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韓国の歴史をものすごくわかりやすく書いてみた

1 名前:九尾狐 ◆85KeWZMVkQ 投稿日:2007/12/05(水) 11:19:26 ID:oOlcPZL.
韓国と日本の歴史をなるべく口語調で、かつ会話形式も含めながら
小学生にもわかるように書くのがルールです。
ソースをベタッと転載するのではなく、おもしろおかしく検証してみましょう。

261 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/25(金) 07:54:07 ID:o46CWxbU
529 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:10:31 ID:yej0tPU3
(続き)
伊藤 「本大臣の場合はどのようなことでも後の批准は要せずに決定する全権をもつ。
よって本大臣が言うところとその行為はすなわち我が天皇陛下が自らされるのと同じである(キッパリ)」

李 「本大臣も調印の権があるが、談判の結果は我が皇帝陛下の批准を要するアル」

伊藤 「その事はすでに知った。一国の君主が批准の権を持つのは当然である。しかし君主の批准は可否の実よりも、
むしろ格式に止まることは閣下も承知であろう。仮にも両国全権大臣の間で決定したことを後で政府が
排斥するようなことは、格式を越えて実に及ぶことであると言わざるを得ない(ジャブ!)」

李 「まことに貴諭のとおりである。よって本大臣は次の2点を述べるアル。第1、一国の君主が批准の権を保有するなら、
我が国皇帝陛下もまたその権を保有する。第2、閣下がもし大なる難問を提出して本大臣を困らせて
拒むことができないような条約に調印させないなら、結んだ条約の効力は全うするだろう」
 言葉を終わって李鴻章はまたニッコリと微笑んだ(ヒヒヒ)
 あっさりと伊藤のジャブをかわす。

530 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:12:22 ID:Ccb7YJSS
(続き)
伊藤 「それならば、閣下が後日貴国皇帝が拒否するような条約に調印されることはないと信ずる。
閣下が権限を越えずによく承諾することを承諾するなら、両国大臣の間で締約したものは後日に
批准を拒否されないことを承知されたい」

李 「閣下が幸い我が方にいろいろと困難がある事情を察して、後日に我が皇帝陛下が批准を拒まれるような条約に
調印するよう迫らないことを、本大臣は敢えて要請するアル」
(しつこいw)

伊藤 「種々の事情があるのは双方同じである。よって閣下にも我が方の事情を了察されることを望む。
本大臣も閣下も共に一国の政治の重責を担う。故に双方は同地位である」

李 「両国重大の会談である。互いに胸襟を開いて思うところを腹蔵なく吐露し、
外交上の権謀を避けることを希望するアル」

伊藤 「全く同感。ことさらに策謀を尽くし時間を費やして事を妨げることのないように希望したい」

李 「なるべく穏便、且つ寛大に、また我が方に困難を多く加えられないように」
(重ね重ねしつこいw)

262 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/25(金) 07:57:17 ID:o46CWxbU
531 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:18:18 ID:Ccb7YJSS
(続き)
伊藤 「談判の主なる目的は、両国間の和好を完全なものとすることにある。それには案件を2つに分けたい。
即ち、1は過去に関すること、2は将来に関することである。先ず2から始めたい」
 議事録には、「伊藤大使はこの時、議題を1から始めると言ったが、直ぐに2から始めると言い直した」とある。
単なる言い損ないなのだが、そんなことまでちゃんと記録するのが日本の議事録である。ああ恐ろしw

伊藤 「では将来に関することであるが、先ず朝鮮に兵を駐留させるようになった経緯を述べよう」
 と、明治15年朝鮮事変により条約によって護衛兵を置くことになった概略を述べ、
伊藤 「・・・・よって兵も減らして僅か1中隊を置くに過ぎなかった。しかし閣下も知るように不幸にして
京城に事変が起こり日清両国の兵に争闘を生じ、互いに強く怨嗟を持つに至った。よってこのまま両国が
兵を朝鮮に駐留させるなら、勢いまた和好を損なって終には大なる危険となるのは火を見るより明らかである。
我が国は貴国と和好を存続させることを望むものであるから、貴国が朝鮮から撤兵することを希望するのは
誠に止むを得ないところである」

李 「撤兵の事は貴国の兵も同じく徹するのか知りたい」

伊藤 「閣下が撤兵を承諾するなら、我が国では駐留のことは条約に基づくものにかかわらず、
同じく撤回することを承諾しよう」

532 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:20:46 ID:Ccb7YJSS
(続き)
李 「その条約には撤兵のことも約束してあるのか」

伊藤 「将来朝鮮の状況に応じて我が国の裁量によって全数または一部を撤兵することを約束している」

李 「それなら閣下はただ我が国が撤兵することを主張して、貴国は条約上の権利であるから撤兵しないと言うのか。
もし両国が等しく撤兵するのでないなら本大臣は何らの談判もできないアル」

伊藤 「本大臣はもとより無理な要求をするのではない。貴国が撤兵するなら我が国も撤兵しよう」

李 「それならばその意を了解した」

伊藤 「両国が駐兵するなら害となるのは目に見えている。しかし貴国が駐兵を主張するなら
我が国も駐兵せざるを得ない。またその数を増やすなら我が方もまた増やさざるを得ない」

李 「我が方が朝鮮に駐兵を始めたのは一つの事情からである。しかしこれを説明するのは長くなるからここでは略す」

 後の日清戦争の事端の背景となった極めて重要な事柄がこの僅か数度の問答にあったことを知るへし。

263 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/25(金) 08:01:53 ID:o46CWxbU
533 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:23:34 ID:Ccb7YJSS
(続き)
 撤兵のことはまず早々に合意。しかし後でまた議論が揉めることになる。
 さて次は過去のことに関して。これは双方最も困難な議論となった。

伊藤 「過去のことであるが、朝鮮の事変に於いて我が国の公使は国王の求めに応じて兵を率いて王宮に入った時に、
貴国の将官は我が国公使が王宮に居るのを知りながら大兵を率いて王宮に突入した。この時不幸にも
貴我両国の兵が争闘を引き起こした。当時貴国の将官が適当の時間に協議をするか何らかの処置をしておれば、
必ずこのようなことは避けられたろう。しかし貴国将官はその尽くすべきことを尽くさなかったために遂に貴国の兵は
我が護衛兵に向かって攻撃を加える結果となった。この時我が公使と我が兵は王宮内にあり、貴国の兵は
王宮外から闖入した。この一事を見ても、貴国の兵は攻撃の位置にあり我が兵は防衛の地位にあったことは
証明するに足ることである。そもそもこの攻撃は我が国威に直接に非常の損害を加えたものと我が政府は
認めるものである。よって止むを得ず我が政府は、不当なる攻撃の指揮をした貴国の将官を責罰することを
貴国政府に要求せざるを得ない。その他貴国の兵が朝鮮に居る我が国民を残酷に殺害し、また財物を略奪するなどの
暴行を加えたことについても相当の満足を与えられんことを望む。これは貴国将官が阻止せずに
兵士になすがまままにさせたことの直接の結果なので、閣下にはこの要求は妥当にして止むを得ないものと
了解されるであろう」

 すでに述べたが、日本政府としては撤兵こそ優先事項とし、清将責罰のことは次点とした。
しかし(`・ω・´)シャキーン!シャキーン!の伊藤は、真正面からこの問題を突きつけ議論戦わすことになる。

264 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/25(金) 08:06:42 ID:o46CWxbU
534 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:26:19 ID:Ccb7YJSS
(続き)
李 「閣下が言われた両国の兵が争闘をしたこと、また貴国の臣民が暴行を受けたことは非常に複雑な事案なので、
細密にわたって議論するのがよいと信じる」
 と、李鴻章も一歩も引かない構え。

伊藤 「この事について閣下の高説があれば本大臣は耳を傾けて聞こう」

李 「朝鮮に駐在する我が兵は三営(1500人)である。本大臣はここに公平に我が兵のことを述べれば、
京城の変は初めその事実を知らず、時が過ぎてから現場に行ったものである。実際の状況の報告を得て
その顛末を知ったのだが、本大臣は数人の者を派して事実を調査させて明確な事実を知ることができた。
簡単明瞭に申し述べよう。閣下には我が方の報告書、内報、朝鮮国王の書簡、呉続両大臣の報告書、
その他朝鮮使節の供述書を読まれることを望む。このことは素より公平中正を旨として是非を明らかにし、
努めて公明に処理することを期するにある。貴国皇帝陛下が閣下を派せられた叡慮もまたそうであると確信する。
さて、竹添公使はもと本大臣と親友であるが、いかんせんその行為に於いては決して粗忽の科を免れないと
断言さぜるを得ない。実に竹添公使の罪を数えることは止むを得ないことである。貴国の兵が朝鮮に駐在するのは
公使館護衛のためであって条約に基づくと。しかし竹添公使はその兵を率いて国王の求めに応じたと言うが、
そもそも竹添公使は京城に在って久しく、当時の朝鮮の情勢を詳しく知らないはずがない。先ずは兵を率いて王宮に
行くに当たって統理衙門(朝鮮政府の総務外務の部署)にその行動を通知せねばならない」

535 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:29:16 ID:Ccb7YJSS
(続き)
伊藤 「竹添公使は朝鮮国王の再三の依頼に応じただけである。また国王の依頼は正当のものであって
毫も違法の跡を見ない。まして事情切迫した場合において、かりにも国王の懇請である以上は必ずしも統理衙門に
通告する必要はない。一国の君主の勅命によって求めるならば、竹添公使は交誼上これに必ず応じざるを得ない。
当時公使の目的はただ王命に応じることであり、公使館護衛の兵ではあるが国王の再三の求めに応じて国王一身を
保護せんために兵を率いて王宮に入ったのであり、これは万国公法に照らしても決して違法ではない」

李 「竹添は朝鮮駐在の公使である。当時の朝鮮の動向状況を熟知しているのは明らかである。
そして変乱がどんなものであったかを知っていたのは疑えないことである」

伊藤 「急な求めに際してどうしてその実情を知る暇があろうか。竹添公使はしばらく帰国して変乱の1ヶ月前に帰任した。
ゆえに当時の状況を知悉していていなかったことは明らかである。閣下がただ疑惑だけで議論するなら遂に
止むことはない。竹添公使の行動は少しも理に反していないとただ信じるべきである」

李 「朝鮮国王が本大臣に送ってきた書簡に依れば、閣下が指摘した親書は王自ら書いたものではない。
つまりは乱党が偽作して竹添公使に送ったものであると国王自らその偽書であることを証明した」

265 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/25(金) 08:11:15 ID:o46CWxbU
536 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/13(日) 00:31:30 ID:Ccb7YJSS
(続き)
伊藤 「朝鮮国王がそのような書簡を閣下に送ったことはまだ本大臣の知らないことである。またその実否がどうかも
我が方には何等関係ないものである。竹添公使の得た親書には王の玉璽もあり適正なものであったことは論をまたない。
とりわけ公使が兵を率いて王宮に入った時に国王は公使に向かって懇篤なる謝辞を述べられた。形勢一変した
今日にあっては国王はその言を左右にするだろうが、我が方に於いては朝鮮国王の親書であることは断じて
疑わないことである。今日に至っての国王の言うところ書くところは、何らこれらの事実を変える効力はない」

 朝鮮国王の態度に関することであるが、李鴻章は後年に、当時の朝鮮国王が朴金ら開化独立派と意思行動を
共にしたことを暗に認める発言をしている。つまりはこの時の朝鮮国王の書簡は言い逃れの言葉に過ぎなかったと。
それが呉大臣らの調査報告によって知ったことなのか、後で知ったことなのか、それは定かではない。しかしどうも、
この朝鮮国王の書簡に対する信は初めから薄かったように感じられる。もとより李鴻章は朝鮮国王の優柔不断な性格を
よく知っていたし、それに中国人はそもそも他人の言を容易に信じない。たとえ自分に有利なものであっても心底では
疑惑の念で見ることから免れられない傾向にある。

李 「金玉均等は今日の問題を起こした乱の首魁である。そして竹添公使はその謀に誘導されたのは疑いない。
朝鮮国王もまた幾らかの罪を免れない。なぜなら国王は性格が柔弱で決断に乏しく、当時の行いは優柔不断の
甚だしいものであったからである。朝鮮からの使節もよく国王の柔弱を口にするし、また竹添公使が金玉均と
組んでいたとも言っている」

537 名前:マンセー名無しさん[] 投稿日:2008/04/13(日) 00:34:19 ID:Ccb7YJSS
(続き)
大使「今回の問題を起こした乱の首謀者が誰であるかを調査するのは、要するに詮無いことである。
たとえ朝鮮国王自らが首謀者であっても、或いは金玉均であっても、その事は全く朝鮮の内事に属し、
全く我が国に関係するところではない。故に本大臣がその事を論じる必要はない。ただここに断言することは、
竹添公使はその密謀に与った等の事実はないという一事にある。本大臣は確固としてこれを明言する。
しかしながら閣下がなおも疑うならまた何を言おうか。ただ我が国で既に同公使を糾問して
何ら関与した跡がないことを知り、更に疑うところがないだけである」

李 「本大臣ももとより変乱に関して徒に瑣末の点で論ずることは欲しない。しかし閣下は既にこの問題を提出して、
罪を我が将官に帰してその処罰を要求されるに於ては、またその事に遡って論究せざるを得ない。
ついては尚陳述するところがあるので、説が終わるまで聴聞されることを希望する」

大使「了解した。閣下の所説が終わるまで聞こう」
(つづく)

 とまあこんな調子で熱く議論されていくわけですが・・・、全文載せるわけにもいかないでしょうし、
後は論点を絞って抜書きすることにしましょう。

266 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/27(日) 08:46:04 ID:w8wWqwec
542 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:07:33 ID:2F1VtD37
   併合前の日朝

李 「3年前の朝鮮の変乱の時に、我が国の兵は力を尽くして鎮圧し乱党の党首である大院君を幽閉するなどして、
貴国の人のために尽力した。それなのに昨年の変乱では貴国の兵は王宮内にあって門を硬く閉ざして6大臣を暗殺し、
我が兵が朝鮮の官民の嘆願により王宮に行くと、貴国の兵は不意に我が兵を攻撃した」

 李鴻章も明治15年朝鮮事変すなわち「壬午軍乱」のことを「大院君の乱」と認識していたようだ。

伊藤 「暗殺に兵力は必要ない。我が兵が暗殺したという証拠はない。貴国の兵は我が公使を攻撃する前に争闘を
避けることに力を尽くさなかった」

李 「本大臣は詳細に議論することを望まないが、6大臣暗殺は国王の真意ではなかった」

伊藤 「それが王の真意かそうでないか王が知っていたか知らなかったかは関係ない。我が国にとって関係あることは、
貴国の兵が千人以上で、わずか140人の我が兵を外から攻撃したことの1点である」

李 「6大臣暗殺のことは問題の原因であるから話した。貴国の兵が暗殺しなかったとしても、その守備があったからこそ
成し遂げられたのではないか。ただ咎めねばならないのは国王の優柔不断と金玉均の陰謀と竹添公使がそれに
誘導されたことの3点である。我が兵は前もって書簡を竹添公使に送ったが返信はなく、それで士官が名刺を持って
竹添公使に面会を求めた。しかし許されなかっただけでなく内から不意に銃撃があった」

543 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:09:29 ID:2F1VtD37
(続き)
伊藤 「閣下の言われる要領を挙げれば2点ある。第1に竹添公使に書簡を送ったこと。第2に士官に名刺を持たせて
王宮に行かせたこと、である。しかし王宮出入り口など周辺部を守備していたのは朝鮮兵であり、日本兵は国王を
警護していた。よって朝鮮兵が間に居るから王宮外の貴国兵に向かって発砲は出来ない。しかし貴兵は朝鮮兵と
合同して我が兵を攻撃した。よって竹添公使は止むを得ず応撃の令を発した」

李 「先に発砲したのが貴国の兵か朝鮮兵かは知らない。しかし我が兵4人が倒されたから、止むを得ず正当防衛から
応撃したのである」

伊藤 「論点はその間にある。かりに朝鮮兵が先に発砲したとしても、貴兵が我が兵に向かって損害を与えたことが
正当とはならない。貴国の兵は外から進攻し我が兵は王宮の中で防守したことは明らかである」

李 「本大臣も武官の職にもあって20年になるが、銃弾がどこから来たかを知ることは頗る難しいことである」

 伊藤はここでニッコリと微笑み、
伊藤 「例えば2人の人間が出会い、1人が何もしていない片方を突然銃撃した。さて罪はどちらにあるかを閣下に問おう」
 これを聞いて場の皆が笑い声を上げた。
 李鴻章も笑いながら、

267 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/27(日) 08:49:12 ID:w8wWqwec
544 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:11:17 ID:2F1VtD37
(続き)
李 「この難問には答えに窮するしかない(ニヤニヤ) また、閣下が前に言ったような、我が兵が貴国人民に害を
加えたということはない。それどころか男女数人を仁川に護送したではないか」

伊藤 「その善行は厚く謝す。しかし同時に暴行の罪は罪で問わねばならない。貴国の兵が我が国の居留民を襲撃して
財物を略奪し、夫を殺し、妻を陵辱し、凶暴を尽くした罪は正さねばならない」

李 「我が兵は陣営からみだりに外出は出来ない。事変の3日間には一歩も外出していない。貴国人民は
朝鮮人と中国人の区別が出来ないかもしれない」

伊藤 「何の紛らわしいことがあろうか。服装を見れば明らかである。朝鮮人であったのを中国人であったと
偽る必要もない。貴国兵であったことは明瞭である」

李 「何と言われても決して我が兵ではない。あるいは清人であったかも知れないが、清兵ではない。
協議するのにあまりに瑣末の問題で論争しないことを望む」

 第1日目の談判はこれにて終わる。李鴻章は伊藤らを食事に招待し、伊藤は応じた。中華料理の殊に珍なる
供膳であった。食事中大した話はなかったが、李鴻章は始終慇懃なる態度を通したという。

545 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:13:57 ID:2F1VtD37
(続き)
 さて第2回目は4月5日午後3時より天津日本領事館で。

 まず伊藤が清将の責罰をめぐって更に事件詳細の議論を仕掛け、李鴻章はそれに応じ、事変後の朝鮮国王の
書簡を披露して公文として採用するよう主張。
 対する伊藤は、事変後の国王の心変わりを主張、また竹添公使に与えた護衛依頼の書簡と玉璽のことを述べて反論。
その後、当時清将が竹添公使に送った書簡のことで議論に。

李 「我が将官は朝8時に書を竹添公使に送ったが返事がなく午後3時まで王宮に入るのを待った。
竹添公使が速やかに返書をしていればこのような事態にはならなかった」

伊藤 「果たしてそうであろうか。そちらで時刻のことの証明が出来ないなら意味がない。ましてその時の書簡は
日付も時間も書いてないのであるから」

李 「そんなことはない。その時の書簡の写しがここにあるがこれを見よ。これは将官が本大臣に送ってきたのであるが、
こうして明らかに日付があるではないか」

 この時、伊東大書記官が証拠書類の中から当時の書簡を取り出して伊藤に渡した。
伊藤 「これがその時竹添公使が受け取った実際の書簡である。どこにも日付はない」

 李鴻章はそれを手に取り、目を凝こらして見たが日付はなかった。李は驚愕の顔色となった。

268 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/27(日) 08:51:42 ID:w8wWqwec
546 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:17:01 ID:2F1VtD37
(続き)
 伊藤はその狼狽ぶりを見て、
伊藤 「まあ、大した問題ではない。閣下はあまり気にされるな。瑣末のことである」

李 「もとより将官は軍籍の者であるから外交事務には疎いので、このような手落ちがあったのだろう」

伊藤 「貴国の将官が相当に尽くすべきことを尽くしておればこのような事態に至らなかったことは既に判然とした。
当時貴国の将官は米国公使フート氏に、兵を率いて王宮に進行することを告げた。フート氏はそれでは
大事となるかもしれないから兵を率いるのはよくないと忠告をした。しかし貴国将官はその忠告を容れずに王宮に
兵を入れて我が兵を攻撃するに至った」

李 「朝鮮の官民が救援を乞うたので止むを得ないことであった」

伊藤 「そのことにより生じた結果は貴国将官の責任である。また、その進行も最初から兵を3面に分けて
軍事攻撃を加えた。かりにも軍事を知るならその結論は歴然たるものである」

李 「我が兵は3営であるから3方から進行したのかもしれない」

伊藤 「いやいや、そうではない。貴国兵は第1門から進入し、後に3面に分かれて銃を並べて攻撃をしたのである」

547 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:20:06 ID:2F1VtD37
(続き)
李 「竹添公使は日頃から我が将官と交際があった。公使からあらかじめ話していればこのような紛争は
生じなかったろう。まことに惜しいことである。竹添公使は地位が駐箚公使であるから頗る得意の顔があった。
且つ常に傲慢、また人を侮った風があった」

 論に詰まると個人への誹謗中傷に走るのは現代でもよく見る光景w

 伊藤はニッコリと笑い、
伊藤 「竹添公使の胸中を探るのは本大臣の職ではない。竹添公使の心中がどうであったかなど天のみが
知ることである」

 李鴻章も笑い返し、
李 「閣下の見識を以ってすればどうして竹添公使の心中を看破されないであろうか」

伊藤 「いずれにしろ貴将官の行為軽率から起こったことである。この行為は日本国の国旗を汚辱したものと
認めざるを得ない」

李 「公使らは我が方の書簡を摂取しながらこれを捨てて顧みなかった。我が兵は王宮第3門に至って初めて
応撃するの止むを得ずに至った。最初士官は名刺を持って王宮に向かったが不意の銃撃が来て名刺に弾丸が当たり、
名刺は片々として散った」

269 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/04/27(日) 08:53:15 ID:w8wWqwec
548 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 01:24:10 ID:2F1VtD37
(続き)
伊藤 「はははは。人を傷つけずに名刺だけに的中させるとは、いったい如何なる名手であろうか(笑)」

李 「従った兵卒ら4人はたちまち斃されたアル! しかし発砲した者が日本兵であることを知ったなら必ずこれに
応撃しなかったろう。我が将官といえどもそのような冒険は犯さなかったであろう!」

 もう李鴻章の言っていることはわけわかめw

伊藤 「とにかく、万国公法に照らしても貴兵の行為は違法であったと認めざるを得ない」

李 「閣下は竹添公使が我が将官からの書簡をすぐに開封しなかったことは過失であるとは思わないのか」

伊藤 「いかんせん、時既に遅くして公使に手渡された」

李 「竹添公使は漢学を修め文学に富む人である。これぐらいの書簡を読むのに1秒も要しまい」

伊藤 「あるいはそうだろう。しかし貴将官は最初から公使と協議する気がなかったという事実はどうしようか。
もし協議する気があるなら、書簡を届けた使いに必ず返書が必要であると留めさせたはずである。
これまた貴将官が平和を傷つけない念慮がなかった証となろう」

549 名前:マンセー名無しさん[] 投稿日:2008/04/24(木) 01:27:26 ID:2F1VtD37
(続き)
李 「ともかく貴公使を銃撃するような意思がなかったことは明らかである」

 伊藤は笑って、
伊藤 「閣下にその意思がないのは本大臣は既に了解するが、貴将官にその意思がなかったことはどうしようか」

李 「本大臣は我が兵を朝鮮に駐在させて以来しばしば命令を伝え厳命して訓練させていた」

伊藤 「それならば、貴将官は閣下の命令を少しも守らなかったのだろう」
(つづく)

 どうにも日清両巨頭による面白い議論なので、なかなかばっさり省けませぬW

270 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 09:36:04 ID:d8IR/7Pw
616 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:39:32 ID:eF0IWwGm
   併合前の日朝

李 「本大臣は少しも偏った念なく、努めて中正を旨とするアル! しかし竹添公使が我が将官に通知もせずに
兵を率いて王宮に入った罪は公使に帰するアル!」

伊藤 「それならば竹添公使がそちらの将官に通知をせずに王宮に入ったことが、一国の公使に対して
銃撃を加えた理由として足ると言うのか」

李 「決してそうではないアル! ただ竹添公使は順序を尽くさなかった! 我が方には朝鮮官吏と
人民が強く訴え出て『そもそも清兵が京城にいるのは国王を保護するためであり、今この国王の安危も
計られない状態なのに、どうして救援を拒めるのか』とまで言った。それで遂にやむを得ず我が将官は
兵を率いて王宮に進んだのである」

伊藤 「貴国の兵がどうして王宮に入ったかは今回の件には関係ないことである。貴国の兵が王宮に入るのは、
我が兵が王宮に入るのと同じく問題はない。ただ本大臣が罪を問うているのは、貴将官が我が国の公使に
銃撃を加えた一事である」

李 「我が兵から先に発砲したのではないアル! 先に王宮内から銃撃を受けて我が兵4人が倒されたアル!」

617 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:41:21 ID:eF0IWwGm
(続き)
伊藤 「閣下の言うとおりなら、その銃撃は日本兵が発射したものであるという証拠はあるか!」

李 「弾丸がどこから来たかを証明する術はないアル! しかし王宮内には地雷も設けてあって我が兵は
それに触れて数名が倒れたアル!」

伊藤 「貴国の官吏の調査書を読むと、日本兵が野戦砲をもって云々とある。これは架空の妄説である。
砲を持つのは大隊規模の時であり、当時はわずか1中隊の小銃隊のみである。まして地雷のようなものは
全く別の隊に属する」

李 「それならば地雷は朝鮮兵が敷設したのだろう。しかし地雷の銅線の端には2本の日本刀がつけてあった」

伊藤 「はあ? その日本刀は何に付いていたと?」

 ここで清側通訳の羅豊禄が答えた。

羅 「地雷の導火線の端に結びつけてあった」

伊藤 「プッ? それは果たして何のためなのか?」

271 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 09:38:56 ID:d8IR/7Pw
618 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:42:42 ID:eF0IWwGm
(続き)
羅 「何のためか知らないがとにかく結びつけてあったのを発見したと」

 日本側一同吹き出すw で、清側も呉大臣がたまらずいきなり論語などを吐く。

呉 「閣下に一言申したい。論語に曰く『成事不説既往不咎(成事は説かず、既往は咎めず)』と」

 つまり、できちゃったことはもう言わない、済んだことはもう咎めないと。ようするに過去のことはもう言うなとw
 なるほど中国人は論語読みの論語知らずであるw

 で、ここで榎本公使も発言。
榎本 「地雷の威力が強力なのは閣下も知っていよう。聞けば倒れたのは2人のみと聞く。どうしてそう効果が
なかったのか」

李 「いやいや、家9棟が破壊された。しかしそこにいたのは2名だけであった。もし大勢がいたら
多数が死んでいたろう」

 皆が勝手に発言しだして訳が分からなくなったことにより、伊藤が声を上げた。

619 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:45:03 ID:eF0IWwGm
(続き)
伊藤 「それではこれより貴国兵が京城居留の我が人民に向かって凶暴を尽くした件に移る!」

 しかし今度は続大臣が即座に反応した。

続 「決してそういうことはなかった! かえって我が兵は貴国の婦女などを仁川まで護送している。
どうして凶暴をする道理があろうか」

伊藤 「そちらからはそうではないという証拠を出せ! こちらからはそうであるという証拠を出す!」

 伊藤はここで被害居留民の口述書の漢訳文を提出。

李 「清人と韓人の服は異なるが兵の服はよく似ている。それとも狡猾な韓兵が清兵に扮装したのかもしれない」

伊藤 「閣下にはまずその被害者の口述書を読んでから意見を述べられよ。その口述書は、貴国兵から
暴行を受けた我が人民を仁川に於いて我が国の官吏が調査したものである」

李 「惜しいアル。この口述には加害者の名が一人も書かれていないアル」

伊藤 「はあ? 閣下はよく考えられよ。およそ凶悪犯の内で自ら名乗った後に手を下す者がおろうか」

272 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 09:42:28 ID:d8IR/7Pw
620 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:48:47 ID:eF0IWwGm
(続き)
 しかしこの議論は伊藤にとっては最も困難なものとなった。何しろ物的証拠なく、ただ被害者の証言が
あるのみだったからだ。
 清側は李が呉が羅が続が入れ替わり反論し、日本側は伊藤1人が応じた。

呉 「朝鮮では誰からもそんな話は聞かなかった」

伊藤 「閣下が面会した者は身の安全を考えて話さなかったのだろう」

羅 「朝鮮には各国領事がいる。彼等がそれを知らない理由はない」

伊藤 「各国領事が知っていたかどうかは知らない。また知っていたとしてもそちらにそれを通告する義務はない」

呉 「本大臣が調査した時にはそのような事実はなかった」

伊藤 「暴行を受けた事を話せる人民は仁川に逃れた者たちなので、閣下が京城に入った時には
出会わなかっただけである」

呉 「閣下が提出した口述書は確かな証拠とし難い。仮にこれをひとつの訴訟とするなら、
今閣下が提出した証拠書は原告の一方的な主張なので、これに対して被告からの証拠もなければならない」

伊藤 「この案件は訴訟事件ではない。口述書を提出したのは我が政府が貴国政府に対する要求を
貫徹せんがためである。本件を訴訟と同一視するなかれ」

呉 「我が方の反証は今は準備がないので、追ってまた我が方で立証することになろう」

621 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:51:28 ID:eF0IWwGm
(続き)
続 「朝鮮国王も我が兵の暴行はなかったと言っていた」

伊藤 「国王が知っていなかったことが事実の有無を証するわけではない」

続 「ドイツ領事にも尋ねたが、韓人が乱に乗じて日本人の居宅に入って乱暴したと言うのみで、
我が兵が罪を犯したということには言及しなかった」

伊藤 「ドイツ領事が京城の巡査長に任じられたということを聞かない。どうして領事が一人の貴国兵も
乱暴しなかったと知ったのか。そのようなもので我が方が提出する確固たる事実が覆るとお思いか!」

 続や呉大臣たちは返す言葉を失した。

伊藤 「貴国兵の凶暴に関して詳述した事項、及び我が被害民の口述書、それらは貴政府に対し、
我が方に相当に満足を与えるべきことを要求する主旨のものであって、もとより無理難題を求めているのではない。
凶暴を加えた形跡を残した事実に基づくものであって、このことは両国で協議妥結するところがあろうと
思うものである。根拠なき証で強いて要求していることではないことを閣下には了解されよ」

李 「要するに重大の事件ではない。被害者の中で1人も死亡した者がいない」

伊藤 「閣下には口述書の冒頭わずか2、3行を一瞥しただけで読了されたようである。書中にはそれぞれ
事情異なる件が述べてある。まずは最後まで読まれてから事の軽重を論じられたい。重大な事件であることは
明白である」

273 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 09:46:35 ID:d8IR/7Pw
622 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:55:35 ID:eF0IWwGm
(続き)
 口述書をよく読みもせずに、その内容を勝手に断定する態度は李鴻章も呉大臣も同様であった。
呉大臣は婦女子の口述であるから誤りがあるだろうと言い、次回第3回での談判に於ては李鴻章も
やはり分別のない婦女子の口述であると言ってその信用性を疑った。しかし口述書には実際は
男性の証言の方が数が多かったのである。

伊藤 「ちょっと聞きたい。貴国の習慣では婦女子の供述を一つも証拠として認めないのか?」

李 「もとより証言に男女の区別はないアル。しかしよく審議して偏った言は信じてはならないアル。
結局は、原告被告両方の述べることを審議するのが世界の通例ではないか」

伊藤 「本大臣は忠告しよう。本件は両国交渉の事件となった以上は、普通の法廷おける訴訟を審議すると
同様に考えてはならない。仮に我が国が原告となり、貴国が被告となっても、日清両国の上にあって裁断を下す
国はないのである」
 尤も、当事国が了解した上で第三国に仲裁を依頼して裁定を仰ぐという方法もあった。

 さて、4月7日の第3回会談に於ては、冒頭に李鴻章が清国は日本との和平を望んでいることを説き、
そのためには和平という大事の前には小事、つまり瑣末な事件のことは問題としないことが大切であると説いた。
 伊藤はそれを受け、日本も又清国との和平を望んでいると説き、その障害となる事件については
両国がよく協議し、互いに譲歩して解決することが大切であると説いた。

 やがて伊藤がこれまでの議論の問題点を整理し、箇条にして逐一論駁したことから再び議論となった。

623 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 22:59:53 ID:eF0IWwGm
(続き)
李 「我が兵が貴国人民に凶暴をしたこと、及び貴国公使を銃撃したことなどは本大臣が聞かないことである。
とくに竹添公使は当時王宮にあり、それを攻撃しようとするなら我が兵は朝鮮国王にまで攻撃をすることに
なるではないか。閣下も少し考えられよ」

伊藤 「本大臣は朝鮮国王の全権大使ではない。国王に関係するものなら本大臣は言うことはない」

李 「しかしこの事件は朝鮮で起こったのではないか」

伊藤 「事件の起こった地を見る必要はあっても、本大臣を事件の起こった地の国の使節とするなかれ」

李 「本大臣は、閣下が言われるまで我が兵が貴国人民に凶暴を行ったことなど聞かなかった」

 再び榎本公使が突っ込む。
榎本公使 「ん? それはおかしいでしょ。その件は通知書として前もって僕が総理衙門に行って
そちらに交付したから、閣下はそれを持っているはずだけど」

李 「それなら閣下は自ら総理衙門に行って王大臣に会ってその通知書を渡したのか」

榎本公使 「うん。王大臣は、もしこれが事実なら実に深く驚き嘆くことである、と言っていたが。
これは呉氏が朝鮮に調査に向かう前のことだがね」

呉 「本大臣は公平を旨として少しも偏った念はない。ゆえに罪を犯す我が兵があれば罰するものである。
しかし調査したがそのような重罪を犯した者は発見しなかった。また兵営の規律は最も厳粛であって
そのような事が生じることはないと信じて疑わないことである」

274 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 09:52:32 ID:d8IR/7Pw
624 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:01:04 ID:eF0IWwGm
(続き)
伊藤 「本大臣は少しも呉氏を責める気はない。よく考えられよ。重罪を犯した兵が自ら自分の罪を訴えて出ようか。
まして被害を受けた我が人民らはすでに京城を去って仁川に難を避けている。
また呉氏は、清兵営の規律は厳粛であると誇られたが、昔、孔明は涙を揮って馬謖を斬り以って軍律を正した、
との美談は貴国の歴史にあって永く消滅せず。呉氏は麾下の将官に対してもまた孔明の馬謖におけるが如くで
なければならないのでは?」

李 「我が方はこの件についてはまだ証拠集めをしていない。したがってここで決定する理由はない」

 伊藤は微笑して、
伊藤 「呉氏は閣下が寵愛される人であるが、本大臣に対しても公平でなければ」

李 「閣下を満足させようとすれば呉氏の心中に背き、呉氏の意を満たそうとすれば閣下の意には快くない。
本大臣の困難さを思われよ」

 伊藤は微笑したまま、
伊藤 「本大臣に情誼を尽くされることを要求する。本大臣は体格は矮小であるが、また一小国の使節である」

李 「もとより閣下の官位が並び高いことはよく知っている。誠意尊敬を表するものである」

呉 「本大臣は李中堂の恩顧を受けている。願わくば閣下の恩顧も受けたい」

李 「このような案件は消し去るのが一番よい!」

625 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:03:21 ID:eF0IWwGm
(続き)
伊藤 「本件のような事は、その形跡が残っていないなら我が政府がこれを取り上げることはない。
人間一個人には徳義があるように、一国にもまた徳義というものがある。国としての徳義は一個人の徳義より
重いものがある。個人の間では徳義を破って互いに欺くことがないとは言えないが、かりにも国家の間で
偽証を提出して徳義を破壊してまで不法の要求をすることがあろうか」

李 「本大臣は閣下が偽証を提出して我が国に要求していると思っているのではない。本大臣もまた徳義を
破るような行為があってはならないことを知る。我が国は委員を朝鮮に派遣して調査した。
しかし閣下が述べられたような凶暴を行ったことはない。また委員もそれを知らない」

伊藤 「貴政府の委員はそうであっても、すでに貴我両国の案件となった以上は、貴国政府が努めて公平に処分し、
以て我が国を満足させられるよう要求せざるを得ない」

 今度は李鴻章がニコリと笑い、
李 「それでは閣下は呉氏に同情もせず情誼も表さないと言わねばならない」

伊藤 「もし呉氏が後日公使となって我が国に来るなら、その時は充分に情誼を尽くそう」

李 「仮に我が方を被告として認めても、被告はまだその訴訟に関する準備が出来ていない時は、
これを調査して事実を明白にするまで何ら原告の要求に応じることは出来ない!」

伊藤 「貴論のようであるなら、我が国は貴国に対して和平を望んでいるという誠意を表明したにも関わらず
閣下には我が要求を拒否されんとするのか。もしそうならば閣下の言われることは本大臣の使命を
無に帰させるものである」

275 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 09:57:23 ID:d8IR/7Pw
626 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:05:02 ID:eF0IWwGm
(続き)
李 「閣下が使命を全うするしないは閣下の心にあるはずである。それに閣下は重大な権力を掌握されている。
もし閣下が初めから要求しないと言うなら、貴国政府と貴国臣民の間で不満を言うことがあろうか」

呉 「閣下の権力は李中堂を遙かに超えるものである」

伊藤 「今回の件では閣下と本大臣の間で妥結するのであるから互いにその権に軽重がある理はない」

李 「我が方としては、調査してもそのような事実はなかったと繰り返し申す外はない。明らかな証拠も無しに
将官を処分するなら告発を受けるだろう。証拠を得るためには当然その事実を調査せねばならないことである」

伊藤 「閣下への告発は閣下の一身に関することであって、こちらから何も言うことはない。そもそもこの案件を
協議妥結するのは貴我両国全権大臣をおいて他にないことである」

李 「もとよりそうであるが、とにかく呉氏が調査してもそのような事実はなく、また知らなかった。
よって本件を判定するに足る反証を我が方は有していないと弁じざるを得ない」

伊藤 「本大臣は事を閣下と協議するにとどまる。本大臣と呉氏とで所見を異にする点について閣下の裁定を
求めるためではない。呉氏が閣下に何を報告したかは本大臣には関わりないことである」

李 「もとよりそうであるが、とにかくこれより我が方でなおも調査をした上でなければ、ただ閣下の提出された
証拠のみで直ぐに正確な事実であると認めることは出来ない」

伊藤 「この事は両国で決着をつける事件である以上は、両国代表によって妥結せねばならない。
このような場合は必ずしも証人などの召喚は必要としない」

627 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:07:22 ID:eF0IWwGm
(続き)
李 「双方で妥結するためにも我が国も証拠を集めねばならない。すでに貴方から我が総理衙門に
通知されていると言われるが、しかし総理衙門はこのことを本大臣に知らせていない。ゆえに閣下の論を
明確にするために、こちらでもこの証拠を調査せねばならない」

伊藤 「貴方がまだ調査していないことは本大臣の過ちではない」

李 「もとより本大臣は閣下の述べられることを全て拒否しようとするのではない。委員の調査報告に
その事実があったなら閣下の要求に応じることは躊躇しない。しかしいかんせん、我が方には
そのことを妥結する根拠がない」

伊藤 「貴方に根拠がないことを以て、我が方の確実の証拠を退けその効力を軽重視する理はないのである」

276 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 10:01:50 ID:d8IR/7Pw
 議論は平行線のように見えるが、執拗なまでの伊藤の追求に李鴻章はじりじりと後退し始めていた。
 しかしその後ついに李鴻章は、「そもそも日本人居留民被害の件は伊藤大使の話を聞いて初めて
知ったことであるし、また北京総署の総理衙門からも何も聞いていないし、交付された資料もないので
今は決断は出来ない」と言って逃げた。
 しかし実際は通知を受けていたし手元にも持っていた。何より新聞などで事件のことをよく知っており、
1月に天津領事の原敬との談話でもそのことに触れている。
 清国政府の方針は、当初から事件そのものを認めないということであったらしい。非を認めず謝罪せずは
中国のデフォであるが、この時は事件すらなかったものとして通そうとする積もりだったようである。

628 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:08:55 ID:eF0IWwGm
(続き)
 翌日8日、伊藤は李鴻章のいよいよの真意を探りたいと、榎本武揚公使を李鴻章の所に派遣して談話をさせた。
榎本と李鴻章は懇意な中であり、その談話もざっくばらん且つ本音の伺える内容となった。

榎本 「昨日の談判で閣下は北京総署から伊藤大使要求の件は何も聞いてないと申されたが、
筆記録もあるしそんなことはなかろう」

李 「その件はよく調べるとあった。付属の対話書の中にあった」

 この狸親爺が、と榎本が思ったかどうかは知らないが、榎本はそれ以上追求しなかった。

榎本 「総理衙門で3日間議論したが、閣下の責任をなるべく軽くしようと思って王大臣らを困らせてやったよ」

李鴻章 「フフフ何を言ったアルか?」

榎本 「彼等は満州族の貴族であるが、まともな議論が出来ない人たちである。だから漢族の閣下に
不利なところだけ責任をなすりつけようとしているらしく思えた。それで、では北京廟堂の皇帝陛下の御前で
王大臣らが伊藤大使と直接談判するべきである!と言ってやったよ」

李 「ハハハ、それは無理なことアル」

榎本 「だろうねW それで彼等は天津で李中堂と談判されたいと必死に懇願したよ。だから、では李中堂に
真の全権を与えるべきであり何もかも任せてどういう結果となっても不問とするべきであると言ってやった」

277 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 10:05:45 ID:d8IR/7Pw
629 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:11:52 ID:eF0IWwGm
(続き)
李 「ハハハ、それは感謝するアル」

 ここで榎本は黙り李鴻章が話し始めるのを待った。しかし李鴻章も黙っている。しばらく沈黙が続き、
やがて榎本が話しかけた。

榎本 「昨日の談判で双方の意中は判然としたように思う。そもそも自分は立場上両者の中間にあって
妥結を助ける務めがある。貴殿も自分となら話しやすいだろう」

李 「実はそうである」

榎本 「伊藤大使は忙しい身なので無駄に日を過ごせない。案件に対して全否定されるのか全承諾されるのかなど
速やかに知りたいとの望みがある」

李 「予は伊藤大使の要求を全否定も全承諾もしないアル」

榎本 「では詳細を聞かねばならんか」

李 「要求の一つだけは承諾するだろう。そもそも撤兵の件であるが、以前から北京総署では撤兵のことは
拒否すると貴国駐在の我が公使から貴国政府の外務卿に知らせていたはずである」

榎本 「自分は知らんなあ」
 榎本はパークスからは聞いていたが、外務省から正式にそのことの通知は受けていない。

李 「貴殿が知っていなくとも伊藤大使は必ず知っているはずである」

630 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:13:43 ID:eF0IWwGm
(続き)
榎本 「まあそれは分からないが、今度の談判は伊藤大使が主任者だから、外務卿は清国公使とは
正式な話はしてないんじなゃないの?」

 この時、同席していた日本外務書記官が、当時通訳していたのは自分であると言って、清国公使は、
いずれ撤兵のことで話し合いをするつもりであると言っただけであると述べた。

李 「とにかく、北京総署は撤兵のことは承諾しなかったアル! それなのに更に伊藤大使は別の2案件を提出した。
この件は予が初めて知ることである」

榎本 「そうかなあ? 日本人民が清兵から多数殺害されたということは去年の内に自分がその報告書を
北京総署の大臣に手渡しているよ。それに日本や各国の新聞で話題になってたじゃん。
それでも貴殿は知らなかったと言われるの?」

李 「そ、それは全く聞かなかったわけではないアル。しかしこれを見よ。口述書の中にある文章を読んでも
我が兵がやったという確証はない。たとえば『福井という老人は気力支えられずに石橋の端で倒れた』とあるが、
倒れた者ならまた起って難を避けたに違いない。あるいは奥川の妻の供述には『俄然銃声が聞こえること数回、
人の声が止んだ。これによって夫とその兄弟の死期を悟った』
とあるがこれもまた推測に過ぎないではないか」

 口述書にある人物はすべて死亡者名簿に記載されていることは確かであった。40人近い死亡者の内
その3分の1は長崎県出身の人であった。

榎本 「死人から証言は取れない。また刑事裁判で用いるような詳細の口述書ではないが、仁川に於いて
我が人民の死体40人を受け取ったのは事実である。そこにある別の夫人が陵辱された1件でも重大な犯罪である」
 この夫人の場合、強姦され、夫は殺害された。

278 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 11:06:18 ID:d8IR/7Pw
631 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:16:58 ID:eF0IWwGm
(続き)
李 「伊藤大使は我が方の調査は不十分であると言い、貴方の証書のみを根拠とされるが、
それは公平を欠いているアル」

榎本 「いやいや、呉氏が清兵の凶暴についてはまだ証拠を得ていないと言ったことに対し、伊藤大使は、
それは我が方の過失ではない、と答えたでしょ。それは言葉を換えれば呉氏の調査がいいかげんだったから、
という意味なのよ」

李 「そもそも漢城での事変で竹添公使がしたことは、朝鮮朝廷を転覆しようとした乱党を幇助したことに
他ならないのは皆が知るところである。予はこれを伊藤大使に直接言うのをはばかる。ただ貴殿に言うだけである。
もし北京で同様なことをする公使があったなら貴殿はどう思われるか」

榎本 「いやいや、だから竹添公使は国王から要請されてるじゃん。だからあれこれ非難できる点はないと思うよ。
で、閣下がなおも異論があるなら伊藤大使に直接言えばいいじゃん。そもそも国と国との間で起きた事は
当事国で解決するしかないっしょ。各国を管轄するような裁判所のような国はないんだし。
で、先ほど要求の一つは承諾すると言われた。それは何なのか?」

 李鴻章は言葉にせず、じっと榎本の顔を凝視した。

榎本 「おそらく撤兵の1件であろう」

李 「然り」

榎本 「しかしこれは要求ではなく協議の件である。要求は将官を罰することと人民殺害の2件である。
撤兵のことは両国の友好を確かなものにするための協議であって、これを承諾したからと言って
譲歩とは見なせない。これぐらいの役目ならどうして我が国が伊藤大使を特別に派遣しようか」

632 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:18:44 ID:eF0IWwGm
(続き)
李 「だれが要求しようが我が方の承諾は一つアル! 撤兵のことは北京総署では反対していることであるが
予は独断を以ってこのことだけは妥結したいと願っている」

榎本 「ならばそれを伊藤大使に言われたらよい。そして大使はやむを得ずそれで帰国して復命するほかはない。
で、そうなると両国の平和を保つことは甚だ難しいことになる。これは自分が最も憂えることである」

李 「撤兵を承諾するのは中国が貴国との和を保つことを重んじる厚意による。それで大使が不満足として
帰国されるなら仕方がない。我が国は戦争の準備に取りかかるほかないアル!」

 そう李鴻章は言い放って、自分の通訳官に向い、
李 「のう、中国はフランスに対してすら戦を開いたではないか」
と同意を求めた。

榎本 「それはそちらの勝手次第である。ま、惜しむらくは我が皇帝陛下の御意もこれで無に帰することになろう」

李 「御同様である。まだ他に話はあるか?」

榎本 「いや、ない」

 李鴻章の元を辞した榎本は伊藤に談話内容を報告。

279 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/05/17(土) 11:08:17 ID:d8IR/7Pw
633 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/05/15(木) 23:21:07 ID:eF0IWwGm
(続き)
榎本 「・・・ということで、あの老人、戦争する気ですぜ」
伊藤 「本国に、将官処罰と人民への賠償の要求が拒絶されるなら、本大使の使命は全く無用となるので
速やかに帰国する、と電信するしかないか」
榎本 「・・・ゴクリ」

 翌日伊藤大使はそのように日本政府に電信し、また榎本公使も、「大使の使命が徒労となる時には
両国間で非常な事態となるだろうと李鴻章に言ったら、李氏は、それならば戦争の準備をする他はないと言った」と
電信。

 それを受けた井上馨外務卿は仰天。ただちに返電して、
井上 「将官の処罰と損害賠償のことは強いて結論を出させる理があるとは思えない。出発前の政府議論と
我が皇帝陛下の御叡慮の御決裁によくよく注意されたい。しかし閣下の電報は閣議に諮るので決裁があるまで
談判破裂とならないように努められたい」と。

井上 「俊輔、頼むっちゃぁ、無茶すんなよ、もう」

榎本 「という電報ですが、けどもう破裂したも同然じゃん」
伊藤 「フフフ、まだまだ」
榎本 「まだとは李中堂の言ははったりだとでも?・・・」
伊藤 「それは分からないが、まだまだ議論は尽くしてないということだよ」
榎本 「この上まだこの件で議論をすると?」
伊藤 「全力を尽くす他はない」
 伊藤は解決案として奥の手を秘していた。
   (つづく)

280 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:26:01 ID:gNDOtF.E
666 名前:中の人[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:25:28 ID:GvWfy9c+

   併合前の日朝(続き)

 さて談判4回目は4月10日。
 冒頭、李鴻章は先に将来のことを決めたいとして、撤兵問題を議題とするのを求め、伊藤は過去のことも
将来のことも軽重はないとしながらもそれに応じた。

李 「そもそも北京総署では、我が国の兵は朝鮮を保護するために駐留するのであって、それを我が国の方から
撤兵するような協議は必要ない、というのが政府決議アル。それは在日本公使に既に訓示しているアル」

伊藤 「そ? 井上外務卿からは何も聞かんけど」

李 「それを協議できるように北京総署に受け入れさせたのは自分アル」

伊藤 「あ、そ」

667 名前:中の人[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:27:44 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「よって、撤兵のことで両国が妥結できるなら、これで閣下は充分に使命を果たしたことになるアル。
それをその他の瑣末のことまで満足しようというのはこちらとしては受け入れられないアル」

伊藤 「ま、先に撤兵のことを取り決めよか。で、閣下はいつ頃撤兵されるつもり?」

李 「突然の撤兵には朝鮮国王はおそらく反対するアル。前もって公文を出して朝鮮国王に通告して
おかねばならないアル。それにまた国王は新宮に座を移した。おそらく両国駐在兵の間で争闘が起こるかも
しれないと恐れてであろう」

伊藤 「その事は上海新聞で本大臣も一読したよ」

李 「国王は我が将官には遷座の儀式に兵を派遣するよう依頼したアル」

伊藤 「上海新聞がその時の様子を詳しく記事にしているが、儀式に1人の日本人も招待されなかったと
ウソ書いている。とくに笑えるのが、『国王の儀仗列がまさに整然と行進する際に、日本代理公使(近藤真鋤)は
公使館の窓の隙間からこれを覗き見、この大礼式に参加出来なかったために怨みを含んで頗る
憂鬱の表情があった』と書いている。おそらくこの記事は我が国の人を貶める悪意で作ったようだ」

李 「まったく愚かも甚だしい新聞アル! すでに現地の将官から報告を受けているアル。それによれば、
貴国代理公使の近藤氏もまた招待を受けており、そして貴国の兵300人が通路の左右に整列して儀仗を警護し、
近藤氏は小高い丘に設けられた場所でこれを監督したとある。よって窓の隙間から覗いていたなどとは
全く虚偽の記事である!」

281 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:29:46 ID:gNDOtF.E
668 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:29:46 ID:GvWfy9c+
(続き)
呉 「近藤氏が窓から覗いていたなどとは虚妄も甚だしい! 本大臣も朝鮮では近藤氏や貴国の将官を招いて
宴を開き互いに親密な交わりをした。そもそも新聞は信じるに足りないものアル!」

 歴史問題を扱う場合、新聞記事を以て安易に傍証資料とする人があるが、どうなんだろねえ。資料を扱うなら
当然のこと資料批判は避けて通れない。がしかし素人の暇つぶし程度の筆者のような者にとっては困難過ぐるぉ。

李 「で、撤兵のことは条文にする必要があるアルか?」

伊藤 「もちろん。それで閣下は前もって朝鮮国王に撤兵のことを通知せねばと言われたが、それは
国王からの回答待ちということなのか?」

李 「そうアル」

伊藤 「閣下が国王に通知されるのは本大臣には関係ないことである。日清双方が撤兵を実行する前に
通知されたらよい」

李 「貴国はいつでも撤兵する用意があるのか」

伊藤 「然り。いつでも撤兵する」

李 「来年まで待ったらどうアルか」

伊藤 「はあ? 撤兵で妥結したなら、そんな猶予はないしその道理もないでしょ」

669 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:32:54 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「我が士官が朝鮮兵の訓練のために雇われているのは閣下も聞いておられよう。この者らは撤兵に
含めるべきではないアル」

伊藤 「何人ぐらいいるの?」

李 「およそ20名。それで1500人の朝鮮兵が訓練を受けている」

伊藤 「撤兵の条約では公平を旨とすべし。双方が妬心を起こさないようにせねばならない」

李 「我が国の士官が朝鮮に雇われたことが閣下から見て妬心を起こすことにあたるアルか?」

伊藤 「本大臣は何も思わないが、我が兵士らにとってはそうなろう。閣下にも長年の経験から
よく考えられたらよい。以前、貴国政府が多くの英国人を雇ったときは他の欧州各国から妬心を生じた。
我が国でもこのような経験は少なくない。よって条約を決めるなら公平均一を以てせねばなるまい」

李 「そもそも朝鮮政府が兵を整えて自ずから独立国としての地位を護るのは、本大臣も又希望するところアル。
これは朝鮮の内政に関するところで朝鮮政府が決めることであり、そして朝鮮政府は我が国の士官を雇うことを
望んだ。清国では多くのドイツ士官を雇っているが、我が兵を訓練するためである。朝鮮もまた自国の兵を
訓練するために雇っているのであって他意はないアル」

 はいウソ。李鴻章始め清国政府は決して朝鮮が独立国となることを認めていない。

伊藤 「貴国士官を雇ったのはいつからいつまでなのか」

282 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:34:42 ID:gNDOtF.E
670 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:35:12 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「別に年限の約束はないアル。しかし撤兵のことが決まったら改めてその年限を定めねばなるまい」

伊藤 「閣下も知っておられるように、朝鮮には2派の党がある。一つ日本に賛成し、一つは清国に賛成し、
互いに憎み合って権を争い、相容れることがない。このままではいつまた事変を生じるか分からないことである。
両国が力を尽くしてこの対立をなくすよう努めるのは朝鮮のためだけではない。
日清両国の和好を重んじるがゆえでもある。それでも貴国が士官を置くなら、それは朝鮮国民の対立争乱を
挑発するためである、と言われるようなことがあるなら本大臣はどう答えればよいのか。これでは我が国としては
我が士官もまた置かざるを得なくなる。たとえ朝鮮政府に雇う金がなくとも、日本兵の中には自費で朝鮮に行って
朝鮮兵を訓練して日本党を助けようとする者がいないとも限らない」

 かつて朴泳孝は支那党には内緒で元日本陸軍大尉を雇って朝鮮北部の兵を訓練させている。

李 「貴国には国王の依頼なしに雇われようという士官がいるアルか?」

伊藤 「剛勇の者で平穏無事に退屈して嘆く者は数え切れない。これらは自費でも朝鮮に行って何かしようと
するだろう。もしこのような者たちが朝鮮兵を訓練するなら、朝鮮内の党派争いはやがてとんでもないことになるのは
火を見るよりも明らかである。朝鮮兵が清国に行って訓練を受けるのは構わないが、士官が朝鮮に駐留するのは
やがて事変を招くことになりかねない」

李 「朝鮮は最も貧しい国アル。兵を我が国に派遣して訓練を受けさせるような費用はないアル。だから国内で
訓練させるのであるから閣下にはこれを了解されよ」

671 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:36:24 ID:GvWfy9c+
(続き)
伊藤 「朝鮮使節ですら旅費を払うことも容易でないのは全くその通りである。最後の使節は帰途の費用も
払えなかった。朝鮮人が赤貧洗うが如しなのは本大臣もよく知っている。しかも我が商人に4、5万円の負債もある」

李 「我が国への負債も20万両にのぼる。とても償還できる望みはない」

 とにかくね、つまりは日清両国は朝鮮に振り回されているんだよねえ。

伊藤 「とにかく貴国士官が朝鮮に駐留するのは本大臣は断じて反対する」

李 「それなら閣下は朝鮮を向上させることを望まないアルか?」

伊藤 「もし自国兵を訓練する士官を雇う費用もないぐらいなら、朝鮮が自ら文明に進むような大計につくのも
無理だろう。しかし本大臣が朝鮮の進歩を願うのは閣下よりも切実であるだろう。だからこそ清国士官を
雇って置くのは断然反対である。先に言ったように党派の軋轢を招くことを避け、朝鮮の平穏を望むからである」

李 「朝鮮駐留の士官はわずかに20名である。しかも高等士官ではないアル!」

伊藤 「事を起こすにはその20名が指揮をするだけで充分である。閣下には了解されたい。ただひたすら
将来の事変の再発を憂えるのである」

李 「考え過ぎも甚だしいアル!」

伊藤 「両国の友好にとって重大事であるから、深く考えねばならないことである」

283 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:38:59 ID:gNDOtF.E
672 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:39:51 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「それでは言おう。今や朝鮮は我が士官の訓練を受けるのを望み、貴国士官の訓練を望んでいない。
なぜなら、先の乱を起こしたのは日本党であったことは朝鮮の誰れもが知るからである。実際目撃した者は
竹添公使が関係したことを信じて疑わない。まさに乱を起こしたのは日本党であり、支那党ではなかったアル!」

伊藤 「日本党が企てた乱であったかどうかは朝鮮の内政に属することで本大臣には関係ないことである。
日本党がその反対する党と決闘しようとも我が国には関係することではない」

李 「本大臣はただ事変の原因の事実を述べたに過ぎない。竹添公使が多少とも関与した以上は貴国にとって
関係がないとは言えないアル!」

伊藤 「それは閣下の疑いに過ぎない」

李 「疑いではない。朝鮮国王が親書を本大臣に出したアル!」

伊藤 「もし日本党が事を成功させていたなら、朝鮮国王が閣下に告げたものはまた全く違ったものであったろう」

李 「日本党には朝鮮国民は決して与しないアル! 成功するはずがない!」

伊藤 「それを言うなら、朝鮮国人は無知蒙昧であって、誰も政治を改良して悪弊を一掃するような計画をする者が
あろうか」

673 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:41:48 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「貴国はかつて維新によって各国に名声を轟かせたが、朝鮮国中には政治の改良をする者がいないのは
本大臣もよく知っているアル。まことに朝鮮国人の中で誠心から国家を憂い、進歩改良を図ろうとする人士が
居ないのは、嘆くに余りあることである」

 当時朝鮮に対す日清両国の共通認識。ここ重要。

伊藤 「朝鮮が開国したのはつい最近である。急に国家の改良を任せられるような善良な政治家が出てくることを
求めても仕方がない」

呉 「朝鮮国人の中で勇壮にして大いに将来を託すことの出来る人士は、先の変乱のように無謀の事件に
参加してしまった。実に朝鮮のために痛惜せざるを得ない」

 と呉大臣、内心朴金に希望を持っていたらしい様子。

伊藤 「世界中、どこの国もおよそこのようなものである」

呉 「金玉均は米国公使フート氏と交際があった。フート氏から聞いたが、金玉均が言ったことに、
朝鮮政府は衝立の後ろの灯火のようなもので、見ることも出来ず暗黒である、と。フート氏は答えて、
衝立を除こうとして灯りを消す愚がないように、と」

伊藤 「雑談で時が過ぎるのは惜しい。では貴国士官が12名なら異議はない。20名では朝鮮兵を指揮して
事を謀れる」

284 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:43:13 ID:gNDOtF.E
674 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:44:11 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「我が士官は訓練をするのであって朝鮮兵を指揮するのではない」

伊藤 「もとより訓練士官と指揮する士官は職掌が違うのは分かっている。しかし今回の両国撤兵のことは
公平均一に締約せねばなるまい。それでも貴国が士官を駐留させると言い張るなら、本大臣は考案として、
他の第三国の士官を朝鮮に駐留させることを議題とせねばならない。」

李 「他国の士官を雇わせることは本大臣も賛成するが、その費用に朝鮮政府が耐えられないだろうことを
恐れるアル。朝鮮政府はわずか数人の学生すら海外に派遣して英語を習得させる費用すら出せない。
それで朝鮮人には1人も外国語に通じる者がいない。我が国から通訳を出しているぐらいである」

伊藤 「本大臣は我が国でモルレンドルフ(当時朝鮮謝罪使節)と会った。彼が言うにはそれぐらいの費用は
賄えるということであった。また彼は、朝鮮国は日清両国が撤兵することを強く望んでいるとも言っている」

李 「モルレンドルフは朝鮮国王が信を置いている者ではない」

伊藤 「ん?そうか? では朝鮮国王は彼を信任して日本に派遣したのはどうしてなのか」

 もともとモルレンドルフは清国政府が朝鮮政府に雇わせた者である。朝鮮を清国寄りに導くはずがその宛は外れた。

675 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:47:11 ID:GvWfy9c+
(続き)
 で、ここで榎本公使が参戦。
榎本 「この頃聞いたことに、貴国の将官は閔泳翊氏の所に行って、閔氏が嫌うのに護衛を申し出、
それで遂に一つの事件となって閔氏の家僕が清兵1人を殺した事件があったが、閣下はそれを聞いてないか」

李 「それはまだ聞いていないアル。貴国の新聞や上海の新聞には載っているが、清兵を閔泳翊の護衛に
つけたことはない。日本の新聞は虚偽誤報を載せること甚だしいものがある」

榎本 「中国の新聞ほどひどくはないぞ」

李 「いや決してそうではないアル!」

榎本 「中国は領土広いが新聞はたった2紙じゃん。我が国の新聞に比べれば少なすぎるぞ。
これではも誤報の違いを正しようがないじゃん」

 清国人が経営する新聞局に限って言えばらしい。

李 「もともと新聞に過ぎない。新聞は誤報を載せるものアル!」

榎本 「朝鮮国王が普通の感覚の人なら、自国の領土に外国兵が駐留するのは快くないことだと思うよ。
国王が日清両国の兵を駐留させたくないと願っているのは確かさ」

(・・・なんだか苦笑w)

285 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:47:14 ID:gNDOtF.E
676 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:48:49 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「貴国が朝鮮に干渉しないなら我が国も干渉しないアル!」

伊藤 「もちろん再びこのような事があってはならん」

李 「もし貴国の居留民が暴行に遭うことなどを口実に貴国が再び兵を出すなら、我が国もまた直ぐに兵を
派遣するだろう。これは相互に公平の約束をするからである」

伊藤 「まことに然り。貴国が兵を派遣するなら、我が国も又必ず兵を出してその轍を同じくするだろう」

 う〜、これこれここですよ。その理由は、日本の場合は居留民の生命と財産保護および条約に基づく権利上のこと。
一方清国は朝鮮は中国の属国であるという揺るがせない一点にあり。後の日清衝突はまさにその轍を踏んだ。

李 「貴国が兵を出すまではこちらから兵を再び出すことはないだろうアル! ただ恐れることは、
我が兵が徹する機会に乗じて貴国が直ぐに朝鮮を併呑することにあるアル!!」

伊藤 「はあ? 恐れるなかれ。我が国は朝鮮のような貧弱の一小国を併呑する考えはない。日本も又すでに
貧弱の一国である。これに朝鮮の貧弱を併せるなら自ずから最貧国に陥るだろう。誰もが富強を願うのに
どうして自分だけが自ら貧弱となることを望もうか。かりにも一国を併呑したなら、その領土に関して一切の責任を
負担せざるを得ないではないか。閣下にはよく理解されよ」

 これは伊藤博文の、後に朝鮮併合に反対する時も一貫した考え方であったようである。しかし本当どうして
ババひいちゃったんだろうかねえ・・・。

677 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 22:50:41 ID:GvWfy9c+
(続き)
李 「将来朝鮮に再び事変があった時は、我が国は使者を派して決して再び兵を随行させないだろう」

伊藤 「我が国もそうである。しかし貴国は先の呉氏が朝鮮に行く時、最初は兵を随行させないと言ったので、
それで我が国も全権大使(井上馨)に兵をつけなかったが、下関まで行った時に呉氏が兵を伴っていることを
聞いたので、急遽兵を随行させたのである。呉氏がそれをしなかったら我が方も兵を随行させなかったのだが」

榎本 「これがその時我が政府が朝鮮に兵を派した理由さ」

李 「それなら咎めるべきは呉氏が兵を伴ったという報告にある。先般の変乱後は流言が飛び交い殆ど真偽判定が
できなかった」

 その報告は在日清国公使がもたらしたものである。

伊藤 「貴国には我が国の公使が駐在しているのだから政府はみだりに他の風説を信じてはならない。
もし我が国公使が虚偽を告げることがあるなら直ちに我が政府はその公使を召還するだろう」

 ここで李鴻章は榎本武揚の方に向って言った。
李 「当時風説があったアル。閣下は貴政府に報じたのに、この機に乗じて朝鮮を併呑しないなら何時の日か
これを実行できようかと言ったと」

286 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:56:54 ID:gNDOtF.E
6 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/03(火) 01:19:17 ID:p40BKAod
すみません。>>3の前に以下の分が抜けていました。

(続き)
榎本 「本公使はかつて本を書いた。それで我が国のためには必ず朝鮮を政略するべきであるとの論を
述べたことがあるのは確か」

 この確認がちょっと出来ない。征韓論盛んな頃であろうか。

李 「その事ではないアル! 閣下が朝鮮を略取すべきであるという密書を井上外務卿に送ったことを言っているアル!」

榎本 「外務卿が東京に帰ったのは1月22日だけど。忘れたの?」

李 「閣下の密書は途中で外務卿の手に渡ったのだろう!」

伊藤 「冬の氷結の時期に北京から書信を送るのにどれぐらい日にちがかかろうか」

李 「実にこのような風説があったのでそれを閣下に言うのである。それが本当かどうかは榎本公使と外務卿以外
知る者はいないアル!」

榎本 「閣下の行動に関してもこれに類似するものがあるが、ま、ここでは敢えて言わないが」

李 「閣下が敢えて言わないなら、こちらから言うアル! 閣下の存念は伊藤大使が主戦論の人ではない、
ということアル!」

 つまりは、榎本は伊藤大使が主戦論者でないことが気にくわないと思っているだろうと。

3 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 23:03:38 ID:GvWfy9c+
(続き)
伊藤 「閣下の疑い深いのには驚くばかりである」

李 「これは疑念ではなく事実である。本大臣は日本から密報があって知った」

 はて、榎本がかつて竹添公使に、「僕の考えでは、事の次第によっては止むを得ずに清と開戦せざるを得ない
ことは勿論であるが、なるべくは我が国の人が清兵に殺害されたのであるから謝罪と賠償金の請求をし、
朝鮮政府には改革を勧告するべきであると今のところは思っている」
という書簡を送ったことなら筆者知るところであるが。
 あるいはまた在清英国公使が「日本は京城の南側に要塞を建築して日本の精鋭部隊を増強して駐屯させる
べきである。また安全のために仁川沖の島を占領することを朝鮮に向かって要求するのは当然且つ得策である。
勿論これによって生じる費用は朝鮮政府に負担させるべきである」と榎本に述べたのを日本政府に報告したことも
あるが。

 ついでに言うと、事変後に米国公使フートは竹添公使に、
「日本政府は何なりと清と朝鮮の両国に要求するところを提出して要求通りにするべきである。
まして貴下が宮殿に行ったのは国王の請求によって国王を保護するためであり、その事実は明白である。
であるから今度のことを世界に向かって弁明する必要も無い。まして日本政府は罰金を返して朝鮮に好意を表し、
それが間もなくこのように日本人を殺し、小銃から大砲まで使って公使に発砲するような行為を受け、
かくも日本が害されるような事態となった今日、世界中の誰が日本に対して文句を言う者があろうか」
との書簡を送ったことも。
 この事変に於いて中国朝鮮の方に大いに非があることは西洋列強国も承知していたことであった。
しかし、その言うように何なりと要求をしてそれを通すべきである、とあっても、実際、力なき正義は所詮無能に
近いものである。それを言論を以って通そうというのが伊藤に残された唯一の道であった。

287 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 08:58:18 ID:gNDOtF.E
4 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/02(月) 23:04:39 ID:GvWfy9c+
(続き)
 伊藤が声を上げた。
伊藤 「諸君に求める! 無用の雑談を止めて談判要件に移れ! 無駄な時間を消費するな!
双方が妥結するための事項は総てこれを書いて閣下に提出しよう。条約批准を2ヶ月以内に行い、
4ヶ月以内に双方が撤兵することとしよう!」
(つづく)

288 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 09:01:24 ID:gNDOtF.E
11 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:12:27 ID:lPZ1tC/s
   併合前の日朝(続き)

李 「撤兵は貴国が先にするアルか」

伊藤 「いや、同時にせねばならない。閣下は朝鮮駐在の将官に命じられよ。本大臣は近藤代理公使に訓令しよう」

李 「よろしいアル。貴国の兵は済物浦から、我が兵は馬山浦から撤兵させのがよいアル。場所が同じでは
また何かの紛争となるかもしれないアル」

伊藤 「その通り。この者らが一緒になるのは火薬に火を近づけるようなものである」

李 「両兵が会えば争闘となるアル」

伊藤 「そうならないように速やかに撤兵することを希望する」

李 「本大臣は我が兵には、たとえ貴兵から粗暴の振る舞いがあっても決して争闘するなと厳命しているアル」

伊藤 「井上外務卿が大使として京城に行った時に我が兵の中に些細なことを訴える者があった。
その時井上大使が訓令したのは同じである」

12 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:13:06 ID:lPZ1tC/s
(続き)
李 「朝鮮で再び事件を生じることがあっても、貴国からは調査委員を派すのみで兵は伴わないように望むアル」

伊藤 「そのことは条約上の約束とせねばならない。朝鮮が我が国に開戦を布告するようなことはないであろうから、
我が国から再び派兵することはない」

李 「貴国が朝鮮を占領する意図がないことは閣下の明言を以って確信した。しかし他国が朝鮮を狙うようなことが
あったなら、我が国は派兵せざるを得ないアル。その時は貴国もまた派兵できる」

伊藤 「朝鮮が独立の国体を維持し、他国が侵略することなどがないように切に希望する」

李 「貴国が朝鮮を併呑しようとする時は、我が国は国力の限り貴国と戦わざるを得ないアル。我が国がもし
朝鮮を併呑することがあるなら貴国はまさに全力で我が国と戦うべし。もし他国が朝鮮の地を狙うなら
日清両国は連合してその侵略を防ぐべし」

 そらまあ、清国は朝鮮を冊封体制を以て属国としているんだから今更併呑する必要はないわなあ。

伊藤 「話が他国のことに及ばないように」

李 「本大臣は敢えて公然とそれを言うのではない。日清相互の密約として心に命じてもらいたいアル」

289 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 09:06:48 ID:gNDOtF.E
13 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:14:16 ID:lPZ1tC/s
(続き)
 何だか馬鹿馬鹿しくなった榎本公使がここで茶々を入れる。
榎本 「本公使なら今のような約束は承諾しないだろうねえ。本公使の真意は朝鮮を略奪することにあるらしいから」

李 「これが閣下を甚だしく疑う所以アル!閣下は使者一等の地位に昇るまでは伊藤大使の言葉に
従わねばならないアル!」

榎本 「うん。だからここでは自説を曲げざるを得ない」

李 「閣下が著書で貴国人民を大いに惑わしたから、朝鮮は日本が占領せねばならないと論ずる者が
多くなったのだろう」

榎本 「いや、閣下も日本を併呑する気かも知れない」

李 「決してそのような志はないアル!」

榎本 「それについては天の外に知る者はないよ」

李 「本大臣はまさに天に誓おう。そのような志をもったことはないアル! かつて森有礼氏が我が国に公使として
居たときに予に言ったことがある。『日本は朝鮮と戦を開く口実を発見することが出来なかった』と。
閣下はこのことを聞いたか! これは本大臣が郷里に行った時に森氏が訪問して直接言ったことである。
その時は貴国が朝鮮と紛議を生じた時アル!」

伊藤 「我が国が朝鮮侵略を望むなら、どうして朝鮮と条約など結ぼうか。条約などない方が却って我が国としては
朝鮮を併呑するのに都合がよかろう」

14 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:20:30 ID:lPZ1tC/s
(続き)
李 「確かにそうアル。と、とにかく他国が朝鮮を侵略するようなことがあるなら全力を挙げて防ぎ、
朝鮮の独立を維持せねばならないアル!」

 これにて談判第4回目を終わった。

 なお、森有礼の言葉であるが、確かこれは朝鮮による雲揚号への砲撃事件、いわゆる江華島事件に
関連してのものと思われる。
 当時、朝鮮が日本との外交約束を破棄し、その上、測量船雲揚号に砲撃を加えたために、「ついに朝鮮は
開戦したか」と日本に思わせたことがあった。しかし唯一の日朝貿易港がある釜山居留区での日本人への待遇は
平時と変わらず、よって日本政府は「????」と思いながらも、砲撃への問責と条約締結(正確には
幕府時代の条約を破棄して新たに条約を結びなおす)という2点セットで艦隊を江華島に送り、両国全権大臣が
日朝談判。ついに日朝修好条規締結と砲撃事件謝罪を行わせた。
 砲撃事件では日本人の怒りは頂点に達して朝鮮との開戦を強く望んだが、もとより朝鮮政府は日本と戦争する気は
なく、砲撃のことも日本の船と知らずにした単なる偶発事件ということで終わった。

 さて、第5回談判は4月12日午後3時より。
 伊藤はここで撤兵についての条約案を提出。

290 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 09:10:50 ID:gNDOtF.E
15 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:21:15 ID:lPZ1tC/s
(続き)
1 日清両国は朝鮮に派兵する名義や条約がないことは言うまでもない。よって両国は均しく派兵駐在をせず、
両国間でのトラブルを避ける。

2 前項は日清両国の交戦権を妨げるものではない。

3 将来、朝鮮国で事変があった場合は両国は委員を派遣して平和的に解決すること。

4 両国は朝鮮兵の教練として第三国の仕官数人を置くことを認める。

5 日清両国は4ヶ月以内に日本は仁川港から、清国は馬山浦から撤兵する。

6 条約調印後、両国は委員を朝鮮に派遣してそれらを施行する。

 一方、清国側は呉大臣が以下の条約案を提出。

1 両国は条約調印後、4ヶ月以内に朝鮮から撤兵する。

2 朝鮮兵を教練するのに中国士官10余人から20人を年限を定めて駐留させ、満期後は撤回する。

3 以後は朝鮮商民や日本商民の間で争いがあっても、日清両国は兵を随行せずに委員のみを派遣する。

4 朝鮮で党の乱があり、国王の求めによって中国が派兵しても必ず日本人に害を及ぼさず、
平定後はすぐに撤兵すること。

16 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:22:37 ID:lPZ1tC/s
(続き)
 とまあ両案の差は大きい。しかし伊藤の1条と2条は実にとぼけていて面白い。

李 「閣下の出された案の2条の意味が分からないアル」

伊藤 「いやなにこれは深い意味があるものではない。万国公法に照らしても独立国は交戦の権利がある
ということを言ったまでである。何なら公法の文字を書き加えようか」

李 「なるべく的確な字句を用いて意味を明瞭にせねばならないアル」

伊藤 「かりに清国が朝鮮と戦争するなら、その時は貴国は派兵の権利があるのは明らかである」

李 「第1条の『日清両国は朝鮮に派兵する名義や条約がないことは言うまでもない』とは何を指すのか」

伊藤 「これは約束を破らない用心のために書いたのである。そのような用心すら必要がないというなら
ここは削除してもよい」

 もとより伊藤は、日本には公使館に護衛兵を置くことができる済物浦条約があることは承知の上であるw

李 「もし乱があって朝鮮国王が我が国に派兵を要請した場合、この案からすればどうすべきなのか」

291 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/09(月) 09:13:39 ID:gNDOtF.E
17 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 01:26:38 ID:lPZ1tC/s
(続き)
伊藤 「その場合は両国均等を主旨とするから両国が派兵するほかはない。反対に我が国に要請が
あればどうすべきなのか」

李 「もし貴国に要請があれば、先ず国王に我が政府に通告させて我が政府と貴国政府が協議する
機会がなければならないアル」

伊藤 「それなら貴国の場合も同様に我が政府と協議するように通知させるべきである」

李 「しかし貴国と我が国では、朝鮮に対するその地位が違うアル! そもそも朝鮮は昔から我が国に
従属する国である。朝鮮は国内であった事件は必ず我が国に知らせる義務がある。だが貴国には
条約上の交際があるだけである」

伊藤 「よろしい。閣下がその議論を始めようというのか。それなら大なる難問となって、この談判は
煩雑なものとなろう。閣下はどう思われるか」

 日本は朝鮮を独立国と認めて条約を結んだ。だって条約談判の時に、「o<`Д´*> o ウリたちは
独立自主の国ニダ!!」と言うんだもんw
 一方、清国は朝鮮を属国と扱い又そのように条約にも書いていた。しかし日清間ではこのことを深く議論せず、
いわば棚上げ状態としていたのである。

李 「閣下にはこのことで議論する権は受けていないだろう」

18 名前:マンセー名無しさん[] 投稿日:2008/06/08(日) 01:27:09 ID:lPZ1tC/s
(続き)
伊藤 「いや権はある! しかし本大臣はこのことはよくよく熟慮し、議論となるのを避けるのは
協議を煩雑なものとしたくないからである」

李 「今はこのことで議論する権は本大臣は受けてない。撤兵のことを協議する以外にそのことを
議論することはない」

 と李鴻章もここでは一応この議論は避けた。
(つづく)

292 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/17(火) 08:28:43 ID:VeuDCW46
30 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 23:54:24 ID:lWFkyFLk
   併合前の日朝(続き)

 さて、条約草案が双方から提出され、それをめぐっての議論となり、やがて日清両国の対立点が
浮き彫りとなってくる。

伊藤 「呉氏の条約案第2は断じて受け入れられない。また第4のようなものを条約の中に加えることは
本大臣は最も異議あり」

李 「呉氏の案はよくまとまっている。貴案に比べて実に明瞭アル」

伊藤 「呉氏案の第3なども要するに両国商民の間での争いを言っているに過ぎない。このような場合に
兵を派す必要がないのは当たり前である」

李 「条約に調印された後は日本政府は朝鮮を併合する志を捨てねばならないアル」

伊藤 「我が国の人の中にそのような意思を抱く者がないことはないだろう。しかし我皇帝陛下及び日本政府が
どうかは閣下がよく考えられたらよい。すでにこのことは前に述べた。」

李 「榎本公使の10年前の著書には、朝鮮を略取するのは日本人の与論であるとある。閣下の話からすれば
貴国は朝鮮を侵略する意思を変じたらしいアルネ」

伊藤 「かつて我が国の人の中に朝鮮侵略を志す者がいたかどうかは本大臣は保証できない。しかしこの事は
我政府の志ではない以上は閣下の心配することではない。それよりも貴国の人の中には我が国と戦うことを
望む者もいるのを知っている」

李 「我が国にはそのような者は一人もいないアル」

31 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 23:54:56 ID:lWFkyFLk
(続き)
伊藤 「そうだろうか。貴国の高官の一人が貴国皇帝陛下に日本と戦争するよう上奏した時のその上奏文の写しを
本大臣は持っているが」

李 「日本、清国、朝鮮の間では将来も戦争するようなことがあってはならないアル!」

伊藤 「もとよりそうであるが、宣戦の権利はいずれも有している」

李 「将来に朝鮮が貴国に宣戦することは決してないことは本大臣が保証するアル」

伊藤 「およそ死生は常ならずとは人生の免れられないことである。国もまた同様。夕べに国の大事を議して
朝に滅びることがないとは知られない」

李 「歴史をひもとけば、朝鮮は常に守りの立場にあり日本は常に進攻の地位にあったことは確かアル」

伊藤 「閣下には清朝の政府を代表する全権大臣のみならず、朝鮮王朝を代表する意があるらしい。
それならば元代に起きた歴史上顕著な事跡も提出して閣下から満足ある回答を求めよう。すなわち
元の時代に貴国の兵は我が国に襲来すること2回。初めは上海から来て次には朝鮮を経由してきた。
これは閣下も知っておられようが閣下にはどう本大臣に答えるのか」

李 「当時日本を襲ったのは中国人であって朝鮮人ではないアル。だから朝鮮人はかつて貴国に対して
進攻したことはないと言うのである」

293 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/17(火) 08:31:38 ID:VeuDCW46
32 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 23:56:04 ID:lWFkyFLk
(続き)
伊藤 「決してそうではない。日本を襲ったのは元の兵であったとしても、当時の韓人は元軍を援助した。
韓人が中立を守ったならば元の兵が国土を通過することを許さなかったろう」

李 「・・・・話を条約のことに戻すアル! 条約調印の後は我が国は決して朝鮮に派兵しないアル。
貴国もまたそうでなければならないアル。もし日本が将来に朝鮮を経由して我が国を襲うとするなら
貴国のためを言えば、先ずは朝鮮を略取することが第一であろう」

伊藤 「日清両国間で戦を交えることがあるとしても、今まさに結ぼうとする条約は両国間の交戦権を
制限するものではない」

李 「条約草案の2項はそのことを言うアルか?」

伊藤 「そうである」

李 「もし第三国の他国が朝鮮を侵略するなら我が国は派兵せざるを得ないアル!」

伊藤 「その権利があるのは言うまでもないことである」

李 「その時は我が政府は貴国政府に呼びかけて連携して朝鮮を守るべし。閣下はこの事を了承されるアルか?」

伊藤 「はて。生まれてもいない子に名はつけ難いが」

李 「閣下は他国を恐れられるアルか? また他国と何らかの密約があるアルか?」

33 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 23:57:57 ID:lWFkyFLk
(続き)
伊藤 「他国のいずれの国も恐れないわけではない。そして本大臣は特に貴国を恐れる」

李 「ここで互いに密約を以って閣下と結べようか」

伊藤 「本大臣は貴国と連合の密約をする権を有しない。閣下もそうであろう」

李 「本大臣はその全権を有する」

伊藤 「それらならば言おう。閣下の全権は本大臣に比べればはるかに重いと」

李 「閣下は他国の意思を傷つけることをおそれるのだろう」

伊藤 「その時その状況に至って決断する必要があるまで、他国のことまで議論する必要はない」

李 「閣下は細心の注意をされることが甚だしいアル。第2項には『もし朝鮮を他国が侵略するときは
第1項に依らない』を加えたいアル」

伊藤 「第2項のままでいいんじゃないの?」

李 「しかしもし他国が朝鮮の国土を侵すときは我が国は派兵の義務を負うアル」

伊藤 「それは勿論であろう。しかし第1項は要するに両国が駐在兵を撤回するために相互の条約を
立てるためにある」

李 「本大臣は明瞭なる条約となることを望むアル」

294 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/17(火) 08:35:32 ID:VeuDCW46
34 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/16(月) 23:59:05 ID:lWFkyFLk
(続き)
伊藤 「それならば第2項はすべて削除してもよい」

李 「我が国は朝鮮を他国の侵略から防護するために派兵できる権利があることを条約中に加えることを希望するアル」

伊藤 「貴国にその権利があることは承認することである。しかし今は日清両国が撤兵することを条約とすることが
第一義であって、朝鮮と他国との交戦のことを我が国との条約に加える必要を感じない」

李 「貴国と我が国が戦争となったときは朝鮮に派兵する。また他国が朝鮮を侵すときも派兵するアル」

伊藤 「貴国にその権利があることはすでに繰り返し述べた」

李 「そもそも我政府は撤兵の約束など決して承諾できなかった。この呉大臣などは今でもそうである。
閣下の申し出を容れて止むを得ず条約が結ばれたことが知られればおそらく本大臣は非常な攻撃を受けるだろう」

呉 「李中堂は閣下の提議に同意した。今は嘴をいれることもできない」

榎本 「この条約は両国のためにあるのであって、普通の感覚を持って将来のことを思う人なら誰もが
認めるものだろうよ」

李 「我が国は朝鮮国王を補佐するのが義務である以上、この第2項に『もし朝鮮を他国が侵略し或いは国内で
叛乱があるときは第1項に依らない』を加えたいアル」

35 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 00:00:23 ID:i6NLdECX
(続き)
伊藤 「それならば閣下が承諾された撤兵のことは一時の約束に過ぎないという意味か?」

李 「朝鮮に内乱がなく外国からの侵略がないなら派兵することはないアル!」

伊藤 「この条約から見ても我が国に朝鮮侵略の意図がないことは明らかであろう。しかし貴国には朝鮮の内乱に
乗じて国土を侵略する意図があると疑われても仕方がない」

李 「閣下には朝鮮政治の実情をよく知っておられよう。朝鮮には多くの党派がある。互いに対立して
権を争っている。もっとも、中でも閔族の朝鮮党と称するものが歴史も永く力も強い。日本党や支那党は名のみで
実力はないアル」

伊藤 「閣下の条約修正案に「朝鮮に叛乱ある時は」とあるが、その時は我が国も事前に通知せずに派兵できる
という意味か?」

李 「両国とも通知することがいる」

伊藤 「しかし本大臣はこのように修正するのはよくないと思う。いよいよ緊急となった場合に互いに通知すればよい。
今ここで条約にそのことを設けても何の益もないばかりか、却って後に難問を増すことになろう」

李 「それならば別に条約を作ればよい」

伊藤 「いやそれにも反対である」

295 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/17(火) 08:40:13 ID:VeuDCW46
36 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 00:02:51 ID:lWFkyFLk
(続き)
李 「それならば将来朝鮮において叛乱や内乱が起きた場合も我が国から朝鮮に派兵できないという意味アルか?!」

伊藤 「貴国が派兵するときは我が国に通知することが必要である。それによって我が国は派兵が必要かどうかを
調査できるからである。しかしわざわざ別条約を設けるのは断じて承諾できない」

李 「本大臣は朝鮮の属国論のことで議論する気はないが、しかしここに一言することがある。朝鮮人は我が国を
甚だ敬慕している。よって朝鮮に叛乱などがあったときは我が国はこれを鎮定しやすい。だから朝鮮で事があれば
我が国は直ぐに派兵して救わねばならないアル。その派兵の費用も少なくはないし、かといって朝鮮から償還を
得られるものではない。それを何を好き好んで徒に派兵しようか。まして朝鮮を併呑することなどないことは
弁明を必要としないアル!」

伊藤 「或いはそうだろう。しかしそれが確かなこととは認めがたい」

李 「朝鮮人はかつて害を清国に及ぼしていないアル! ただ日本を害しようとしただけアル!」

伊藤 「これまた閣下の憶測に過ぎない」

李 「朝鮮人が貴国の人に害を加えたのは本大臣が知る限り1度ならず2度まであっているアル!」

伊藤 「それならば貴国は朝鮮と戦ったことが何回あるのか」

李 「閣下のその意味は昔のことを問われるのだろう。朝鮮はもとは独立の国であったが明代の後に我が清国が
戦勝してその国を得たのである。ま、閣下には色々異論があろうが。では次のように、『中国は派兵する時に
日本に通知し、事が治まった後は撤兵する』の一文を加えてはどうか」

37 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 00:04:18 ID:lWFkyFLk
(続き)
伊藤 「それでは貴国兵駐留の期日が定められない。他の外国が朝鮮を侵略することに対して貴国が
派兵することは本大臣は承諾できるが、その他のことで派兵するために条約を定めるのは承諾できない」

李 「朝鮮の変乱に際してその政府を助けるのは我が国の義務である。例えば朝鮮国王が乱党に
殺されるようなことがあるなら、我が国は直ちに兵を派して国王の遺族を保護せねばならないアル!」

伊藤 「閣下がそれを条約に加えることを硬く主張されるなら、これでは条約など結ばずに現状を維持したほうが
ましである」

李 「朝鮮で叛乱があれば我が国は派兵するほかはないアル!! それをせずして何をしようというのか!!」

伊藤 「まさにただ朝鮮が自ら国を守ることが出来るように兵を訓練させて、他国の派兵を頼まないように
させるだけである!!」

李 「呉氏の草案4項を修正して『朝鮮で党の乱があり、国王の求めによって中国が派兵する時には日本に通知し、
事が治まった後は撤兵する』とすればよいと思うアル」

伊藤 「このような条項とするなら、朝鮮はまるで日清両国に属する姿となるではないか。朝鮮の内政に
干渉するようなことは我が国が希望することではない。朝鮮はまさに自ら処して、あえて他国の干渉を
容れるべきではない!」

296 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/06/17(火) 08:43:56 ID:VeuDCW46
38 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/06/17(火) 00:06:23 ID:lWFkyFLk
(続き)
李 「朝鮮は未だかつて日本の属国であったことはない。しかし朝鮮は我が国の属国となってから永いアル」

伊藤 「朝鮮がかつて我が国の属国であったことはある。古代我が神宮皇后が三韓を征服した後は
我が属国であった」

李 「それは明代に対馬と釜山を占領した時の事を言われるアルか」

伊藤 「いや、その時よりもはるか数百年前のことである」

李 「対馬はもとは朝鮮に属し、後世になって日本に割譲した地ではないのか」

伊藤 「いや決してそうではない。対馬は古代から日本の領土であり、釜山は昔から我が人民の居留地である。
とにかくその条項を加えることは本大臣は反対せざるを得ない」

李 「我が国が朝鮮に派兵するにあたり、必要かどうか、あるいは鎮定したかどうか、なども貴国駐在の我が国の
公使に問い合わせれば済むことである。」

伊藤 「同意できない。朝鮮の内政は朝鮮自ら措置させるべきである。朝鮮が安易に貴国に、また英国に、
或いは露国に、一時の救援を求めるようなことは本大臣は願わないことである」

李 「朝鮮国王が派兵を求める時に我が国が応じるのは義務アル!」

伊藤 「それはつまりは貴国が撤兵しないことを可能とするものである」

李 「鎮定した後は撤兵するアル! 閣下の将来への心配は甚だしすぎるアル!」

39 名前:マンセー名無しさん[] 投稿日:2008/06/17(火) 00:08:13 ID:i6NLdECX
(続き)
伊藤 「今回の条約は相互に平等の約束に基づかねばならないと主張するほかはない」

 さてさて、ここまでで日清両国の対立点は充分明らかとなったと思う。

 伊藤の念頭には、朝鮮への派兵が将来日清両国の大局を破ることになりかねないという杞憂がある。
したがって出来るだけ派兵駐兵はしないという方向にもって行きたかったし、つまりは日清両国の撤兵の条約として
纏めたかった。

 しかし李鴻章は、清国は朝鮮に派兵の義務があるという点をこそこだわった。その原点となるのは、
朝鮮は清国の属国であり清国こそは朝鮮の宗主国であるという自負である。またかつて戦勝して朝鮮を降した
歴史的事実からである。

 一方、伊藤博文は日朝条約上に於いても朝鮮国を独立国と認めざるを得ない。そもそも王室を擁する一国と
いうものが自ら護り自ら治するのは当然のことであり、そこに外国が関与するとするなら兵の訓練に
力を貸すぐらいなものであるという考えである。

 天津条約にある、朝鮮への派兵、その際の両国の知照(通知)、というのは李鴻章の頑なな主張に
よるものなのですよ。そしてこの時の伊藤の杞憂は9年後に現実のものとなる。
(つづく)

297 名前: 投稿日:2008/07/08(火) 23:04:34 ID:BOWeIj3o
   併合前の日朝(続き)

伊藤「他国が朝鮮を侵略するような時には貴国が派兵する権利があることを条文に掲げることは承
諾する。しかしその他のことで派兵することは容認できない」

李 「閣下の草案6項目中の最後の2つを残して、他は修正すればよいアルか?」

伊藤「だから、全部変えるようなものでしょそれ。それならば止むを得ず我が国も条約によって朝
鮮に駐在できる権利があることを主張せねばならんが」

李 「先ず一旦は両国の兵を撤回するアルよ。そして貴国が条約上朝鮮に兵を駐在する権利があって
よいアルよ。我が国もまた時と場合に応じて何時でも派兵するアルよ」

大使「それでは今まで議論を尽くした意味がない! これでは撤兵のことは一時の約束に過ぎず、
一時の約束では貴国と我が国の駐在兵の間で将来に事件となるのを防ぐという主意に沿わないこと
になる! これで両国の友好を妨げる障害を取り除けようか。全くの中途半端である!」

李 「本大臣はただ内乱を恐れるアル!」

伊藤「さきほど閣下は、日本が撤兵したら再び変乱は生じないだろう、と言ったではないか。それ
を信じるなら貴国も派兵する必要はなかろう」

298 名前: 投稿日:2008/07/09(水) 02:41:02 ID:0js1TgZ6
(続き)
李 「しかし朝鮮で乱がないとは断言できないアル。報告によれば、日本人は朝鮮政府をそそのかし
て清国との関係を絶って独立させることに尽力していると聞く。これが日本政府の意ではないとし
ても、一旦事が起れば我が国は派兵せざるを得ない」

伊藤「朝鮮政府に対して、清国からの独立の地位を確かにするよう勧めることは、道理としてある
のは勿論であろう。また朝鮮人も独立を維持することに力を尽くすと公言している。ま、しかしこ
こではこの問題は議論外のことに属する」

李 「日本は朝鮮をそそのかすのに、常にそのような不善の言を用いているアル!」

大使「我が国の個人中に朝鮮国王に国の独立を維持するのを勧める者がいるかも知れないが、その
事は我が政府にとっては更に関係なし。しかし閣下に言っておくが、朝鮮国は既に独立国の体面を
以って諸外国との条約を締結したことは争えない事実である。閣下もこの事は軽視できまい」

李 「我が国と朝鮮国の関係については閣下に考えてもらう必要はないアル!」

大使「本大臣も敢えて考えることはない。閣下がその事を言ったので意見を述べたまでである」

李 「お互いの議論がこのようならば到底協議の好結果は見ることが出来ないアル!」

呉大澂「雑談はしばらく置いて、議論の要点を条約のことに戻すアルよ。我が方としては、朝鮮に変
乱があった時は派兵できることを主張せざるを得ないアルよ。これも将来の事件を防ぐためアル」

伊藤「防ぐことにならん。何の効果もない。それを望むなら朝鮮国王に勧めて兵を教練させ、それ
によって自ら国を護らせ自ら治めさせるほかはない。つまりは他国に依頼させないようにすること
である。それについて閣下の草案は何の効果もない」

299 名前: 投稿日:2008/07/09(水) 08:54:48 ID:0js1TgZ6
(続き)
李 「もとより本大臣は朝鮮国王に兵の教練と治安に努めるように進言しているアル。しかし朝鮮国
王はその通りには出来ないだろう。おそらく数年経たないうちに我が国に派兵を求めるような変乱
があるのは明らかアル。ま、その時は日本人は我が国が朝鮮に干渉しているように思おうが、我が国
から朝鮮の内政に干渉することはないアル」

伊藤 「そうだろうか。それは閣下の個人的な言葉に過ぎないのでは。今度の時も貴国の与論はそ
うではなかった」

李 「貴国は朝鮮を独立国と見ようが、我が国は朝鮮を属国と見るアル。ま、このことは今は議論す
る必要はないアル」

伊藤 「我が国は朝鮮との条約を締結して以来、朝鮮の地位は知っている。何も閣下に問う必要も
ない。で、朝鮮の内乱とは何を指すのか。要するに派兵するほどの重要事件ではなかろう」

李 「将来どのような事変があるかは予想は出来ないアル。ゆえに今は撤兵しても将来事が起きた時
には再び派兵するようにしておけばよいアル」

伊藤「世界広しといえども禍を好む国があるとは聞かない。将来もし朝鮮に事がある時は両国互い
に連絡しあって協議するべきである。朝鮮の地に事があった時は、それは朝鮮のみに止まらず日清
両国の利益に影響することが少なくはない。本大臣は朝鮮のためにのみ言うのではない。すなわち
日清両国の交際を重んじ、大局を誤らないためである。しかしまだ事が起きない内にそれを条約に
定めて予定の行動を約束するのもおかしなものである。本大臣がここに来たのは、閣下と朝鮮の独
立・属国の議論するためではない。閣下が強いて朝鮮の主権に関わって議論されようとするなら、
本大臣がここに来た意味はない」

300 名前: 投稿日:2008/07/09(水) 09:28:25 ID:0js1TgZ6
(続き)
李 「言われることは分かるアル。しかし本大臣は我が国が朝鮮の主権に関わることについては、閣
下の公認を得る必要を感じないアル」

伊藤「本大臣としては派兵の事を条約に加える必要を感じない。将来の大事が起るのを免れるには
、むしろこのような条文は設けないほうがよい」

 議論はもはや平行線。で、向かうところは朝鮮の属国・独立という主権論に。

李 「朝鮮に内乱がある時は我が国は派兵して国王を保護するのは我が国の義務アル。朝鮮国王がそ
の位にあるのは、我が皇帝陛下が封するところによるものアル」

 つまりは朝鮮は清国冊封の国と。「冊封」とは皇帝命令書である冊を以ってその国の領土を与え
て王とする位を、宗主国皇帝が授けるということ。「朝貢」とはまた別義だぉ。

伊藤 「閣下が言う朝鮮の主権論に関しては本大臣にその承認を求められると見なす」

李 「さてどうしたものかw そのことは既に人々がよく知るところアルね」

伊藤 「そのことは今この席で議論する要件ではない」

李 「そのことは我が国の朝鮮における主権に関する。ま、敢えて貴国政府の承諾を求めることで
はないアルね」

伊藤 「以前、閣下は朝鮮国と米国間の条約文の冒頭に、朝鮮は中国の属邦である云々の文字を入
れようと画策したが、遂に米国側によってその文字を入れられなかったと聞く。閣下にはどうして
それを承諾されたのかを敢えて聞こう」

301 名前: 投稿日:2008/07/09(水) 13:26:02 ID:0js1TgZ6
(続き)
李 「条約文には朝鮮が中国の属邦であるとの文字は載せなかったが、米国公使と本大臣の間では
互いに照会文を交わしてその事を書いているアル」

伊藤 「はあ? 照会文に書いて何の効果があるのか。照会文は約束の効果はない。まさに約束の
効果があるのは条約文のみである」

李 「通常の照会文ではないアル! まさに条約の一端に属するものアル!」

伊藤「ほう、それはよいw 両国の間で条約を有効なものとするには、各国人民の上にも及ばせる
ように必ず国中に布告すべきものであることは閣下もご存知であろう。しかし閣下の言われる照会
文のことは朝鮮でも米国でも布告されたのを聞いたことは無いがwww」

李 「ムカッ!! もうよいアル!! 談判の要件に移るアル!」

 井上馨外務卿は前もって米国政府に対して朝鮮属邦のことを条約文に載せないように進言してい
たらしい。

 しかしまあ伊藤のこの論理は、李鴻章をやり込めることには有効でも、中朝条約には朝鮮が属国
であることが書いてあるからねえ。
 朝鮮が独立国であったかなかったか。日欧米各国には独立国の体面を装いながら、中国に対して
は属国であることを条約として結ぶ。やはり井上馨が金玉均に言ったように、「貴国は永年支那に
対して属国であった。それが日朝条約によって独立の萌芽を発し、今は米国との条約によってより
独立の傾向にある」ということだろう。

302 名前: 投稿日:2008/07/09(水) 13:43:55 ID:0js1TgZ6
(続き)
 とにかく、このようにして伊藤博文はさまざまな観点から「派兵は必要ない!」と説き、李鴻章
は朝鮮が属国であることを理由に「派兵は必要アル!」と言い続け、結局議論は全く妥結することな
くこの日も終了。

 翌日、伊藤は井上外務卿に打電。
「交渉は危機に瀕した。李鴻章は撤兵のことは一時撤兵のみ承諾したが、恒久的とすることは拒否
し、宗主国として派兵の権利があることを主張した。今後妥協点がないなら交渉は決裂するだろう」
などと。

井上外務卿「・・・・一時撤兵かぁ。李鴻章も先の読めない男だのう・・・・止むを得んぉ。我が
国としては粛々と陸海軍の増強するほかないぉ」

 日清両国が将来の衝突を避けるには両国が朝鮮からは恒久的に撤兵するということでなければな
らなかった。朝鮮で再び乱などが起きて清国が派兵した場合、またも日本人居留民や公使館にどの
ような攻撃が向けられるか計りがたいことである。よって日本としては充分に保護できる兵を送ら
ねばならなくなる。そうなれば最早その衝突は避けられないだろう。
 明治17年の事変によって、当時日本人とりわけ日本兵の清兵に対する憎悪は極めて強いものと
なった。しかもこの後長崎でその火に油を注ぐような大事件が起きる。

 伊藤は止むを得ず、日本もまた朝鮮に派兵する権利があることを清国側に要求することとし、そ
のように条約草案を書き換えた。もちろん李鴻章は初めから日本にもその権利があることは認めて
いることであったが。

伊藤「やれやれ。撤兵議論も無駄だったか・・・・後は清将責罰と居留民被害のことを何としても
認めさせねばならんが・・・」
(つづく)

303 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:21:35 ID:BejobB5g
79 名前:マンセー名無しさん[] 投稿日:2008/07/22(火) 00:35:15 ID:Sd/HXysv

   併合前の日朝(続き)

 さて、井上馨外務卿が伊藤博文大使に与えた調令では、撤兵のことのみならず、国王護衛の日本兵への
攻撃を清将の処罰に求め、また居留民への暴虐の責任を問い、それを照会文中に明記させるとの要求を
通すことにあった。
 しかし、李鴻章はこれを議題に上げることすら難色を示し、日清両兵の衝突については清将のみならず
竹添公使にも処罰あることを以って平等の処置と主張し、居留民被害のことはそもそもそのような事件は
なかったと言い張った。

80 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:36:38 ID:Sd/HXysv
(続き)
 で、談判第6回目は4月15日。
 恒久撤兵のことを諦めた伊藤は談判開始早々、「将来朝鮮で変乱があって一国或いは両国が派兵を要する
場合は日清相互に通知して派兵し、乱が定まった後はただちに撤兵すること」の条文を追加した条約草案を提出。
 よって李鴻章もこれには直ぐに承諾。後は字句をいくらか変更する話を経て撤兵のことは定まった。

伊藤 「そもそもこの趣旨は、日清両国が朝鮮に派兵するのは最も重大な事があった場合に限るのであって、
瑣末な事件では出兵しないことを互いに約束するにある」

李 「実にそうアルよ。例えば露国が朝鮮を侵略しようとする時やこれに等しい重大事件の時は派兵するアル。
そしてその時は貴国に直ぐ通報するアルよ」

 李鴻章、内心、自分の意見が通ったからもうご機嫌w。

伊藤 「よろしい。閣下が今述べられたことは永く記憶しよう」

李 「本大臣は閣下の意見に副うために今日まで非常な譲歩をしたアルね。我が政府がこれを批准するかどうか
心配するぐらいアルよ。もともと呉氏の草案では、我が国にはいつでも派兵できる権利があり、日本はただ朝鮮とは
条約上のことがあるだけとある。これは日本は派兵の必要はないとの意味アルね。それで呉氏を説得して
この非常なる譲歩を同意させたアルよ。この苦心努力は閣下の想像外にアルよ」

304 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:25:23 ID:BejobB5g
81 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:37:31 ID:Sd/HXysv
(続き)
 思い通りになった時ほど、そういう素振りを見せずに、いかに自分が苦労して譲歩したかを強調するのが
重要らしいw しかし何だか営業マンが契約後に安っぽい挨拶をしているみたいだぞw
 もちろん伊藤はそんな話は無視し、批准のこと、その期日のことなどを事務的に話を進めた。

伊藤 「で、条約批准の期日は互いに事前に通知することがいる」

李 「我が皇帝陛下に上奏する時には、北京では重職の者を召集して会議するのが通例アル。会議が
事無く進んで批准の通知に至るまでにはかなりの日数を要するアルよ」

伊藤 「貴政府で会議が揉めるのは貴政府の内事であって、本大臣には関係ないことである。よって
ここで期日を定めて約束せねばならない」

李 「それなら2ヶ月以内と約束するアル」

伊藤 「我が国もそうしよう」

李 「もし他国が朝鮮を侵略したときは、貴我両国で連携して防ぐ方法を講じねばならないアル」

伊藤 「朝鮮が今日あることを永く維持するのを希望して止まない」

李 「もし貴我両国で密約を結ぶなら露国は朝鮮に手を出さないに違いないアル。かつて露国公使は、
露国は少しも朝鮮に何かする気はない。まだシベリア地方ですることが終わってないからである、と言ったアル。
しかし英仏独の三公使は、露国は朝鮮を侵略する意を強く持っている、と言ったアル。
閣下はどちらを信じられるアルか」

82 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:44:22 ID:Sd/HXysv
(続き)
伊藤 「おそらく英仏独三公使は公然たる意見として述べられたのではなかろう」

李 「もちろんこれは閑談に過ぎない。公然たる意見ではない」

伊藤 「露国公使の言うことを信ずると言わざるを得ない。国と国との交際で互いに疑えば終には
事変をもたらし容易ならない事態に陥ることがある。よってその実績が顕れない間は露国に害心が
あるとは明言することは出来ない」

李 「朝鮮は我が国に接する国である。朝鮮のことで警戒することを疎かには出来ないアル」

伊藤 「国土防衛のためには当然の警戒ではあるだろう」

李 「露国はウラジオストックに海軍を置いているが、ここは氷結する地アル。よって露国が東洋に
良港を求めるのは急務であって、或いは数年内には必ず東洋で大事を起こすと疑うアルよ。もし露国が
朝鮮の地に良港を得て海軍をそこに置くなら、貴我両国への影響は軽いものではないアル。これに
ついて閣下の御教示を求めるアル」

伊藤 「その事についての流言は大いにある。しかし本大臣は確たる証拠を得ていない」

 これは伊藤だけでなく、当時明治政府の人間には、確たる証拠なく交際相手を疑うことを潔しとせず、
という考え方の傾向が感じられる。つまりは疑心は暗鬼を生じ、終には深刻な事態を招きかねない、
という考え方による。一方、中国人は相手を端から疑い、ひそかに刀を研ぎながら交際するものらしい。
そして場合によってはその刀を見せる時がある。

305 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:29:47 ID:BejobB5g
83 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:45:42 ID:Sd/HXysv
(続き)
 李鴻章は日本が朝鮮に開かせた元山津について話し、この港を他に奪われないように伊藤に忠告した。

伊藤 「この事は本件とは関係ないので話はやめよう。さて撤兵のことは定まったが、他の2件のことは
閣下にはどうされるつもりか」

李 「その2件については、この上議論をしないのがよいアル」

 つまり、清将責罰、居留民殺害の件であるが、以下、伊藤と李の間で、数日来のこの議論が全く同じ
論調で繰り返された。李鴻章も頑なだが、伊藤博文もまさに執拗なまでに追求する。

 そして伊藤の厳しい追及に、遂に居留民殺害の件で李鴻章は、

李 「・・・・・事実を調査して証拠を得なければならないアル! もしその後に清兵の中に大罪を
犯した者があるとしたら必ず刑に処するアル! 必ず公平に処して容赦しないアル!!」

伊藤 「その意を了解した。それでは閣下は今言ったこと文書にして本大臣に与えられようか」

李 「もとより妨げはないアル! 公文を提出してその中に、この件の調査を遂げた後は我が兵の中に
犯人がいたなら必ず軍律に従って処分するとの意を表明するアル!」

84 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:47:57 ID:Sd/HXysv
(続き)
 これで居留民殺害の件は解決に向けての公文を得ることで一応落着。次に清将の責任を問うて処罰する件。
しかしこの事では李鴻章は竹添公使の処罰も求めて譲らなかった。

伊藤 「貴国将官の処罰の件については既に互いに議論をし尽くしたが、閣下がこちらの請求を容れないなら
協議は終わらないことになろう」

李 「双方で譲らぬ理由がある以上、妥結する望みはないアル!」

 しかし伊藤は事件詳細の経緯を述べながら数日来の議論を繰り返し、やがて朝鮮で調査をしたという
呉大澂大臣に対する追及は鋭く、ほとんど取調べのような様相を呈した。
 たまらず、陪席の続昌大臣が口を挟む。

続昌 「第一回目の会議の時に閣下は、両国の和好を重んじて善後の策を図ると述べられたアル。
その閣下の将来を深く憂慮される姿に本大臣は末席にあって閣下の高論と共に尊敬の念を抱くこと切アル。
ただ、ここで既に済んだことについては、閣下には瑣末の事に拘られずに大局を考慮されることを願うアル。
済んだ事よりも将来のことを協議されたい。先日来、井上伯も朝鮮でやはり将来の方を重んじられた。
閣下にも井上伯同様にされることを願うアル」

伊藤 「口を慎まれよ! これらのことは陪席の閣下らが口を挟むことではない! 李中堂閣下の言なら
心を開いて静かに聴こう。さあ、呉大臣に何度も尋ねる! 最初に日本将官が朝鮮兵を指揮して
清兵に発砲させたというなら、その証拠を出せ!」

306 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:33:30 ID:BejobB5g
85 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:49:49 ID:Sd/HXysv
(続き)
李 「本大臣に代わって一言申したのである。閣下には少しく寛容に聞かれたいアル。この件は既往に
属することなので、双方のためを考えるなら問題とせずに、棄却する方がよいアル。たとえ棄却したために
閣下に責任が生じても、閣下は国家を担う人であり、それに堪えられると信じるアル」

伊藤 「かく議論して妥結に至らないとは、本大臣はまことに残念に堪えない。この件は我が国にとって
重大事件である。このまま棄却することは出来ない。どのように力を尽くしても協議を重ねて両国間の
和好を保つ道を講じねばならない」

 と、ここで伊藤は最後の手段として、第三国に依頼して裁定をしてもらうことを提案した。つまりは奥の手である。

 伊藤「本大臣は止むを得ずこれを他国の仲裁に託し、双方でその裁判に服すべき外ないと信じる」

 これには李鴻章も面食らい、

李 「はあ? 第三国に頼むアルか? つまりは仲裁する者が再び事件を調査することになるアル。
そして双方の証拠の矛盾を明らかにするなどせねばならないアル。はたして事実の調査が満足に出来ようか。
本大臣は出来ないことを恐れるアルよ」

伊藤 「仲裁は容易な事ではない。しかし他に道があるか。もし別の道があるを閣下が知るなら教えを請おう。
惜しむなかれ」

李 「仲裁はヨーロッパの一国に依頼するアルか?」

86 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:51:05 ID:Sd/HXysv
(続き)
伊藤 「国と国との問題なので、仲裁者も一国のトップでなければならない。東洋諸国で出来る者はいない。
ヨーロッパ諸国では公平に欠くおそれがあるかもしれない。よってこの事を依頼するのは米国合衆国の
大統領あるのみ」

李 「それは無理あるよ。米国の大統領が自ら朝鮮に行って調査は出来ないアル」

伊藤 「そんなことは当たり前である。大統領は双方が提供する証拠に基き審理を経て裁決を下すのみ」

李 「欧州外交の歴史を読むと、仲裁で満足な判決があったのは多くないアルよ。それに米国などに
頼むような重要事件ではないアルよ。貴我両国の面目にかかわるアルよ。まあ同意すべきかもしれない
けれども、こんな大事でないことで仲裁を仰ぐのは恥ずかしいアルよ。この件は両国の一時の行き違いに
過ぎないアルよ」

 李鴻章、大いに尻込みw

伊藤 「他に方法があるなら、両国間で妥結することはもとより本大臣が最も願うことである」

李 「両国兵の衝突は双方の行き違いによるアル。なるべく込み入った事を論じることなく妥結するのがよいアル」

伊藤 「居留民被害のことは既に閣下の説明を承諾した。しかしこの件については閣下の確かな返答を望む。
閣下が他国に仲裁を依頼するのを良しとしないなら、どうにか妥結する方法を示すことが閣下の義務と信じるが」

307 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:36:23 ID:BejobB5g
87 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:52:34 ID:Sd/HXysv
(続き)
李 「閣下が竹添公使を罰することを約束するなら、本大臣も我が将官を罰することを約束するアル」

伊藤 「本官は決して厳罰を求めているわけではない。貴国の法律に照らしての処分を求めている」

李 「閣下が将官の処罰を求めるなら本大臣も竹添公使の処罰を求めざるを得ない。だからこそこの件は
棄却したほうがよいと言うアル」

伊藤 「重大な件であり棄却は出来ない。それで妥結する望みがないので他国の仲裁を望んだのである。
もとより仲裁者の裁定の結果がどのようなものであろうと我が方はそれを受け入れる」

李 「この事件は我が政府と我が委員、また本大臣も朝鮮人も、皆が我が方が正しいと見ている。
よって他人の仲裁は必要ないアル」

伊藤 「こちらはこちらが正しいと思い、そちらはそちらが正しいと思う。それならば第三者の仲裁に依ってしか
裁くことは出来まい。我が皇帝陛下はこの案件のことを本大臣に託された。よって本大臣が仲裁者の前で
自ら理があることを話すことを満足されることは確かである」

李 「本大臣はこの件を他国の仲裁に依頼する権はもたないアル」

伊藤 「それならば閣下はこの件をどのように妥結されるのか!」

李 「閣下は我が提出の証拠を悉く取るに足りないと拒否したアル。どうしてこの件の協議妥結ができようか」

伊藤 「だから仲裁の道しかないと言っている!」

88 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 00:55:08 ID:Sd/HXysv
(続き)
李 「この件を仲裁する他国の首領が千里の外にあってどうしてこの事実を調査して裁定できようか」

伊藤 「この件よりもまだ複雑困難な事件であっても適当なる裁定を下した例は少なくない」

榎本公使 「先年、横浜に来たペルー商船の中に清国人の奴隷がいて、ひどい酷使を受けているのを
我が地方官に訴え出たことがある。それで地方官は直ぐにそれらを解放させた。後にペルー国と
我が国との間で紛争となったが、協議妥結しないことを察して、これを露国皇帝陛下に仲裁を依頼した。
露帝は双方の言い分を詳細に考査して公平な裁定を下したことがある。知ってるだろ?」

李 「この件は他国の仲裁を仰いでも双方満足することはないアルよ」

伊藤 「仲裁を依頼した以上、判決でこちらが悪いとされても、我が国は甘受する。普通の裁判に
於ても原告被告双方が満足するものなどないの当たり前である」

 その後、呉大澂と李鴻章が口をそろえて仲裁に反対し、そもそもこちらの朝鮮国王の書簡などの
証拠を認めないのが悪い、などと愚痴ともつかない言葉を並べ立てた。

伊藤 「だから!それらを証拠として仲裁者に出せばよいではないか!」

李 「本大臣は仲裁を依頼する権がないアル!」

伊藤 「それならば仲裁を依頼する全権を有するよう、よろしく貴国皇帝陛下に伺いを出せばよい。
本大臣は今月20日まで滞在するだろう」

308 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:38:49 ID:BejobB5g
89 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:05:19 ID:Sd/HXysv
(続き)
李 「我が皇帝陛下は本大臣に対して、特に諭され、必ず我が国の将官に罪が帰することがないよう命じられた!
 それに違うことは出来ないアル!」

伊藤 「それなら閣下は何もかも承知されないというのか!」

李 「はあーっ、実に本大臣は困難な地位にあるアル」

伊藤 「地位が困難なのは本大臣も違わない」

李 「今回のことは両国にとって意外な出来事であって、実にその不幸を嘆かねばらないアルよ」

伊藤 「本大臣も全く同感である。しかし事が起きた以上は終局することに力を尽くさざるを得ない」

李 「双方で譲らないならどうしてそれができようか」

伊藤 「だから仲裁以外によい方法が思い浮かぶなら言おう。しかし不幸にもこの方法しかない!」

李 「本大臣は他国の仲裁を求めないアル。なぜなら我が皇帝陛下は我が国の将官が正しいとされて
いるからである」

伊藤 「我が皇帝陛下も同じである。すなわち両国皇帝陛下はそれぞれで正しいとされてある」

李 「はあーっ、実に困難である。ところで、すでに整った件は調印すればよいアルか」

91 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:08:50 ID:Sd/HXysv
(続き)
伊藤 「もちろん」

李 「この件以外に他に要求はあるアルか?」

伊藤 「他は既に妥結した。残るはこの件のみ」

 そして李鴻章は終に意を翻す。

李 「我が将官は全員が本大臣に隷属しており、皇帝陛下の勅命を必要としないアル。よって本大臣が
将官の行為を譴責するということではどうか。これでもまだ閣下の意にかなわないか」

伊藤 「閣下が直接に譴責されると言われるか! それならば閣下は公然たる公文を以って照会が
出来られるか!」

李 「然り。閣下に公然たる照会文を送り、我が将官を譴責することを約束しよう。これは閣下に
対して友情を尽くして尊敬を表するからアル」

 耳を疑うようなことなので伊藤は再び尋ねた。

伊藤 「それならば公然と照会文を出されるか!」

李 「然り。閣下の望みに応じるアル。そもそも本大臣が仲裁を拒むのは、この件で我が方が間違っていると
思うからではないアル。貴国と妥結することを望むからアル」

309 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:43:08 ID:BejobB5g
92 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:11:03 ID:Sd/HXysv
(続き)
 米国の仲裁となると、清国将兵の方に非があるとの裁定が出る可能性は極めて大であった。
なにせ当時在朝鮮米国公使フートは、袁世凱が兵を率いて王宮に行くと話した時に、「それでは大事と
なるかもしれないから兵を率いるのはよくない」と忠告をしていたのを袁世凱は無視したのであるから。
 それを知っている李鴻章としてはここで譲歩するしか道はない。

伊藤 「貴国将官を譴責するのにどのような方法をするのか。それを聞きたい」

李 「公文書に、我が将兵が細心の注意を払わなかったという一文を載せるアル」

伊藤 「閣下はその将兵を朝鮮から召還されようか」

李 「袁世凱もその1人であるが、既に譴責して免職したアル。閣下はこのことを貴政府に報告されたらよいアル。

 ここのところ李鴻章が言っているのが本当かどうかはよく分からない。大いに怪しい。この後五ヵ月後には
袁世凱が大院君を伴って朝鮮に帰任することになるのだから。

 ま、そのようなことは分かるべくもない伊藤は、ないことにされようとしていた居留民暴虐事件を、
調査して犯罪の清兵を罰するとの公文を得、また竹添公使にこそ非があると言い通していたのを、
日本兵を攻撃した清将の行為を李鴻章が自ら厳しく咎めることをこれまた公文に書くというのだから、
伊藤としてはそれで妥結さぜるを得ない。中国政府が、それらの譴責するだの調査して罰するだのを
決して実行することはないとしても。

93 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:13:38 ID:Sd/HXysv
(続き)
教訓
  中国は虚言を弄しても有利な条約を作る時がある。
  もっとも、朝鮮は条約を守らない時がある、だが。

 これによって天津談判は終結した。

 で、天津条約の要点をまとめると、

 ・ 日中両国は4ヶ月以内に撤兵する。よって両国で事件となることを避ける。
 ・ 両国は、朝鮮国王に勧めて兵を教練して自ら治安を守らせるようにする。
 ・ もし将来に重大の事件があって日中両国が派兵する時は、先に互いに通知する。事件平定の後は
直ちに撤兵する。

 照会  李鴻章から伊藤博文へ
 ・ 朝鮮での事件における中日の兵の争闘は、中国の兵が止むを得ずして争闘したのであるが、
細心に事を進めなかったからであり、本大臣はまさに戒飭すべし。また日本人居留民本多収之輔の
妻らの供述にある、中国兵が家に入って掠奪殺人をしたとのことについては中国はまだ証拠を持たない。
よって調査してもし中国兵が日本人民を掠奪殺害した証拠があれば、軍法に照らして処罰するべし。
このためこの一文を以って貴大使に照会して確認する。

 しかし、照会文とは、米朝条約のことで照会文に朝鮮が属国であることを書いていると李鴻章が話した時に、
伊藤は、「照会文は約束の効果はない。まさに約束の効果があるのは条約文のみである」と言った
それであることは、まことに皮肉なことであった。

310 名前:sweeper ◆HBa/NeetAA 投稿日:2008/07/22(火) 09:45:59 ID:BejobB5g
94 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:16:48 ID:Sd/HXysv
(続き)
 しかしこれ以上を求めるのは到底無理でしょう。賠償問題にまで到達できなかったが、よくもまあ
李鴻章に対してこれだけ認めさせたものである。

 もっとも、朝鮮からの恒久撤兵の要求は通らず、再度の派兵を認めたという点において、ついに
ここに日清戦争の端は開かれたり、と言える。

 4月18日調印終わり、19日に伊藤大使一行は帰国の途に就いた。

 ところが日本ではその19日に、とんでもない記事を書いた新聞の号外が東京で撒き散らされた。

 東京日日新聞「17日、天津からの電報によれば、清国政府は我が方の要求に応じた。明日調印
されるだろう。18日、天津からの電報によれば、明日大使一行は帰国の途に就くだろう。聞くところによれば、
『日清両国は4ヶ月以内に撤兵する』『京城の変での清将校を李鴻章が厳責する』
『暴動の際に日本人が蒙った損害を償う。額はまだ未詳』の三ヶ条なり」

外務省官吏「おうい、この号外記事違うんじゃないの」
外務省検閲官「ああ、これね。特に、清国が賠償に応じた、なんて出鱈目書いてるやつでしょ」
官吏 「やっぱりそうだろう」
検閲官「ん? 昨日検閲して新聞社に訂正を命じていたはずだけど・・・・これどうして手に入れたの?」
官吏 「さっき外で配ってるやつ持ってきたのさ」
検閲官「ええーっ!! 配ってるって!! 大変だあ!!」

 東京日日新聞は訂正命令に従わずそのまま東京中に撒き散らしたらしい。

95 名前:マンセー名無しさん[sage] 投稿日:2008/07/22(火) 01:18:58 ID:Sd/HXysv
(続き)
 李鴻章も呉大澂も新聞は出鱈目を書くと憤慨し、また日本の新聞もひどい言ったのを、榎本武揚が
「中国ほどじゃないよ」と言い返したばかりである。

榎本武揚「そんなことがあったの? 日本の新聞もひどいもんだなあ」
公使館員 「北京政府が賠償に応じたと皆を思いっきり喜ばせておいて、一気に落胆させたような
もんですからねえ。おかげで賠償が取れなかったのは伊藤大使の不手際だと責める者が出てくる始末で」
榎本武揚「新聞条例で検閲に掛からなかったのかい?」
公使館員 「なんでも編集人は、訂正のことを命じられた時は印刷が済んでいて、それを配達係りが勝手に
配っちゃったと言い訳しているらしいですよ」
榎本武揚「だいたい何という新聞社だよそれ」
公使館員「東京日日新聞です」
なせがここで筆者「それ、明治5年発刊で、後々毎日新聞と称するようになります」
榎本武揚「あそう。君のいる時代もあるのこれ」
なぜか筆者「ええ、日本の4大新聞の一つと言われるようになります」
榎本武揚「へー、こんなのがねえ。日本の新聞を代表するねえ。どんな評判なの?」
なぜか筆者「えーえーそれがそのー、変態新聞などと言われるようになりまして・・・」
榎本武揚「何それ? どういう意味?」
名瀬が筆者「そのー、閣下らの時代の人にはちょっと想像できないことでしてー(汗)」
榎本武揚「ふーん。ま、しっかり頼むよ。日本の将来を。こちらはこの時代で全力を尽くして頑張るからさ」
なぜか筆者「・・・・・(これに応える言葉を知らず)」
(つづく)

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