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高句麗語合戦3 〜あれは韓国これは日本〜
- 279 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/05/28(月) 16:22:05 ID:atvsow2g
- すっかり時間が経ってしまいましたが、>>259-262の続きです。
まずは資料ということで、前回示さなかった兼右本と穂久邇文庫本のデータを示しておきます。
なお、兼右本にはヲコト点も付されていますが、表記しづらいこともあり、省略しました。
◎兼右本(1540年写)
A クノ ヲリク+ トモ ヲリコケ トシ ヤツ
百 済 本 記 云 高 麗 以 正 月 丙 午 立 中 夫ー人 子 為 王 年 八ー歳
二 ムツキノ 一 二 ヨモ一 V
コク オリコケ ヲリク+ マカリ オリク+ トモ ク マカリヨモ ノ シウト ソ クン
狛 王 有 三 夫 人 正 夫ー人 無 子 中 夫ー人 生 世ー子 其 舅ー氏 麁ー群
コクコノオリコケ 二 V 二 一
コウ オリク+ コトモヲ ヤマイスル
也 小 夫ー人 生 子 其 舅ー氏 細ー群 也 及 狛 王 疾ー篤 細 群 麁 群
六隻 V 二
各 欲 立 其 夫 人 之 子 故 細 群 死 者 二 千 餘 人 也
V 二 一
Bイロハ オリク+
母 夫ー人
◎穂久邇文庫本(1500年前後写)
B ヲリクシ
母 夫ー人
- 280 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/05/28(月) 16:25:35 ID:atvsow2g
- 前回は「小夫人」の「小」の意の高句麗語らしき語として「sin(小)」を再構しましたが、
それ以外にも高句麗語らしき語はいくつか見えます。やりやすいものから順々に片付
けることにしましょう。まずは「中夫人」の「中」の訓として出てくる「ク」ですが、こちらは
A-034「kol〜kul〜kweru(黄〜中央)」と関係付けることが可能です。A-034は語形と
意味が確定しておりませんが、書紀古訓を用例として加えることにより、語形としては
「kol」や「k∂mul」よりも「kul〜kweru」が、意味としては「yellow」よりも「center」の方
が正しいという可能性が高まったと言えるでしょう。「中夫人」とはまさに正夫人と小夫人
の間に挟まれた真ん中の夫人という意味だったわけです。
次に、「子」を意味する語として「ヨモ」なる語が見えます。白鳥庫吉は「トモ」としていま
す(>>146)が、これは彼が依拠した『日本書紀』のテキストに問題があったための誤認で
あって、正しい語形が「ヨモ」であることは既に>>151で述べた通りです。しかしながら、
「ヨモ(子)」に相当する高句麗語の既知語彙は知られておりませんし、今のところは日本
語・朝鮮語等、周辺言語にもそれに対応する語を見出すことは出来ていません。日本語
の親族語彙の中から語形の近いものを強いて挙げるなら、せいぜい「イモ(妹)」「ヨメ(嫁)」
「ヤヤ(嬰児)」くらいですが、無理っぽいですね。方言で探すと「ヨモ(猿)」なんて語もあり
ますが、赤子の顔が猿に似ていることから猿の意に転じたとでもしないことには、こちらも
無理そうです。現状ではお手上げですね。
- 281 名前:娜々志娑无 ◆1ONcNEDmUA 投稿日:2007/05/28(月) 16:29:04 ID:atvsow2g
- 続いて「正夫人」「世子」の一部として出てくる「マカリ」という語について。
本語については、岩波の旧大系『日本書紀』に大野晋執筆と思しき解説が
あり、李朝語の「mΛt-har」の音写ではないかという推定がなされています。
『李朝語辞典』を見ますと、確かに兄や姉等目上の親族を指す語に冠する
「mΛt」という語が見え、李朝語「mΛt」が親族の序列で上の者を意味する
語であることは窺えます。ただわからないのは「har」でして、スレ主の探し方
が悪いのかも知れませんが、『李朝語辞典』にはそれらしいものは見当たり
ません。文法成分なのかとも思いましたが、李朝語の属格は「-Λi/щi」「-s」
(李基文『韓国語の歴史』による)のようですから該当しないようです。この辺
は朝鮮語にお詳しい人にお教え願いたいところですね。一方、日本語から
対応する語を見つけるのは難しそうです。せいぜい「マ(真)」くらいですかね。
ところで、今気が付いたのですが、もしこれが「har」ではなくて「hΛr」なら、
『李朝語辞典』に見える「hΛl(一日)」と対応させることが出来るのではない
でしょうか。仮にですよ、複合語の一部となった「hΛl」に「一番目」という意味
が認められるのであれば、「mΛt-hΛl」は「一番上の」という意味になります
から、高句麗語?「マカリ」は李朝語で説明がつくということになります。しかし、
それよりも重要なのは、本語の解釈次第で高句麗語の数詞「一」を明らかに
出来るかもしれないということです。何せ高句麗語の数詞は三・五・七・十以外
のものは知られておりませんから、もしこの解釈が成り立つのであれば、一に
ついては高句麗語が新羅語〜朝鮮語の数詞と対応し、日本語とは対応しない
ということになり、私も大幅に高句麗語についての考えを改めなくてはならなく
なってしまうわけですが、どうなんでしょうねぇ。
何か恐ろしい考えになってしまった(><;)ので、王を意味する「オリコケ」と
王妃を意味する「オリクク(オリクシ)」については次回に回します。
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