△

原文:109「玉馬県ハ、本高句麗ノ古斯馬県ナリ。(巻三五)」

考説:本語は仮に高句麗語であったとしても、中国語からの借用語(漢語)であることが
    明らかなので、ここに挙げるにはふさわしくないようにも思うが、板橋が取り上げて
    いることもあって、一応挙げたものである。なお、ツングース諸語及び他言語の比較
    内容が板橋とスレ主との間で異なっているが、何せスレ主の情報自体がネットに
    基づくものなので、この部分については辞書での確認を要する。

118 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 16:53:46 ID:7fWQpdIg
NO.050

意味:big willow(大楊)

漢字表記:馬斤

再構語形:mak†n/mak†r(板橋)

比較(日):上代語「ma(真)」(娜)
       上代語「maki2(真木・槙)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:107「大楊管郡{一ニ云フ馬斤押}(巻三七)」

考説:板橋は本語を「対応語が不明のもの」として分類している。板橋は本語の意味として
    「‘a kind of tree[lit.'big willow'(大楊)’]」と記していることから、必ずしも本語を大きな
    楊の木とは捉えておらず、ある種の木を指す語であると解しているようである。確かに
    高句麗語の「楊」としてはB-015「去(楊)」(後出)が存在する上、語形の上からはA-024
    「斤/斤乙(tree/wood)」との関係がありそうなので、そのように考えたい気持ちもまあ
    わからないではない。ただ、本語とB-015「去(楊)」もkの音を持つ点では共通するので、
    A-024「斤/斤乙(tree/wood)」を含めてお互いに何らかの関係があるとするのがよい
    のではなかろうか。

119 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 17:09:16 ID:7fWQpdIg
 >>118の「考説」でA-024とかB-15とか書いてありますが、これは>>69
書いたように、スレ主が対応語が存在するグループをAグループとし、
対応語が存在しないグループをBグループと区分していることに基づく
呼称です。本来なら、最初の段階で明示すべきことだったのですが、
うっかり忘れておりました。NO.のところも、本当はA-001のようにしておく
べきだったんですがねぇ。当初の予定では、とりあえずAグループを先に
挙げ、その後でBグループを挙げ、最後にCグループとして高句麗語語彙
から除いたものを挙げるつもりだったのですが、>>62で触れた書紀古訓
の高句麗語らしき語以外にも、こちらのケアレスミスで漏らしてしまった
高句麗語語彙があることに昨日の段階で気が付いてしまいました(滝汗)。
そんなわけで、いずれそれらの語彙も何らかの形でお示ししないわけには
参りませんが、今のところはまだ未定とさせて下さい。

120 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/29(木) 17:18:42 ID:7fWQpdIg
 何とか50達成。ようやく全体の1/3に達しますた。まあBグループは
対応語が見つからないグループなのでさらっと行けちゃうでしょうし、
Cグループもそんなに数が多くないので、こちらもそれほど時間は
かからないと思いますが、やっぱりAグループはいろいろ書くことが
あってしんどうおますな。まあぼちぼちやりまっさ。

121 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/30(金) 18:44:56 ID:gKLP/LXk
 今日はちょっと忙しかったのと、風邪を引いて体調が悪かったのとで、
高句麗語うpはお休みさせて頂きますた。代わりと言っては何でつが、
>>117の満州語・モンゴル語・トルコ語の「馬」を意味する語について、
図書館にあった辞書で調べた結果をご報告致しまつ。

◎満州語:morin(馬)。板橋の言う「ma」は見えず。
◎モンゴル語:morin(馬)。ウェブに見える「mori/muri」は見えず。
◎トルコ語:まったくの別語。ウェブに見える「mare」は見えず。

 ちなみに、ウェブとは下記のことでつ。

http://gogen-allguide.com/u/uma.html
馬の語源・由来

 いったいどうなってるんでせうね(汗)。

122 名前:日語商売 ◆G2IlbonwGk 投稿日:2007/03/30(金) 18:53:56 ID:IbbYc8Fw
おつかれさまです。

>>105
初期古訓に arph が出てくるとは初耳でした!!
現代語では r の脱落した aph という形で「(方向の)前」や「(時間の)これから先」を
表すのに使われます。

韓国語って、方角だけを表す固有語がなくて、現代語でも東西南北は漢字語に「〜の方」という意味の
ccok という言葉をつけて表します。
じゃあ昔はどうかというと、『鶏林類事』でも方角については「東西南北同」とやる気のない処理w

ただ、漁師が使う言葉では「東」を表す sae、「南」を表す ma って単語があります。
「東風」は saes-param とか。
ただ、これが本当に古来からの語かというと、ちょっと怪しいところもあって、
sae は中期語で s∧i という形が少し現れるそうですが、
何となく「夜が明ける」という意味の sae-ta(中期語 :sai-.ta)との関係がありそうだし、
ma は中期語の例もないようで、あるいは「(十二支の)午」の意味の mar の転訛や、
日本語の「マ」「マジ」の借用という可能性も考えられるでしょう。

ただそうすると、漢字語輸入以前はどんな言葉使ってたんだ、という疑問がわいてくるのですが、
どうも左右を表す言葉で東西を言った例はないようです。
というか、「右」を表す orщn- は「正しい」「道理に合っている」という意味の orh-ta からの派生語だし、
「左」を表す oen- も「順番が逆で不便だ」「心がねじけている」という意味の oe-ta の派生語という、
フランス語みたいな状況で、そこから更に方角を表すまでには至らなかったようですが。

123 名前:名無しさん 投稿日:2007/03/30(金) 19:29:05 ID:IMFaNT96
>>103
ありがとうございます。ちゃんと音韻法則を打ち立てられる日がくるといいん
ですけどね。

>>121
モンゴル語については、mori で問題ありません。morin の末尾の n は、「不
定の n」と言われて、後続の付属語によって現れたり現れなかったりします。
例えば、主格 (無標) では mori ですが、与位格 du がつくと、morin_du と
なります。「不定の n」を持つ語の見出し語をどうするかは、辞書編集者の好
みによるようです。

「mori (muri)」とあるのは、おそらく、モンゴル文字では o と u が同形で、
字面の上では mori と muri が区別できないからだと思います。

124 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/31(土) 14:36:07 ID:Et9tCxtg
>>122
 任那語や朝鮮語で南が前、北が後ろということは、辰韓・弁韓の韓族も
南を正面と捉える慣習があったということになり、その点夫餘族の高句麗
と一致するわけですが、日本語ではその辺がどうなのかはっきりしないん
ですよね。ただ、昨日『白鳥庫吉全集』を斜め読みしていたら、白鳥は
日本語の「ミナミ(南)」を「メ(目)+ナ(〜の)+モ(方)」の転、「キタ(北)」
を「カタ(肩)」の転と解することが出来るとし、日本人も南を正面と捉えて
いたと主張しておりました。尤も、金田一法則に照らせば、どちらも見事な
までに古代アクセントが合わないので、首肯し難いんですけどね。

>>123
 なるほどそういうわけですか。ありがとうございます。モンゴル語の語形
は「mori(馬)」ということに致します。ついでながら、トルコ語については、
確証が得られるまで本表からは除くことにしようと思います。

125 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/31(土) 17:11:52 ID:Et9tCxtg
 風邪がまだ直っていないこともありますので、本日も
高句麗語うpはお休みさせて頂きますm(_"_)m

<チラシノウラ>
 白鳥の著作を読んで思ったことですが、日本語学等、
専門の立場から見ればいろいろ問題はあるにせよ、
日朝両言語の比較研究という分野での白鳥の業績は
先駆的なものであることは間違いないわけで、もう少し
高く評価されてもいいのではないかと思いました。結局
は戦前の日韓同祖論の逆風によるものなのでしょうがね。
</チラシノウラ>

126 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/03/31(土) 18:24:55 ID:Et9tCxtg
 ネットサーフィン(死語)をしていて偶然見つけますた。

http://www.uni-tuebingen.de/kultur-japans/ka/KiKi/Nihongi1.htm
http://www.uni-tuebingen.de/kultur-japans/ka/KiKi/Nihongi2.htm
http://www.uni-tuebingen.de/kultur-japans/ka/KiKi/Kojiki.htm

これらのデータは国文学研究資料館のデータベースに登録されている岩波旧大系の
『日本書紀』と『古事記』の電子データそのままでつな。私は正規のルートで同データを
入手、所持しておりまつのでわかるのでつ。URLを掘っていくと、このデータを載せて
いるのはドイツのチュービンゲン大学のDr. Klaus Antoniなる日本文学研究者みたい
でつ。しっかし、いくら外国だからって、無断転載はイク(・A・)ナイ!!

127 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/04/02(月) 14:17:38 ID:omVnUMd2
NO.051

意味:iron(鉄)〜round/ring/circle(円)

漢字表記:毛乙

再構語形:mawir(板橋)

比較(日):上代語「maro2(丸)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:×××(鉄);○××(丸)

原文:042「鉄円郡{一ニ云フ毛乙冬非}(巻三七)」

考説:板橋は本語を「対応語が不明のもの」として分類し、意味を「ring/circle(円)」と
    認定しつつも、直後に「or ‘iron’?」ともしている(論文上ではレイアウトの失敗で
    次項にずれ込んでしまっているが)。これは村山が097「冬非」をトルコ語の「鉄」
    と結び付けるために042の対応を「鉄=冬非」「円=毛乙」と倒置して解釈したの
    を踏襲したものである。しかしながら、042の原文は「鉄円」と「毛乙冬非」なので
    あるから、まずは「鉄=毛乙」「円=冬非」としておき、倒置により「鉄=冬非」
    「円=毛乙」という対応になっている可能性もあるかという程度にとどめておくの
    がよいと思われる。

128 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/04/02(月) 14:26:35 ID:omVnUMd2
NO.052

意味:gnarl/joint(節)

漢字表記:蕪子

再構語形:butsi(娜)

比較(日):上代語「Φusi(節)」(娜)

比較(朝):ナシ

比較(ツ):ナシ

比較(他):ナシ

日朝ツ比:○××

原文:167「節城ハ、本蕪子忽ナリ。(巻三七)」

考説:本語は日本語とよく対応するように見えるにもかかわらず、先行研究で
    取り上げられたことが一度もないのは不思議である。

129 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/04/02(月) 14:43:01 ID:omVnUMd2
NO.053

意味:garlic(蒜)

漢字表記:買尸

再構語形:meir(板橋)
       mair(李基)

比較(日):上代語「mi1ra(韮)」(李基・板橋)

比較(朝):李朝語「man∧l(蒜)」(李基・板橋)

比較(ツ):ナシ

比較(他):モンゴル語「maηgirsun(野蒜)」(李基・板橋)
       モンゴル語「manggir(蒜)」(李基)

日朝ツ比:△△×

原文:127「蒜山県ハ、本高句麗ノ買尸達県ナリ。(巻三五)」

考説:モンゴル語の対応語の「maηgirsun(野蒜)」について、李基文は中世モンゴル語で
    あるとする(『韓国語の形成』243頁)が、板橋はモンゴル語としつつも「?」と疑問符を
    付けている。同語を確認できなかったものであろうか。実際、李基文は別の箇所(同書
    87頁)では「manggir(蒜)」と対応させており、統一が取れていない。

130 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/04/02(月) 14:55:54 ID:omVnUMd2
NO.054

意味:colt(駒)

漢字表記:滅烏

再構語形:meru(板橋)
       mero(娜)

比較(日):上代語「uma〜muma〜ma(馬)」(板橋)
       上代語「ko1ma(駒)」(娜)

比較(朝):李朝語「mΛl(馬)」
       李朝語「mΛ'jaci(駒)」

比較(ツ):ナナイ語「mori(馬)」
       満州語「ma(板橋)〜morin(娜)(馬)」(板橋・娜)

比較(他):モンゴル語「morin(板橋)〜mori(娜)(馬)」(板橋・娜)

日朝ツ比:○○○

原文:004「駒城{一ニ云フ滅烏}(巻三七)」

考説:本語は004の「駒城」「滅烏」の関係を「駒=滅烏」「城=φ」としたものであり、
    やや変則的であるが、「〜城」は地名に後から付加される可能性が高い語で
    あると思われるので、許容範囲ではなかろうか。なお、板橋は本語から指小辞
    として113「烏」を抽出している。

131 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/04/02(月) 15:52:35 ID:omVnUMd2
NO.055

意味:river/water(川・水)

漢字表記:買/米

再構語形:mey(板橋)
       mie〜mo¨i<*mo¨r(李基)
       me〜mi(村山)

比較(日):上代語「mi1(水)」(村山・李基・板橋)

比較(朝):新羅語「mul(水)」(板橋)
       李朝語「mщl(水)」(李基・板橋)

比較(ツ):エヴェンキ語「mu(水)」(李基・板橋)
       女真語「mu¨(水)」(板橋)
       満州語「mu-ke(水)」(李基・板橋)

比較(他):中世モンゴル語「mo¨ren(江・海)」(李基)
       トルコ語?「mu ̄(水)」(板橋)
       ギリヤーク語「m'∂(川の源)」(板橋)

日朝ツ比:○○○

原文:003「南川県{一ニ云フ南買}(巻三七)」
    017「買忽{一ニ云フ水城}(巻三七)」
    041「内乙買{一ニ云フ内尓米}(巻三七)」
    041「沙川県ハ、本高句麗ノ内乙買県ナリ。(巻三五)」
    106「[犬+生]川郡{一ニ云フ也尸買}(巻三七)」
    072「内米忽{一ニ云フ池城。一ニ云フ長池}巻三七」

考説:本語は高句麗語と日・朝・ツからアルタイ諸語までよく対応する例である。
    ただ、板橋のその他諸語との比較の箇所に出てくる「mu ̄(水)」の略称
    「TKc」は不審である。とりあえずトルコ語?(同論文の略称はTk)として
    処理したが、トルクメン語(同Tkm)の誤りかも知れない。そういう意味では、
    「mo¨ren(江・海)」の「WMo」も妙なのであるが、これは「MMo」の誤記
    として捉えた。板橋論文にはこの種の誤記が少なくないので要注意である。
    しかし、それよりも問題なのは、板橋が本語の漢字表記として「勿」を挙げて
    いる点である。これは060「徳水県ハ、本高句麗ノ徳勿県ナリ。(巻三五)」に
    拠るものであるが、新羅地名に「泗水県ハ、本史勿県ナリ。(巻三四)」とあり、
    新羅語では「水」を「勿(mol〜mul)」と言ったことは明らかである。一方、
    高句麗語の場合、060を除きすべて「買」「米」で漢字表記されており、語末
    に「-l」は存在しなかったと見てよい。そもそも060は巻三五の例ということも
    あり、新羅語がその地名に反映している可能性が高いことを考慮すれば、
    「勿」を高句麗語の漢字表記例として認めるのは危険である。てなわけで、
    スレ主の判断としては、「勿」を本語の漢字表記より削除するとともに、同語
    をCグループ(高句麗語語彙から除いたもの)に属せしめるのがよいという
    結論